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第13話 クズ令嬢、可哀そうな仔猫をもてあそぶ。(前編)

「雨が本降りになってきたじゃん、さいあく……」


 学校が終わったあと。

 私は他に誰もいなくなった馬車待合室で、外を眺めながら悪態をついていた。


 雨は嫌いだ。

 お気に入りの靴は汚れちゃうし、せっかくセットしたゆるふわの髪がぺたんと寝てしまうから。


「ちっ、それにしても迎えの馬車が来るのが遅い、遅すぎるわ。この私をこんなに待たせるなんて死んで詫びるレベルよ」


 それにしても、普段は1時間も前から待っているのが当たり前なのに。

 あのなんでも完璧にやってのける専属メイドのアイリーンが、こんな平凡なミスをするなんて珍しいわね。


「これは久しぶりに徹底的にいびってやらないとね……うふふふふ」

 私はわきおこる嗜虐心に、いやらしく目を細めた。



「はぁ、それにしても馬車が来るまでほんと暇ね……」


 何かいい暇つぶしでもないかしら?


 そんなことを考えながら視線をさまよわせていると。

 ふと、窓から見える大木の根元に木箱が置かれていて、その中になにやら動くものがあるのが目に入った。


 なんとなく興味をひかれた私が傘を持って、馬車待合室を出て見にいってみると、


「みゃー、みゃー」


 木箱の中には一匹の三毛猫の仔猫が捨てられていた。

 お腹が減っているのか必死に鳴き続けている。


 私がすぐそばまで近づくと、


「みゃー、みゃー、みゃー、みゃー!」

 拾ってもらえるとでも思ったのか、私を見上げてよりいっそう一生懸命に鳴きはじめる仔猫。


「おまえも1人なんだ……私と一緒だね」

「みゃー……」


 私はしゃがみこむと、その仔猫をそっと傘の下に入れてあげた。

 そのまま何をするでもなく1人と1匹、見つめ合って傘の下で雨をしのぐ。


 そしてしばらくして馬車がやってくる音が聞こえてくると、私は静かに立ち上がった。

 そのまま木箱を離れようとすると、


「みゃー、みゃー!」


 仔猫がひと際強く鳴いてきたので、私は振り返った。

 私と目が合うと仔猫はとても嬉しそうな顔をする。


 でも――。

 私は立ち去った。


「みゃー……」

 ――とみせかけて振り返ると、仔猫はしょぼーんとした顔からまたすぐに嬉しそうな顔になって、


「みゃー、みゃー、みゃー!」

 元気よく鳴きはじめる。


 そんなことを何度か繰り返してから、結局私はその場を立ち去ったのだった。


 私が一体何をしていたかというと。


「ふぅ、捨てられた仔猫を助ける振りをして見捨てる遊びは、何度やっても格別よね(笑)」


 私が振り返ったら馬鹿みたいに期待して鳴いてくるんだもん。

 しょせんは畜生ってとこかしら(笑)


 だいたい、血統書付きならまだしもこんな小汚い野良の仔猫なんて誰が飼うの?(笑)


 ご愁傷様!

 恨むなら野良に生まれた哀れな己の出自を恨むことね!


「ま、運が良ければどこぞの物好きが拾ってくれるでしょ?」


 どーぶつあいごだんたい?とかいうのが最近はあるみたいだし?



(後編に続く)


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