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ここに六つの聖女を立て、お前を殺そう。国王。  作者: 夜乃 凛
第三章 第四聖女との軋轢

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それ間違ってない?

 ホウオウとナイムが対峙する形になっている。だが、ホウオウは相手がナイムだとわかっていない。ただ、とても強い人物だとしか、認識していない。

 ナイムは認識した相手を殺すことが出来る。一種の縛りがあるが。その時点で、ホウオウに勝ち目はほぼ無かった。

 ナイムは片手で剣を引き抜き、構えている。右手はポケットの中。左手一本で戦うつもりらしい。しかし、構えに隙は見当たらない。構えてるのは東方の剣。

 ホウオウは仕掛けない。冷静に、相手の弱点を探していた。

 だが、無い。ナイムの構えに隙が無い。待ってばかりもいられない。こうしている間にも、マリアンヌにディークが接近されてしまうかもしれない。

 ここは、押してでも。ホウオウはそう判断した。逃げる決断。

 正面側に陣取られているが、左右どちらか、抜け道はある。

 この相手と戦ってはならないと、ホウオウの直感が囁いていた。木々に囲まれている彼女。


「惑わすこと林の如し」


 そう呟いた。その言葉で、ホウオウの分身がいくつも作り出された。

 全てが分散。その時間を使って、ホウオウも前に向かって突破を試みた。

 ナイムはニコニコしている。赤いおかっぱのナイム。


「無駄なんだな、それ」


 そうナイムが告げた直後、ナイムが消えた。さっきまでいた位置にいない。気配が消えた。

 消え……。

 直後、ナイムはホウオウ本体の真横にいた。

 横を見るホウオウ。ナイムが笑っている。

 ゾッとした。


「君、名前は?私は第二聖女ナイム。うん、君は結構実力者だと思うよ。そうだねぇ……あと五年も修行すれば、私に追いつくかな?金の卵だね。まあ、返答次第では、ここで死ぬんだけど」


 ホウオウはそれに対して構えた。反面ナイムは笑う。


「おやおや。名乗らないのかい?」


「ホウオウ」


「よろしい。君、フランシスカの部下だよね?」


 その言葉に、ホウオウに僅かな焦り。知られている。スケッチは、こいつの元へ渡ったのか?あるいは、気配を消して自分たちを見ていたのか?

 だが臆さない。弱みを見せてはならない。


「フランシスカの部下だったら、どうする?」


「うーん、情報を喋らせるよね。普通に考えて。だって私は聖女だし」


「悪いが、付き合っている時間は無い。確かに、私では勝てないかもしれない。しかし、ただ朽ち果てるつもりもない。相手になろう」


「まあまあ、落ち着いて。情報が欲しいんだ。何度も言うけど。そう、フランシスカに……赤い牙と戦う覚悟があるのかどうか、知りたい。まだ存在すら認識していないかもしれないけど。赤い牙っていうのは、金さえ貰えば、なんでもやる連中。個人的にはね、あいつらさえアクドラからいなくなればいいと思うんだよ。だって、そうでしょ?善悪の判断を自分でしない。金が全て。間違ってない?」


「間違っているとは思うが」


「そうでしょ?じゃあ、その悪は潰さないと。個人的にはミリアムも気に食わないけどね。一時期、お芝居の小競り合いをミリアムとやったけど、アイツ、隙あらば私を殺す気だったな。おっと、ごめんごめん。そっちにも情報が足りていないんだよね。そう……何か、聞きたいことある?」


「まず、お前は一体何者なのか、かな」


「何度も言うように、第二聖女のナイム。土地は、ミリアムとディークに囲まれている。あんまり豊かではない。剣なら誰より強い。他には?」


「お前は私の敵なのか?」


「ナイムでいいよ。敵かどうか?現状だと、中立かな。どうしようもない無能なら、ここで斬り殺していたかもしれないけど、それは惜しいなぁ。だって、ホウオウ君、君強そうなんだもの。飼ってあげたいな」


 ナイムはホウオウの頭を撫でた。ホウオウは動けない。神経は擦り減っている。

 考えるホウオウ。もう、情報を公開しておくべきか。自分の持ってる情報を。ここを突破出来たとしても、この超一級危険人物が、フランシスカに接近してしまう可能性が高いのだ。ナイムはガラハの森での出来事もお見通し。それなら、フランシスカとマリアンヌの関係性を白状してしまうのも、あり。全て、ホウオウの選択にかかっている。

 言う。情報はナイムに全て伝わる。

 言わない。ナイムはなんとしてでも情報を得ようとする。

 決断。


「私はフランシスカの部下で間違いない」


 言った。正面突破。正直に話す。


「部下なのね。それで、今、何をしようとしているのかな?」


「マリアンヌがディークに狙われている。マリアンヌに、どうしても伝えなければならないことがある。だから、無駄な時間は取ってはいられない」


 語るホウオウ。実力はナイムの方が上。ならば、話すしかない。言葉を交わすしか。


「ん?思ってたのと違うな。マリアンヌに何を伝えたいの?」


「嘘をつかないように」


「嘘をつかないって、誰に?」


「第四聖女ディーク。マリアンヌとフランシスカは協定を結んでいるが、協定は結んでいないと、マリアンヌは言うつもりらしい。それだけは避けねばならない。ナイム、貴女を退けてでも」


「あ、そう……。なるほどね。遠距離で交信出来る、何かがあるのね。うん、そういう理由なら、見逃してあげてもいいかな。要は、嘘をつかせたくないってことでしょ?協定組んでないっていう嘘を」


「その通り」


「それは正しいよ。マリアンヌのしようとしてる事なんて、裏切りじゃん。そんな聖女のいう事なんか、誰も信じてくれないよ。マリアンヌなぁ……。武術でも学べばいいのに」


 やれやれ、といった様子で、ナイムが肩をすくめた。

 そして、続ける。


「ホウオウ君、君、行っていいよ。見逃してあげる」


「何故、見逃す?」


「可愛いから」


 ナイムはホウオウの頬を撫でた。生きた心地がしない。


「フランシスカにも会うつもりだったけど、帰ろうかな。ディークがマリアンヌを攻めるつもりなら、周りを見張っておかないとね。日和見のイグドラシルはともかく、ミリアムが怪しいんだな。ああ、最後に聞いておくけど」


「なにか」


「私って、間違っていると思う?」


 ナイムの問い。ホウオウは返事を考える。感じる。


「思わない、かな。別に悪い行動をしているわけでもない。情報を聞いているだけ。マリアンヌの側に非があるというのも、頷ける。少なくとも、私から見て悪ではない。少しばかり怖いが」


 そのホウオウの言葉に、ナイムは笑顔になった。


「うんうん、そうだよねぇ。私は間違った行動は嫌いでね。じゃあ、早く行った方がいいんじゃない?ディークとマリアンヌが接触する前に」


「ナイムが邪魔をしているのだが」


「ああ、ごめん。私も帰るわ。忙しいね、お互い」


 そう言うとナイムは足早に、ガラハの森を駆けて行った、移動スピードが尋常ではなく早かった。

 ホウオウはため息をついた。安堵の溜息である。なんとかなったが、戦っていたらどうなったかと思うと、生きた心地がしなかった。


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