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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第六十六章 第三戦線

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種明かし

 ザイス=インクヴァルト大将捕縛の報せが届くと、帝都の隅々まで鳴り響いていた銃声はあっという間に消えた。先程までの戦いが嘘だったかのような静寂である。


「な、何が起こっているんだ……?」


 ヒンケル総統は戦闘がいきなり停止したことに呆気にとられていた。総統はシグルズと親衛隊の企みを何も知らされていなかったのである。


「我が総統、それについては、私からご説明いたしましょう」

「カルテンブルンナー? 戦いはどうなったんだ?」


 地下壕に姿を現したカルテンブルンナー全国指導者。不敵な笑みを浮かべながら答える。


「戦いなど初めから起こってはおりません。全てはハーケンブルク中将閣下と示し合わせた欺瞞工作なのです」

「ど、どういうことだね?」

「親衛隊はハーケンブルク中将閣下より、ザイス=インクヴァルト大将が謀反を企んでいることを密告されていました。そこで、ザイス=インクヴァルト大将に敢えて行動を起こさせた後、逮捕する算段を立てたのです。我々の作戦は成功し、ザイス=インクヴァルト大将は今や親衛隊が確保しております」

「そうだったのか。全く何も知らなかったぞ」

「申し訳ありません。しかし我が総統には、軍に怪しまれるような行動をとって頂きたくありませんでしたので、情報を伏せさせて頂きました」

「囮、ということか」


 軍部の狙いはヒンケル総統であり、彼が怪しい行動を取れば警戒される可能性が大きかった。ザイス=インクヴァルト大将を確実に追い詰める為、総統は囮にされたのである。


「はい、その通りです。このような無礼を致しましたこと、深くお詫び致します。処分はいかようにでも」

「いや、いい。反乱を速やかに鎮圧した功労者に罰など与えるものか」

「はっ。ありがたき幸せ」

「ところで、どうして帝都で戦っているフリなどする必要があったんだ?」

「ザイス=インクヴァルト大将は、中将閣下のことを完全に信用してはいませんでした。中将閣下が早々に大将を裏切った場合、彼はそれ以上の行動を起こさず、中将閣下の讒言だと開き直る可能性がありました。全ては大将の化けの皮を剥がす為の策略です」


 ザイス=インクヴァルト大将が全土で行動を起こすまで泳がせる必要があった。そうでなければ『シグルズが勝手に反乱を起こし大将に罪を擦り付けた』と強弁される可能性があったからである。


「なるほど。君も実に策略家だな」

「親衛隊の仕事ですから」

「シグルズ君は無事なのだな?」

「もちろんです。帝都においては、両軍共に、若干の負傷者が出ただけに留まっています」


 最初から戦う気のない約束試合。第88機甲旅団と親衛隊の戦闘は、事故による若干の負傷者しか出さなかった。


「しかし、帝都以外では犠牲も出ているのだろう?」

「ええ。大将に呼応し蜂起しようとした部隊を襲撃し殲滅しましたが、こちらにも多少の損害は出ています」

「もう少し具体的に言ってくれ」

「はっ。鎮圧した敵は全体でおよそ3万。我が方の損害は3千ほどです」

「3万人を、皆殺しにしたのか?」

「そこまではしておりません。降伏する者は強制収容所に入れ、それ以外は殺しました」

「……降伏を認めたのなら、まあいいか。ともかく、反乱は伏せがれたのだな?」

「はい。全ての反乱分子は粛清しました」

「ザイス=インクヴァルト大将は、今どうなっている?」

「帝都に連行している最中です。明日には到着するでしょう」

「分かった。本人からじっくり話を聞くとしよう」

「尋問ならば親衛隊で行いますが」

「私が話を聞きたいと言っているんだ。いいから連れてきてくれ」

「はっ。我が総統のご命令とあらば」


 一件落着。反乱の芽は完全に摘まれ、親衛隊の実力が世に示されたのであった。それは軍部と親衛隊の関係が親衛隊優位に変質したということでもある。


 ○


 同日。帝都で芝居を終えたシグルズは一直線にハーケンブルク城に向かっていた。ハーケンブルク城にザイス=インクヴァルト大将の部下が潜んでいることを承知で彼を裏切ったからである。


「姉さん、大丈夫だった?」

「ええ、シグルズ。心配ないわ。言ったじゃない。敵の動きは全て見通しているって」

「それなら、よかった……」

「私を甘く見ないで欲しいわね」


 エリーゼは結局、マキナが彼女を救ってくれたことについては誰にも言わなかった。バレると面倒なことになりそうである。


「ところでシグルズ、リリーちゃんがあなたと話したいらしいわよ」

「え? ああ、彼女か」


 ハーケンブルク城の城主と名乗って住み着いていた少女、リリー・ハーケンブルク。彼女とは長らく顔を合わせておらず、シグルズは会っておくことにした。リリーは相変わらず質素な服を着て裸足であった。


「……大丈夫か、君。自分で靴を履くことを拒否しているのか?」

「はい。城の中なら靴を履く必要はないのです」

「……まあ、君の意志ならいいんだ。それより、話したいことがあるみたいだけど?」

「はい。あなたに知らせなければならないことがあるのです」


 リリーは強い意志を感じさせる声で言った。

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