転生したらスキルが傾星だったので、大森林に逃げ込んで野生の傾星になった件
大森林。
正確には、ウェルバラード大森林。
それは、レイティア王国と隣国との間にある巨大なダンジョンの事だ。
SFなのかファンタジーなのかハッキリしてくれと思う方もいるだろうが、あまり深く考えてはいけない。
何しろあのゲーム、主人公が映画好きという設定で、古典の名作映画の言葉を引用、『考えるな、感じろ!』とよく叫ぶのだ。
ファンタジーと科学はいずれ融合するのだ、考えるな、感じろ!!
というわけで先を続けたい。
わたくしサフィリア5才、今すぐに大森林に挑むほどアホではございません。
よって、親におねだりして武術と魔法の訓練を始めることにいたしました。
何しろ発現予定スキルが姫騎士。
それはもう面白いほどに能力が上がっていきましたわ。
でも姫騎士っていつかくっころされそうで嫌ですわね。
やはり家を出て「姫」であることをやめなければなりませんわ。
自分大事に。
世界共通、人類共通の合言葉ですわね! おーっほっほっほっほ!
こうしてわたくしは着実に力をつけ、10才の誕生日の直前、旅行先で姿を消すことに成功しました。
誰かに罪が行くといけないので、何の役にも立たないかもしれませんが書き置きを残しております。
『ドラゴンを倒してきます、探さないでください』
もちろん、使用人たちに罪はないことも強調しております。
誰かを罪に問うた場合は2度と戻らない、と書き添えて。
まあ多分戻れないけどね。
そしていよいよlet's大森林!!
浅いとこだと冒険者がうじゃうじゃいるでしょうから、しっかり準備して奥へ向かわねばなりませんわね!
旅の途中、わたくしは孤児や訳ありの女性ばかりを拾って仲間とし、大森林へと入りました。
なにせ着るもの食べるもの医療品に生活用品、お金はあっても手に入れるには人里へ向かわなければなりません。
傾星スキルが発動したら、わたくしは男性とは関われないのです。
先を見越した人手が必要だったのですわ。
決してわたくしが女の子が好きだからではありませんのよ?
ええ決して。
きゃっきゃうふふしてる女の子たちを見るのは確かに楽しいのですけれどもね。うへへ。
おっとよだれが。
そんなふうに日々を過ごしてはや8年。
いよいよわたくしにスキル『傾星』が生えて参りました。
スキルというものは環境によって変わるもの。
もしかしたら『姫騎士』が『大森林の戦士』に変わったように、『傾星』にも何か影響が、と思ったのですが、その期待も虚しく、影響は微々たるもの……というか意味不明なものでした。
わたくしの新しいスキル、それは。
『野生の傾星』。
意味わからんわ!!
野生のってなんじゃ野生のって!!
詳細鑑定によると、『野生的な魅力で異性を虜にする』らしい。
大森林来た意味ないやんけ!!
いや待ていや待て、冷静になれ、ビークール、ビークールだわたし。
こうして大森林に籠もっている事で、文明社会と縁が切れて女の子だけのきゃっきゃうふふで平和な人生を送れるかもしれない。
そのためのダンジョン深くでの野生生活だろうがよ!!
わたくしは希望を捨てませんでした。
世のため人のため自分のため。
戦争を引き起こす悪女になって、権力者の間であっち行ったりこっち持って行かれたり、散々オモチャにされて凌辱されるくらいなら、さよなら文明また来て百合百合な生活のほうがなんぼかマシってものでございます。
あ、百合百合っていってもガチの百合ではございませんわよ?
雰囲気だけね、雰囲気。
百合もいいけど、わたくし薔薇のほうが好みですので。
それだけは、本当にそれだけは、残念無念で口惜しゅうございますわ……。
と、そのとき、大森林の上空に爆音とともに姿を現したものがございました。
そう、それは、大型星間船。
ギランギランで豪華にでっかいそれは、大森林の我が家の近くに不時着しようとしております。
脳内で、前世でやったゲームのOPが再生されました。
どうしてかしら、もうずっと忘れていた、思い出しもしなかった曲なのに……。
熱い涙がわたくしの頬を流れていきます。
わたくしは仲間たちとともに、銀色に光る巨大な宇宙船を見守ったのでした……。
負けねえからなっ!?
野生の傾星舐めんなよっっ!!!(号泣)
ー続かないー