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クリーニング屋

 大荷物を抱えて家を出る。季節の変わり目は忙しい。季節の変わり目じゃなくても、専業主婦は思ったより忙しかった。朝ごはんと弁当を作り夫と子供を起こし食べさせ着替えさせ洗濯を回し、自分の朝ごはんを食べたら弁当を持たせて子供と夫を送り出す。家中の掃除をして今はクリーニングに向かっている。帰りに買い出しをして帰ったら昼ごはんを食べて、一息吐いたら子供が帰ってくるのでおやつを出して宿題を見る。その後衣替えなどもしなくてはいけないし、夕ごはんの用意もある。

「三食昼寝付きって言ったのは誰かしら」

 インターネット上の掲示板やSNSでそのように専業主婦を揶揄する声があるけど、食事の用意は自分だし、昼寝をするための布団やリネンの洗濯と手入れも自分だ。それは三食昼寝付きって言わない。

 ぶつくさ言いながらクリーニング屋さんに行くと並んでいて、季節の変わり目だから仕方ないとは言えげんなりしてしまう。十数分並んでなんとかクリーニングの依頼を出すも、混んでいるから出来上がりまで時間がかかると言われてしまった。

「やれやれ」

 その後買い出しに行くと『行楽の秋』と銘打ってサツマイモやクリのお菓子がたくさん置いてある。まだ午前中なのに疲れ果てているから、一つくらい買っても良いのでは?なんて自分を甘やかすことにしてサツマイモチップスをカゴに入れた。

 帰宅して昼ごはんを食べて食器を片付け軽く掃除をしたら早くも小学生の子供が帰ってきた。明日の用意を手伝いおやつを出して洗濯物を畳んだら宿題を見る。終えると中学生の子供が帰ってきて、少し話したら夕ごはんの用意だ。子供達に先に食べさせその間に風呂を済ませ、入れ替わりで子供達は風呂へ、私は夕ごはん。風呂から上がれば下の子は寝てしまい、上の子は宿題をすると部屋に引っ込んだ。

「はーやれやれ」

 夫から遅くなると連絡が来たので夫の夕ごはんを避けてから台所を片付ける。それが終わったらやっと一息つけるので昼間買ってきたサツマイモチップスを探すと……なかった。もしやと思ってゴミ箱を見ると案の定空の袋が突っ込まれている。あんまりだ。

 悲嘆に暮れつつお茶を飲んでいると夫が思ったより早く帰ってきた。

「健介さん、お帰りなさい」

「ただいま、透子さん。これ、お土産」

「ありがとう」

 私は神に見捨てられてはいなかった。受け取った紙袋にはケーキの箱が入っている。中にはサツマイモクリームのケーキとモンブランが鎮座していた。

「帰りに目に付いたから買ってきたんだ。好きな方食べていいよ」

「どうしよう。んー……半分こしてもいい?」

「もちろん」

 そう言って夫は風呂に向かい、私は彼の食事の用意をする。ケーキは冷蔵庫で待っていてもらおう。

 単純かもしれないし、チョロいのかもしれない。けど、健介さんと結婚して良かった。そう思える一時だった。


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