復讐
二人はカフェを出た。美味しかったので、店員にお礼を言っておいた。
行く先は決まった。アクドラに向けて、一直線に行く。
フランシスカは、聖魔の石を持っている。ここではその能力は省略する。
何故、フランシスカが平和主義なのか?それは、聖女だったからこそ、人の為、周りを思いやることが大切だという、信念に積み上げられた、尊い性格だったからだ。
人に裏切られる。そんな現場を見てきたし、自分自身もまた、大きく裏切られた。
裏切られたと聞くと、様々なパターンが、思い描ける。信頼していた恋人に裏切られた、など。
恋愛の裏切りは、日常茶飯事である。甘言で近づき、最後には、言い訳をしながら切り捨てる。そんなことがまかり通る世の中だ。
フランシスカは、そうしたことが許せなかった。なぜ、ケジメをつけてから、別れないのだろうか。そんなことを、常日頃、疑問視していた。
理由は単純である。察する力に欠けているのだ。だから、相手の心もわからない。裏切られる側の気持ちがわからない。そもそも、知ろうとしない。
そういう、無関心の輩にならない。フランシスカは思っていた。その生き方は、確かにとても難しい。人間はたくさんいるのだから、察してばかりいても疲れる。
だが、フランシスカの心は強かった。人を信頼する性格を構築した。
故に、今回の追放、ダメージは大きかった。
己の心の底にある、深い傷。裏切られたという現実。
その傷跡の黒い染みに、自分を支配さえされかねない。そう感じていた。
「あいつらを見返してやりたい」
フランシスカは、小さく呟いた。
憎しみに囚われてはいけないのは、わかっている。それでも、彼女の心の殺意は、延々と彼女の心を侵食していった。