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第71話 聖剣伝説4

「なんでございましょうか。神に愛されし偉大なる勇者マリア様。あなた様のお言葉は、これすなわち神の御言葉。俺はそれを全身全霊を込めて叶えてみせましょう。なんなりとお申し付けくださいませ」


 さっきまでのクソムカつく反抗的な態度とは打って変わって、まったく正反対の超絶神対応をしてくるライプニッツ司教。


 キラキラした少年のような目で私を見つめてくる。

 マジで別人だった。

 できるんなら最初からそうしろっての。

 そしたら私が聖剣を抜く必要もなかったのに。


 まぁ今はそれはいい。


 結論を言おう。

 私は勇者になるなんてまっぴらごめんだった。


 だって物語に出てくる勇者ってたいてい、しんどい思いをしてるじゃない?

 この聖剣もかつて魔王を倒したとかいう伝説がある。

 聖剣が本物だったということは、魔王もマジでいるのかもしれない。


 ってことは勇者になっちゃうと、魔王と戦わされる可能性があるということだ。


 いやいやいやいや、なんで私がそんなことをしないといけないのよ?

 意味わかんないでしょ。


 よってそれを避けるためにも、私が勇者であることはこの3人の間だけの秘密にしなければならなかった。

 絶対に外に漏らしてはならない。


 そもそもアイリーンは、私が命令すれば拷問されようが殺されようが、絶対に口を割らないだろう。

 この子の口の堅さは信用に値する。


 だから問題はライプニッツ司教だ。

 私は上層部に報告しようとするライプニッツ司教を、ここで止めなくてはならなかった。


 私は頭を高速でフル回転させると、言いくるめるための言葉をひねり出した。


「ねえ、ライプニッツ司教」

「なんでしょうマリア様。ご要望がありましたら、なんなりとお申し付けください」


「聖剣伝説が本当だったということは、もしかすると魔王もいるということになるわよね?」

「その可能性はゼロではないでしょうね。聖剣は魔を討つために神より授けられた剣であり、聖剣伝説にも魔王を討ったとはっきりと記されております」


「じゃあもし仮に、本当に仮定の話なんだけど」

「はい」


「魔王なる存在が本当にいて、復活したとしましょう。魔王は最初に何をするかしら? あなたが魔王になったと思って考えてみて」


 ライプニッツ司教は少しの間、目をつぶって考え込むと、言った。


「そうですね……やはりまずは現状の把握でしょうか? 人間社会の情勢や、聖剣と勇者の存在などを調べることでしょう。今がどういう状況かの情報収集をすると思います」


「私も同意見ね。でも、だとしたらよ? 勇者がどこのだれなのかを大々的に明かしておくのはまずいでしょう?」


「む! それはたしかに!」


「魔王はこっちの存在を知っているのに、こっちは魔王が復活したことすら知らないんだから、圧倒的に不利な状況から魔王との戦いは始まることになるわ」


「マリア様の仰るとおりです!」


 ここまで聞きに徹していたアイリーンが、納得という風にポンと手を叩いた。

 さすがアイリーン。

 実にいいタイミングで合いの手を入れてくれるじゃないの。


「じゃあ次の質問よ。その一方的に有利な状況で、魔王はどんな行動をとると思う?」


「っ! 何も知らない無防備な勇者の暗殺――!」

 ライプニッツ司教はハッとしたように、大きく目を見開いた。


「やっと気付いたみたいね。魔王はバカ正直に戦わずに、勇者をこっそり暗殺してから、誰も(かな)うものがいなくなった状況で、人類に戦を仕掛けてくることでしょう」


「たしかに物語に出てくるような、反社会的行為を平然と行う魔王なら、そんな卑怯な手を使っても不思議じゃないですよね」


 またもや絶妙のタイミングで、うんうんと頷くアイリーン。


 まぁ?

 別に魔王じゃなくても、これくらい人間でも普通にやるだろうし、むしろ人間の方が裏工作とか足の引っ張り合いとかでドロドロしてそうだし?

 古今東西、重要人物の暗殺なんて枚挙に(いとま)がないんだけれど。


 今はそれは置いといてだ。

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