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ここに六つの聖女を立て、お前を殺そう。国王。  作者: 夜乃 凛
第一章 追放すなわち無能
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埋葬

 シュクレのアジト内の敵は、殲滅された。敵の兵が五人。そして、シュクレの部下は殺されてしまい、六人の死体が横たわっていた。その姿を見て、シュクレは痛ましく思った。

 地下だが、天を仰ぐ。


「すまない」


 死んでしまった仲間に対する、シュクレの言葉だった。ホウオウは、もう周りを警戒していない。


「全滅なのか?」


 ホウオウがシュクレに尋ねた。


「ええ、残念ながら。申し訳ありませんが、ここを出なくてはなりません。アクドラの詳しい話をしようと思っていたのに……この惨状では、逃げた方がいいでしょう、ここから。良い仲間たちでした。私が、ここに留まっていた方が、良かったのかもしれない。しかし……こんなことが」


「死体を、埋めてあげましょう。私も手伝います」


 フランシスカは目を伏せながら言った。


「ありがとうございます。……これが、現実です。この国では、このようなことがまかり通る」


「埋めてあげよう」


 ホウオウが言った。


 三人は、アジトの外に、仲間の死体を担ぎ出した。当然、敵がいないことを確認してからの作業である。

 ゆっくり、ゆっくりと、死体を埋葬してやった。シュクレはもう立ち直っている。いや、そう見える。彼はポーカーフェイスなのだ。どんな心境なのかは、奥の奥。


 死体を埋め終えた三人は、アジトの中へ引き返した。敵の死体は放置されている。

 その死体を見下ろしながら、フランシスカが語る。


「この兵士たちが、誰から送られてきた人物なのか、わかりますか?シュクレ」


「率直に言うと、わかりません。手がかりは、一様に白い装束、そして、斧使いということだけ。これだけでは、誰の部下なのかは特定出来ません。所持品を調べますが……おそらく、簡単には特定出来ないでしょう」


「調べてみてもいいのか?」


 ホウオウが言った。彼女は、死体には慣れている。


「どうぞ。私も加わるべきですが……すみません、少し休ませてください」


「大事に」


 シュクレを気遣うホウオウ。優しさの片鱗。

 その間、フランシスカは何をすべきか考えた。仲間を殺されたシュクレの心境を思うと、あまり迂闊な行動には出てはいけない、そう思った。敵を追撃することも大事だが、人の心というのは、かけがえのない大切なものなのだ。シュクレの心が痛むのを、フランシスカは、見過ごすわけにはいかなかった。


「シュクレ殿、我々は後回しでいいです。ご自分の心の整理を」


 フランシスカは、そう言い出した。シュクレを気遣ってのことである。

 しかし、シュクレは辞退した。


「いえ。死んでいった仲間たちのためにも、やらねばなりません。必ずや、この国を平和にすると、私たちは誓ったのですから。……こうなった以上、他のアジトも危ういでしょう。申し訳ないのですが、フランシスカ嬢にあてがわれた、領地を使わせていただけませんか」


「勿論です。どんな場所かは、行ったことがないので、わからないですが……少なくとも、他の聖女に侵略されたりは、していないはずです。あんな国王とはいえ、権力は強いですから」


「ありがとうございます。このアジトから……必要な資料を、最小限にまとめて、持って頂かせていただきます。このアジトにお招きしたいと思ったのは、他の聖女の情報を知ってもらうためですから」


「なるほど。では……私の領地に、持っていきましょう。今回は、私が先頭を歩きます。シュクレ殿は、後からついてきてくだささい」


「かたじけない」


 シュクレは頭を下げた。彼の傷ついた心に、フランシスカの言葉は、優しく染みるように、響いた。


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