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ここに六つの聖女を立て、お前を殺そう。国王。  作者: 夜乃 凛
第二章 第五聖女との邂逅

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誰を狙ったの?

 轟くこと鬼神の如く。ホウオウは強者と戦っている。

 相手は特攻を仕掛けてきている。なんとか生け捕りにしたいが、余裕のない状況だった。スケッチしていた人物が逃げてしまうし、それに、強者は一癖も二癖もありそうな気配。不殺出来るかわからない。

 ホウオウに接近する強者。今までとは気配が違う。遠距離でちびちびと狙ってくるわけでもない。

 右から来るか?

 構えるホウオウ。予想通り、右から襲い掛かってきた。

 避けるか、弾くか。ホウオウは弾くを選択。

 剣がぶつかり合う、一瞬の隙。

 見逃さない。ホウオウの剣は、完全に相手を捉えていた。

 剣同士の、衝撃。その後の動きまで読み切ったホウオウは、直後、完全に相手の裏をつき、剣で相手を切り裂いた。切り捨て。

 即座に次の行動を考える。問題点。そう、スケッチをしていた、情報の人物である。

 この場の事実がスケッチで伝わってしまうと、後々面倒なのは、よくわかっていた。なにせ、フランシスカとマリアンヌが協定していることが、バレてしまうのだから。勿論、偽造のスケッチだと言い張ることも出来るが、もしもフランシスカの顔が鮮明に描かれていたら、反論しようもない。


 ホウオウは、スケッチの人物を追撃するつもりだった。しかし、意外なことに、フランシスカに制止されたので、不服そうにフランシスカの前に立った。


「倒しておくべきじゃないのか?スケッチなんて、他の聖女にバレたら、私たちだけの問題じゃないぞ。マリアンヌにも迷惑がかかるんじゃないか?情報を、敵……敵だと思われる人物に知らせるのは良くない。仕留めておくべきだ」


 ホウオウが言った。


「もう、向こうに戦いの意志はないのです。敵が牙を向いてこないのであれば、見逃すのも寛容。下手な追撃は、相手の罠にかかるかもしれません」


「そうか……まあ、安全もあるからな。わかった。見逃すよ。気になるけどな」


 スケッチをしていた人物は、もういなくなっている。一体、どこの勢力なのか?

 しかし、気にしてばかりもいられない。敵の遺留物を調べなければならなかったからだ。何かの手がかり、敵がどの勢力に属しているのかを知るために。

 ホウオウが一応安全を確認して、マリアンヌの部下、それにフランシスカとシュクレも加わり、捜査をすることになった。こういう時こそ、土地に住んでいるが故か、割と詳しいシュクレの役目である。

 切り殺されている。フランシスカは、汚れ役ばかりホウオウに押し付けているな、と認識しながら、死体の調査に。

 見たところ、明らかな目印らしきものはない。総じて、青い頭巾を被っているくらい。シュクレはそれに対して反応を示さなかった。思い当たるところがないのだろう。


 敵への調査は続いた。得られるものは特になく、手がかり無し。だが、リーダー格と思われる強者の所持品だけは違った。手紙が見つかったのである。それにフランシスカは目を通していた。

 そこには、恐ろしいことが書いてあった。


『第六聖女フランシスカの手はずが整うまでに処理せよ。報酬の上乗せも可能


 ミリアムより』


 フランシスカはその手紙をホウオウとシュクレに預け、考え込んだ。

 状況が良くない。あまりにも悪い。ミリアムは強力な力を持つと、既に聞いている。そのミリアムから、既に敵視されているという現状。手紙を読んでいるシュクレも、眉をひそめている。真剣な表情だ。彼も語りだす。


「フランシスカ殿、これは大変危険な状況かと思います。この手紙の刻印といい……第一聖女ミリアムの指示で行われた事象なのです、これは。どうやって知ったのかは知りませんが、ガラハの森を通ることも、お見通しだったのでしょう。これでは、協定どころではありません。最初から、狙い撃ちにしています。和平の道は無いものかと」


 シュクレの言葉に、フランシスカは考え込んだ。

 そうだろうか?


「いや……違うかもしれません。文面をよく読んでください。整うまでに処理せよ……一体、何をでしょうか?私を殺せとは書いていません。もしかすると、何か止むを得ない事情があったのでは。仮にミリアムが私を狙っていたとしても、手紙は確実に、破棄させるはずです。念を押して。負けてしまって、相手に手紙を見られる可能性もあるわけですからね。ミリアムがこの者たちに何かを命じていた。あるいは、契約していた。それは認めます。事実ですから……。ただ……堂々巡りです。『何を』処理しなければならなかったのか。逆に、ミリアムが味方の可能性すら出てきます。我々に対する脅威を、弾こうとしてくれたのかも」


「それでは、我々に襲い掛かってくる道理が思いつきません。殺そうとして来た者を、味方とはとても呼べない……」


「私がフランシスカだと、気が付かなかったのでは?」


「え?」


「だって、私がガラハの森を通るなど、予想外のことですからね。ミリアムには知りようもないはずです。だから、別の誰かが……ガラハの森に用事があった。それを処理するように、ミリアムが指示をしていた。これなら筋が通ります。私がフランシスカだとは気づかず、ターゲットだと思い込んだ」


「それなら、まあ……」


 シュクレは不服そうである。彼は、ミリアムがこの襲撃事件の黒幕であると推測しているようだ。

 ホウオウは中立。冷静に、どちらの可能性もあると察した。

 フランシスカは素早く次の作戦を立ててみせた。


「とにかく、このガラハの森も、安全と言えなくなりました。新手が現れるかもしれない。かといって、後ろに下がることは出来ない……遠回りだし、ガラハの洞窟を抜けなければなりませんからね。ここは、多少強引にでも、このまま森を進みましょう。戦力を分散させることは、考えづらい……もう新手は現れないと踏むしか。最初の計画通りです。このままガラハの森を進みます」


 フランシスカはしっかりと皆に指示を出していた。異論は無し。


 そのやり取りを、鷹のような鋭い眼で見ている、一人の人影が、フランシスカ達から、遠く、遠く離れているところから見つめていた。


「ふーん」


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