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ここに六つの聖女を立て、お前を殺そう。国王。  作者: 夜乃 凛
第四章 第三聖女への誤算

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いわゆる作戦会議

 ディークとナイム達は、ディーク領へと戻っていた。ナイムもちょっかいを出すために、こっそりこの領地を抜け出していた。

 彼女たちが今いるのは、ディーク領の有する、砦の一角。漆黒の色の作りをしたその建物は、いかにも堅牢。侵入者を拒むかのように。

 砦内の一室で、木の机を間に挟みながら、ディークとナイムが会談をしていた。ディークに護衛はついている。ナイムと協定は結んだものの、安全とは言い切れなかったからだ。ナイムもそれを了承した。

 話を切り出すディーク。表情は無表情。


「さて、ナイムよ。対ミリアムに関して、全面的に協力することを了承しよう。しかし、それには二つの条件がある。一つ。マリアンヌとフランシスカの協定に関して、力を貸すこと。二つ。イグドラシルがもし攻めてくるようなことがあれば、我々を補佐すること。これくらいが、落としどころだろう?ミリアムは強いと、お前は言う。それならば、かなりの危険、リスクを我々も背負わなければならない。そちらのリスクを背負う覚悟はあるか?」


 問いかけるディーク。ナイムは返事が速い。即答。


「ある。配下たちは、私に絶対服従。私の言う事は絶対になってる。ミリアムさえ潰せればいいんだ。それに、それって、そんなにリスクのあること?確かに、マリアンヌとフランシスカが組んだら、強いかもしれないけど、逆にこっちも協定済み。イグドラシルに関しては孤立しているわけだし、第一、保守派のイグドラシルが攻め込んでくる未来が見えないよ」


「万が一ということもある。イグドラシルが保守的な考えの持ち主なのは知っている。だからこそ、アクドラのパワーバランスが崩れるのを見かねて、攻め込んでくる可能性は十分にある。イグドラシルの密偵も、どこかに潜んでいるだろう。情報を知り、自分も協定を組まねば危ないと踏み、行動を起こすかもしれない」


「それは……そっか。そうかもね。まあ、一度約束しちゃったし、ちゃんと守るよ。それに、イグドラシルって強いの?」


「ナイムは知らないのか?」


「全然。謎の聖女」


 第三聖女イグドラシル。謎に包まれた聖女。


「私もイグドラシルに関しては、何も知らない。謎だな、確かに」


「え、ディークも?」


 ナイムは驚いた。めずらしく。


「てっきり親交があるものだと思ったよ。隣の領地でしょ?イグドラシルって、どうやって補給してるの?私のとこには来てないよ?」


「私も見かけない。おそらく、土地が恵まれているのだろう。自給自足出来るような土地があるはず。そうでなければ、どこかで私たちの領地を通過しなければならない。恵まれているか……羨ましいことだな」


「別の可能性もあるけど、流石に無いかな」


「何がある?」


「いやほら、海とは隣接しているでしょ?海路を構築しているんじゃないかって、なんとなく思っただけ」


「海路か……それは無さそうに思える。アクドラは死地。この大陸に干渉したがる者はいないだろう。それに、海路を構築出来ているなら、戦力も増強出来そうなものだ」


「まあ、ないか。それで、これからどうする?私の領地に派兵してくれる?」


 ナイムはニコニコしている。上機嫌である。


「派兵はする。だが、その前に決めておきたい。マリアンヌとどう対峙するか」


「一度は撤退したわけだし、放置でいいんじゃないかな。攻めてきても対応出来るでしょ。むしろ、イグドラシル領を陥落させるのもありかもしれないね」


「イグドラシル?」


「そう。だって話の通り、何するかわからないんだから。今のうちに陥落させておいて、私たちの領地を三領地に変える。そうすれば私たち無敵じゃない?」


「ふむ……強くはなるな。だが、どうやって陥落させる?武力行使か?」


「武力行使とまでいかなくても、脅しで充分な気がするね。聖女同士が手を組んでいるんだから、その脅威は圧倒的なはず」


「脅しか……しかし、私かナイム、どちらかは自領にいる必要があるな」


「どして?」


「ミリアムとマリアンヌだ。イグドラシルに目を当ててる最中に裏をかかれたら洒落にならない。片方は防御に回すべきだ」


「そっか……うん、正論。逆に言うと、どっちかが出向くってことだよね?私が行こうか?」


「……ナイムが不在となると、ミリアムの相手を私たちがしなければならなくなる。それは、私としては避けたい。ナイムにはミリアムの警戒に当たってもらいたい。私たちがイグドラシル領に赴くのは構わない。後ろを頼めるか?」


「ちょっと心配だけど、ディーク本人の意志なら。ちなみに私の部下、数名ディークに回しても大丈夫だよ」


「数名?たった?」


「うん。でも強いよ。一日も修行を休まないからね、私の部下は」


 そのナイムの言葉に、ディークは考え込んだ。強いと言われるナイムの部下。だが、ナイムの部下がいる状態、この前提の元、ミリアムと互角なのだから、ナイムの戦力が削れると、ミリアムに付け込まれる。それを踏まえると、ノー。


「いや、必要ない。我々とて弱者ではない。ナイムには徹底的に、対ミリアムに回ってもらいたい」


「素っ気ないなぁ。まあ、わかったよ。私は自領に戻る。そこでミリアム見張ってればいいのね。行軍の疲れはどう?」


「私は体力があるから大丈夫だが、部下は疲れているようだ。しばらく休ませたい。会食にしよう。腕のいい料理人を呼び寄せておく」


「それ、私も食べていいの?」


「それはそうだろう」


「ラッキー」


 ナイムは両手を上げた。やれやれ、と肩をすくめるミリアムだった。


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