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ここに六つの聖女を立て、お前を殺そう。国王。  作者: 夜乃 凛
第三章 第四聖女との軋轢

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第四聖女ディークの名の元

「協定だと?お前と?」


 ディークは予想外の展開に驚いていた。どの形であれ、対立する形となると思っていたからだ。


「そうそう。私、これでも困っているんだよね。西の領地に、ミリアムがいるでしょ?あいつ強いんだ。協定を組めば、後ろも任せられるし、戦力を集中出来る。ミリアムさえ潰せれば、ある種の悲願達成」


「それはお前の都合だろう。私たちに、何の見返りがあるというのか」


「イグドラシル領」


 ナイムは肩をすくめた。


「イグドラシルが襲ってくることになれば、私たちは全力で補佐をする。加えて、マリアンヌとフランシスカが何かやらかしたら、ディークの味方になってあげる。どう?」


「……」


 ディークは腕を組んだ。気難しそうな表情。


「信用出来ない。現に、私に脅しをかけたし、現在進行形でマリアンヌ領へと侵入を妨害している。言ってることと真逆ではないか。今、協定を結べば、通してくれるとでもいうのか?」


「うん」


 即答だった。


「……返事が、ノーだった場合は?」


「それでもディーク次第。ここで私と戦うか、尻尾巻いて逃げるか」


「随分と余裕だな、ナイム」


 イルゴールが前へ出た。怒っている。


「よい。下がれ、イルゴール。ナイム、貴様は我が軍に勝てると思っているのか?」


「思ってる」


 即答。


「貴様……」


 ここまで言われたら、プライドに傷がつく。だが、ディークは極めて冷静を保とうとした。聖女たる者、上に立つ者、その振舞い。資質が求められる。

 考える。ナイムへの敵対心を捨て、ナイムに協力した場合、どうなるか?

 ナイムはミリアムを攻めるつもり。ディークとミリアムは争ったことは無いが、ナイムが苦戦している時点で、強大な力を持っている。噂も絶えない。

 その戦場に配下が投げ出されたら、守り切れるだろうか?危険な目に……。

 メリットを考える。ナイムはイグドラシルから守ってくれると言っている。だが、第三聖女イグドラシルは、それほど好戦的な人物ではない。話をしたこともあるが、穏やかだし、攻め入られたこともない。メリット無し。

 だが、もう一方。フランシスカとマリアンヌの協定に対抗できるというのは、助かるというのが実情だった。組まれていたら、ディーク領は非常に危うい土地にあるのだ。

 三割。ナイム側につくメリットが、それくらいしか無いと判断。だがしかし……。

 目の前にナイムがいる。その現実は変わらない。条件を飲まなければ、戦うか、惨めな姿を見せるかの二択しかない。

 話は広がる。ナイムの言っていることが、非常に気がかりだったのだ。ミリアムの強さ。

 ディークから見れば、ナイムは最強に値した。だが、ナイムはミリアムに苦戦しているという。ミリアム領は、ナイム領の隣にある。ここで申し出を断った場合、今後ナイムの助けは見込めない。第一聖女ミリアムと万が一にも戦うことになった時、自分たちだけで戦うしかない。ミリアムの強さが見えてこない。

 すべてが、ナイムの思い通りになる選択肢しか見えない。だからこそ、コンタクトを取ってきたのだろうが。

 俯くディーク。しかし、毅然と前を向く。


「よかろう。ナイム、貴女と協定を組む」


「ディーク様!?」


 イルゴールが、めずらしく大きなリアクションを取った。


「なりません!!この人物は信頼には値しない!!ディーク様は、堂々としておられればいいのです。戦うのは我々の役目。組む必要は」


「黙れ。第四聖女ディークの名の元、決断しているのだ。否定は私への侮辱とみなす」


「ディーク様……」


 俯くイルゴール。隣のヴェルゼは、内心安心していた。早死には御免だからな、と。


「頭の回転は私より速いみたいだね。この短い時間で、数パターン構想したんでしょ。そう、組むしかない。そういう協定なんだよ、これは。そして……ありがとう、協定を結んでくれて。今後ともよろしくお願いします」


 にこやかに笑うナイム。話し方も柔らかくなっている。得体のしれない人物である。


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