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ここに六つの聖女を立て、お前を殺そう。国王。  作者: 夜乃 凛
第三章 第四聖女との軋轢

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ぼろぼろであろうとも

 ナイムとディークの会談が続く中、ホウオウはマリアンヌの近くまで来ていた。

 あと少し。あと少しで、情報をマリアンヌに届けられる。

 しかし、奇妙な点があった。人の気配が少ない。

 もしや、攻め入られた?そういう不安がホウオウを襲った。ナイムの相手をしていて、手間取ったせいか?

 だが走るより他に選択肢は無い。身を低くして、ひたすら駆ける。

 間に合わせる。それが、フランシスカへの忠義。


 一方マリアンヌ。彼女は一人きりであった。戦う必要もない。ただ、潰されるのを待つのみ。

 彼女の思うところは、結果的には、やっと聖女足りうる行動がとれた。そう思っていた。

 他人頼りの自分が嫌いだった。能力もテレパスしかない。国王にも、罵倒された。折角聖女にしてやったのに、お前の無能さはなんだ、と。

 それらの罵倒も受け入れた。受け入れるしかないのだと。変わろうとはした。だけど、性格を直せない。

 変わろうとしたのに。そんな自分が嫌だった。人から嫌われたくない。その思いが強まるばかり。

 しかし、彼女は人のためになるこの瞬間、とても満たされた気持ちでいた。

 一人で、紅茶を飲んでいる。

 自分の行いで、助かる人がいる。それがとても嬉しくて、良くしてくれる配下たちに、感謝の念を抱いていた。

 今まで尽くしてくれて、ありがとうございました。


 フランシスカ隊。フランシスカは、全体の限界まで進軍速度を上げていた。

 シュクレがフランシスカに意見している。


「フランシスカ殿、進軍が強行軍すぎるのでは?置いていっている者もいるのです。これ以上の過剰な速度は疲弊が……」


「お黙りなさい。マリアンヌだけは死なせてはならないのです。あの人は……」


「時には非情になることも必要です。ホウオウ殿も出撃されている。冷静になるべきです」


「冷静です。私の判断が不服なら、貴方も遅れてくるがいい」


「……お供します」


 冷たく言われたシュクレだったが、彼は不満そうな表情はせず、満足気な表情だった。言われて嬉しいところさえある。ついていくに値する。


「ホウオウを信じながら進軍します」


 フランシスカの静かに響く声。マリアンヌ救出への道。


 ディークとナイムは協定を結んだ。その結果、ディークはマリアンヌ領への攻撃を停止した。引き返すことを選択したのである。ナイムと共に。

 結果、戦いは起こらず、マリアンヌが一人、マリアンヌ領にいるという状況。

 それを知らないホウオウが、必死にマリアンヌの元へ辿り着いた。

 体中から出る汗。足へ気力を送るため、全身疲れ切っていた。ひと時も休まなかった。


「マリアンヌ!!」


 呼びかけるホウオウ。マリアンヌ領の城の前で。城は白く高い。

 返事がない。そして、気配が無い。

 そのことに恐怖を覚えつつも、ホウオウは城の中に突入した。

 無事でいてほしい。その一心。

 人を助けるのに理由はいるだろうか。そんなことを、ホウオウは思ったことがある。

 結果は、イエス。彼女はフランシスカに救われたのだ。

 採算の無い行為が人を撃つ。無償の愛は、言い過ぎだが、献身することが、ホウオウには出来る。それは、徳が高いと表現するのかもしれない。そんなホウオウだから、フランシスカに信頼されているのだ。


 足はぼろぼろ。上半身も万全じゃない。敵と鉢合わせるかもしれない。

 それでも彼女は城に突入した。その姿は、フランシスカの配下で間違いなくナンバー1の、生ける献身と言えた。


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