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第3話 クズ令嬢、地方に視察に行く。

「だるいー、行きたくないよー。みんなと遊びたいー」


 休日の昼下がり、私はセレシア家所有の超豪華な馬車に揺られて街道を下っていた。

 今日は学園がお休みだったのに、訳あってかったるい地方視察に行かなければならなくなってしまったのだ。


「お父さまに急用ができたから代わりに私が行かないといけないなんて。あーあ、ほんとマジさいあく……」


 私が視察したって、なんにも分かんないのに意味ないでしょう?

 なのにセレシア侯爵家の人間ってだけで、こんなことをしないといけないだなんて。

 ああ、なんて可哀想な私……。


 しかもだ。

 視察先に到着して馬車を降りるとすぐに、近くで遊んでいた貧民の子供たちがわっと一斉に駆け寄ってきたんだよ。


 こんなド田舎ではまずお目にかかれない高貴すぎる私の姿が、よほど珍しんだろうね。


「いやだわ、まるで死肉にたかるハイエナね……汚らわしい」


 あんな鼻水垂らした汚らしいガキんちょに触られでもしたら、ばい菌がうつって大変なことになっちゃうわ。


 だから私はこれ見よがしに一括してやった。


「下がりなさい下民の子供! 貧乏人のその薄汚い手でこのマリア=セレシアに触れないでくださる? 手を洗う素振りも見せずに小汚い手でこの私に触れようだなんて、病気がうつったら困るでしょうが!」


「あ……」

「ご、ごめんなさい……」


 いきなり怒られて目に見えて意気消沈する子供達。

 だけど私は相手が子供だからって容赦はしなかった。


「まったく。あんたらはどうしようもない貧乏人なんだから、せめて心の中くらいは私のように高貴で美しくいようとしなさいよね。今のアンタたちはね、貧乏な上に心まで貧しくなってしまっているのよ! ほら、分かったらさっさとこの場から消えなさい! 飛沫感染するかもしれないでしょ!」


 ふふん。

 ボロをまとった貧乏人の子供たちが、半べそかきながら逃げ去っていくのを見るのは、とっても気持ちがいいわね!


 ああ、これこそ私の求めていた状況よ。


 圧倒的な高みから。

 これ以上ない正論でもって。

 反撃できない弱者をいたぶることのなんと心地よいことでしょう!


 私は来る時とは打って変わって、それはもう気持ちよく地方視察を行ったのだった。



 ~~後日。



「マリア様、地方衛生局から感謝状が届いております」


「地方衛生局から感謝状? 私に?」


 衛生局ってことは病気とか担当してる所だよね?

 私にはなんの関係もないし、そもそも衛生局の人となんて会ったこともないんだけど?


「なんでも先日マリア様が行った地方視察によって、その地域の子供が自発的にうがい・手洗いをする割合が30%も向上したそうでして。その感謝を述べたいとのことのようですな」


「はぁ……。それはまあ良かったですわね?」


 っていうかなんの話?

 私、何かしましたっけ?

 誰かと間違えてない?


「あまりに劇的な効果が見られたため、一体全体どのような指導・教育をなされたのかできればご教授願いたいとのです」


「はい……?」


 い、いったいなにが起こったの?


 ねぇねぇそこのあなた。

 ちょうどいいわ。


 参考程度にちょっとあなたの意見を聞かせてくれないかしら?


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