アクドラ最大の分岐点
ホウオウの抜けたフランシスカの部隊は、ガラハの森を通過していた。直線距離ならガラハの洞窟を通った方が近いらしいが、ガラハの森は一度通って慣れていたため、ガラハの森を抜けることにした。ホウオウもそこを通過している。
しかし、流石に今までに比べると、大群な故、移動が遅い。フランシスカの焦りも自然と強くなる。
焦ってばかりもいられない。彼女は、シュクレと方針を話し合っていた。
「シュクレ、ホウオウは間に合うと思いますか?」
「間に合うかもしれませんが……それは、理想論なので。間に合わない前提で、構想を練った方がいいでしょう。最悪の事態を想像せよ、とはよく言ったものです。マリアンヌ殿が嘘をつけば、争いは必至。ホウオウ殿の力だけが頼りになりますが……ディークの能力が謎です。私も知りません」
そうシュクレが言った。そのディークの力は、今も猛威を奮おうとしている。
「ディークの力はわからないということは、貴方の一派が情報を掴めなかったということですね?」
「そうです。我々は完璧ではないので。アクドラを平和にするために動いていますが、謎な事はとても多いのです。申し訳ない。ただ、土地は知っています。ディーク領は、イグドラシル領、ナイム領、マリアンヌ領に囲まれています。いわゆる……危険地帯。争いの起きやすい土地だと思います」
「ふむ。逆に言えば、ディークを味方に出来れば、イグドラシルとナイムに干渉出来るということですね?ここは分岐点です。我々とアクドラ、その二つがどうなるか。我々の行動力に全てがかかっているでしょう」
「あくまで、ディークを仲間にするつもりだと?理想論では?ディークはマリアンヌ領に攻め込もうとしている」
「だからこそです。こんな時だからこそ、聖女たる行動を取らねばなりません。人のため、大地のため。平和のため。それが、聖女の心持ちです。私はそれを捨てる気はありません。こちらの戦力、そして能力。国王へ反旗を翻すこと。全てがディークに伝われば、仲間にすることが出来る可能性はあります。ディークとて、国王に利用されるのは癪でしょう」
フランシスカは凛として言った。
言葉に一点の曇りもない。
聖女足り得る人格。それを捨て去る気は、彼女にはない。
シュクレも、大体納得した。こんなフランシスカだからこそ、シュクレはついてきているのだ。この人物なら、アクドラを変えられるかもしれないと。
「フランシスカ殿の心持ちはわかりました。しかし、会談をディークとしようとも、無理ででは?ディークが、はい、話を聞きます、となるとは到底思えない」
「紫水晶」
「水晶?」
「マリアンヌの紫水晶です。あれの効果なら、一方的にディークに情報を流せる。問題は、そのテレパスの信用性、そして」
「どうやって渡すのか」
「そう」
二人は沈黙した。話題が無いのではない。考えることだらけだったから。




