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ここに六つの聖女を立て、お前を殺そう。国王。  作者: 夜乃 凛
第三章 第四聖女との軋轢
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彼女は怪物なのか?

 ホウオウ。マリアンヌ城に侵入。

 辺りを見回す。敵兵の姿無し。血痕も無し。

 血痕が無いのは良かった。交戦されていないということだ。

 だがしかし油断ならない。城の螺旋階段を駆け抜け、二階へ急ぐ。

 気配察知。完成を研ぎ澄ます。左に曲がり、大きな大きな金の扉を目指す。そこにマリアンヌがいるはず。

 扉を開ける。ノータイム。

 景色が広がる。広いテラスが。

 マリアンヌの姿が見えた。一人しかいない。護衛がいない。


「マリアンヌ!」


 ホウオウは叫んだ。ホウオウを見るマリアンヌ。彼女は立ち上がった。


「ホウオウ?」


「無事なのか!?味方がどこにもいないぞ!」


「え?」


 マリアンヌはきょとんとした表情になった。テレパスで、自分一人になることをフランシスカに伝えておいたからである。

 だが事情は違う。ホウオウとフランシスカは別行動。ホウオウに情報は届いていないのだ。

 故に、ホウオウはマリアンヌを全力で守る気でいた。

 逆に、マリアンヌは早急に、ホウオウに情報を告げた。


 唸るホウオウ。なるほどな、と。確かにマリアンヌの選択の通り、一人になれば戦いは起こらない。だが、それはマリアンヌの死をも意味する。


「自分の身を大切にしろ」


 ホウオウは怒っていた。マリアンヌを気遣うが故の怒りである。


「申し訳ありません。しかし、私も聖女。役目は務めます。問題なのは……これからどうするか、です」


「……ああ、そうか。ディーク達に攻め入られた時、私がどう立ち向かうか、だな。フランシスカには、極力戦わないように言われている。私と、マリアンヌ……無惨だが、私もかなり疲れている。お前を守り切れるかどうか……」


「私のために無理をする必要はありません。ホウオウは、どこかに隠れていてくれればいい」


「自分の身を大切にしろ。勝ち目は無いわけじゃない。徹底的に会談を望めば、ディークが退くかもしれない。スケッチで、情報はおそらくバレている。フランシスカと協定を結んだことを素直に告げて、それから、こちらの無害を証明する。それしかない」


「……わかりました。確かに、その通りだと思います。ごめんなさい、そんなに疲弊させて……」


「大丈夫だ。道の途中で、ナイムっていうやつに手こずったが。あれは恐ろしい」


 ホウオウが溜息をついた。とにかく、和平への道を目指す。


 ディーク達は何をしているか。


「へっくしょい」


 ナイムがくしゃみをしていた。話をつけて、ディーク軍とナイムで、ディーク領を目指していた。引き上げているのである。今後の計画としては、ディーク領から、少量の兵をナイム領に移動させるという事で、話がついていた。


「誰か噂でもしているのかな?ああ、そういえば、強い女の子と遭遇したなぁ」


 ナイムが悠々と語っている。ディークは、安全は買えたとはいえ、イラついているようだ。


「強い女の子?」


「そうそう。結構ね、実力者だったよ。マリアンヌの部下じゃないね。あれは、フランシスカの部下だ。あれほどの手練が配下にいるってことは、侮れないよ、フランシスカ軍は」


「ナイムが苦戦する相手なのか?」


「いや、苦戦はしないよ。ただ、五年も経てば……実力、抜かれるだろうね。それほどの資質がある。現状でも強いよ。イルゴールと、ヴェルゼだったっけ?私に襲い掛かってきた。貴方達よりは実力は上だね」


 淡々と語るナイム。彼女は事実を口にしているつもりだが、イルゴールとヴェルゼは挑発されているように感じた。


「私とて、ディーク様に認められた者。調子に乗るなよ、ナイム」


「ここ数年で調子に乗った覚えが無いね」


 返し。どうにも、気まずい雰囲気が流れている。


「ところで、ディークの聖女としての能力って、なんなのさ?」


 問うナイム。これにはディークも反論した。


「教えるわけがなかろう。協定は組んだ。だが、聖女の能力というのは、お前も知っているはず。そう簡単に切れるカードではない。教えない。それが答えだ」


「じゃあ、条件があればカードを切ってくれるってこと?」


「……条件?」


「うん。教えてくれれば、私の能力も教えてあげる。トントンでしょ?」


「お前の能力、噂では聞いたことがある。……情報か」


 ディークは考え込んだ。噂によれば、ナイムの能力は、認識した相手を殺す能力だったはず。だが、確定ではない。

 どの道、ディーク達の戦力は、ナイムに後れを取っている。ここで能力を披露して、ギブアンドテイクに持ち込むのも悪くは無いと、ディークは思った。別に、四天王の指輪の能力は、知られてもデメリットが少ない。

 考慮の末。


「わかった。私の能力を教えよう。ただし、そちらが言うのが先だ」


 鋭く告げるディーク。あくまでマウントは取らせない。


「オッケー。私はね、剣でもなんでもいいんだけど、触れたことのある相手を殺すことが出来るんだ」


 笑顔で語るナイム。しかし、その内容恐ろしかった。


「……随分、物騒な能力だな」


「うん、物騒だよ。だってこの能力で、私の愛する人、殺しちゃったから」


「は?」


「喧嘩だったんだ。私には大切な男性がいた。愛を育んだ。でもね、喧嘩しちゃったの。お互いに、誤解だった。後から気づいたことだけどね。私は、彼を憎んでしまったんだ。能力を発動するつもりはなかった。だけど憎悪が抑えきれなくって、能力が発動してしまった。彼は死んでしまった。二度と帰ってこない。ね、恐ろしい能力でしょ?怖いでしょ?こんなに不気味な怪物はいないでしょ?」


 淡々と語るナイム。笑顔。だが、その笑顔からは、涙が零れ落ちていた。


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