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金木犀

 それは金木犀の香る日のことだった。俺は葬儀場に務めていて、葬儀の司会進行や火葬場まで親族を送る霊柩車やバスの運転なんかもしている。その日の葬儀は若くして事故で亡くなった男性とその子供の女の子の葬儀で、いつもよりずっと空気が重かった。

 子供の葬儀の時はいつもそうだ。年齢が上がるほど雰囲気が穏やかなものになっていく。大往生だったから、ずいぶん穏やかな最期で、なんて優しい空気になることも多い。

 今日の葬儀の喪主は亡くなった男性の妻であり女の子の母親だった。ご主人と子供を同時に亡くし、憔悴する様子は見ているだけでも辛いものがある。正直俺も今日の、この葬儀の担当はしたくなかった。

『故 木原駆・木原透子 儀葬儀式場』

 そう書かれた看板は立派であるが故に、寂しい。

 打ち合わせ、葬儀、火葬。それらを終えて片付け、葬儀場はあっという間にもぬけの空になる。写真立ての中で微笑む彼女は、キラキラに光っているようで碌に見ることも出来なかった。

「今回は会えなかったな」

 がらんどうの式場でポツリとつぶやく。

「臼井ー、ちょっと手貸してくれ!」

「はーい」

 先輩に呼ばれてその場を後にする。次は巡り会えますように。その願いを口には出来なかった。

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