第五聖女マリアンヌの影
聖女の勢力を除く、いわゆる『第三の勢力』として浮上してきた、赤い牙。フランシスカはその名を初めて聞いたので、色々な内政があるのだな、と思った。状況とすれば、聖女達の共通の敵を作るには、うってつけ。そういう感情。
フランシスカとホウオウ、シュクレは、順調に、フランシスカの領地へと向かっていた。周りの景色は、それほど殺風景でもなく、おだやかな草原が広がっていた。
そのことに、フランシスカとホウオウは戸惑っていた。綺麗すぎるというか。
「ふむ……このような綺麗な土地があったとは」
シュクレが言った。彼も、よく知らぬようである。
フランシスカが尋ねる。
「シュクレ殿、この領地は、アクドラ全体だと、どの位置にあたりますか?」
「東の方角ですから、本来、行き止まりのはずです。このような土地の話を聞いたことはありません」
「知らない、土地……」
フランシスカが呟いた。突然、現れた土地?
「ちなみに、東の方角なので、第五聖女マリアンヌと、最も近い位置にいると言えます。そこが……少し、不安な要素ですね」
シュクレは淡々と語っている。その言葉が、フランシスカに警戒心を持たせた。
「マリアンヌが、危険という事ですか?」
「そうですね。彼女は、『自分こそが本当の聖女なんだ』『国を守る責務は全て私のものなんだ』、そういう考えの人物ですから、追放された今も、そう思っているんですよ。だから、周りの聖女は偽物だと言って聞かない。フランシスカ殿が現れて、また偽物の聖女が現れたと言って、襲ってくる可能性はあります」
「被害者ですね。とはいえ厄介……わかりました。頭に留めておきます」
「お願いします。しかし、隣のホウオウ殿に、実力を見せてもらいました。ホウオウ殿の実力をもってすれば、マリアンヌが襲い掛かってきたとしても、敵ではないでしょう。マリアンヌには……」
「気になる言い方だな。『マリアンヌ以外』なら、どうなるんだ?」
「第二聖女ナイムに剣で勝てるかと言うと、かなり怪しいかと」
シュクレの言葉に、フランシスカは驚いた。ホウオウに勝る剣の腕の持ち主など、思いつきもしなかったからだ。
「何%くらいの確率で、勝てる?」
ホウオウが尋ねた。それに、シュクレは首を振った。
「確率はありません」
「なら、わからないじゃないか」
「勝率が0%だから、確率がないのです」
聖女達は、団結し得るか。




