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俺らは揃ってないと意味がない7

 車は三十分程走り、マコトの道案内で人気のない工事現場の近くに止められた。


「はーい到着~。マコトさん、俺らはここで降りなきゃなんだよね?」

「あぁ。こっから先は組織の人間で対処する。コイツともここまでだな」


 ピノは撃ち込まれた麻酔でとっくに眠りに落ちていて、車の振動にも気付いていない。


 それを確認するよう後ろを振り向いてから佳樹は口を曲げた。


「えェこっから帰んの?何もねェじゃん」

「我儘言って最後にコイツと話したいっつったからここまで運転させてやったんだろうが」


 二人がブツブツ言う間に、スーッと軽自動車が二台止まった。四人の若い男が降りてきて「こちらで何を?」と男の一人が問いかけ「煙草の補充」とマコトが応える。待ち合わせの合言葉である。曽良と佳樹はここまでだ。


「ほら降りろ」


 ちぇーと言いながら佳樹と曽良はシートベルトを外す。先に降りた佳樹が眠いコケるピノに「じゃあなァ」と素っ気なく声を掛け、それを見た曽良が振り返ってピノと向き合った。


「マネさん……全部嘘でも、俺ら楽しかったよ。それだけは信じて?」


 曽良は切なげに目尻に皺を寄せ、「またね」と声を掛けて出ていった。



 返事、いいのか。とピノにしか聞こえないように囁く。

 麻酔を撃たれているとはいえ、鍛えられた工作員が眠りこけるわけがなかった。

 しかしピノは同じく微かな声で返事した。


「いいんです……裏切り者の僕が、崇高な彼らにかける言葉なんてないんです。それならこのまま、楽しかった思い出で終わってほしい」


 崇高。ドール達をそう評価したことがないマコトにとっては不思議な言い回しだった。


 ピノは夢現の中、独り言を呟き始めた。


 僕は結局、彼らを見くびっていたんです。ドールは下に見られることを一番嫌うのに。ドールが一番許さないことを、僕は一番近くでやっていたし、それに気付きもしなかった。ドールを舐めて痛い目に遭ってきた依頼人をたくさん見てきたのに。僕は本当に……


 ピノは穴の空いた風船のように息を吐いた。


 でも……みんな無事で本当に良かった。


 最後のその一言を聞き、マコトは鼻で笑った。


「ドールもお前さんも、散々お互いに嘘つき合ってたくせに、よくその一言が言えたもんだ」


 その皮肉は届いたのか、ピノはそれ以上喋ることはなかった。


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