表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
967/1122

マシッソス砦の戦いⅡ

 対陣は既に5日に及んでいた。シグルズ率いるゲルマニア軍はマシッソス砦の城門を一つとして突破することが出来ず、戦闘は膠着状態に陥っていた。


「クソッ……魔法を使ってない奴らがどうしてこんなに堅いんだ」


 シグルズは焦っていた。自分の評価が下がるくらいは別に構わないが、時間をかければかけるほど大量の物資が消費され続けてしまう。


「元より、歩兵に対して魔導弩の威力は過剰だった。火縄銃になったところで大して変わらんということだろう」

「分かってる。ただの愚痴だ」

「そうか」


 魔導弩と火縄銃の装填速度は同じくらいであり、どちらも歩兵に対しては致命的な威力を誇る。歩兵だけが相手ならば、武器がどちらであろうと攻撃力に差はないのである。装甲車両に対する攻撃力は天と地ほどの差があるが。


「オーレンドルフ幕僚長、何かいい作戦はないか?」

「城攻めにおいて、内通者でもいない限りは、敵を簡単に崩す策などは存在し得ない。犠牲を顧みずに兵を突撃させるくらいしかないだろうな」

「……やはり、それか。僕もそろそろ覚悟を決めないといけないかもな」


 思えばアンキューラの時も同じような状況に陥った。城に明確な弱点がない限り、城攻めというのは多大な命を消費しないと成し得ないのである。


「シグルズ様、また、あんなことをやるのですか……?」

「ああ、そうだ。全軍に総攻撃の用意をさせてくれ」

「はい……」


 シグルズはまたも真正面からの力攻めを命令せざるを得なかった。


 ○


「殿下! ゲルマニア軍、総攻撃を開始した模様です!」

「攻め寄せる敵の数は10万を超えています! これは、いくらなんでも……」

「確かに、こちらの兵力は僅かに2万。厳しい戦いとなることは避けられないでしょう。しかし、そう悲観することはありませんよ。そもそもここは時間稼ぎの砦。完全に守り切る必要もありません」

「では、この砦は放棄して撤退するのですか?」

「そうは言っていません。負けても何とかなると言っただけです。ですが、負けたくはないですよね」

「は、はあ」


 クロエは微笑む。ここでゲルマニア軍を撃退することを、クロエは全く諦めていなかった。


「し、しかし殿下、何か策はあるのでしょうか?」

「もちろんです。万が一にも作戦が露見しないように、実行部隊にだけ知らせてある作戦があります。とは言え、まずは普通に応戦しましょう。狙撃兵を前に出して下さい」

「はっ!」


 すぐに戦いの火蓋は切られた。ヴェステンラント軍は常に修復される無敵の城壁から、攻勢に出たゲルマニア軍に弾丸を浴びせ続ける。しかし、一発で何人も貫くことが出来る魔導弩とは違い一人しか殺せない銃弾では、数の劣勢を覆すことは困難であった。


「ゲルマニア軍の勢い、全く衰えません!」

「敵の数が多過ぎます! とても押さえ切れません!」

「クッ……まだだ! 耐えるんだ!」


 必死に弾を込め、ゲルマニア兵を狙い撃つヴェステンラント兵達。しかし士気がいくら高いところで大した意味はなく、削っても削っても次々と後ろから繰り出されるゲルマニア軍を食い止めることは出来なかった。


「クッソ! もうすぐそこに!」

「敵の攻撃が激し過ぎます! 頭を出せません!」


 城門の目の前まで接近したゲルマニア軍は、突撃銃などを使用し城壁に激しい銃撃を加える。魔導装甲を使う訳にもいかないヴェステンラント兵はマトモに射撃を行うことすら出来なくなってしまった。


 と、その時であった。


「……何? 総員、撤退せよ!!」

「て、撤退ですか?」

「ああ、そうだ! 第一防衛線は放棄する! 魔女達が城壁を支えてくれる間に下がれ!」


 クロエの命令は第一の城門の放棄であった。兵士達は疑問を持ちながらも、命令通り迅速に後方の城壁に撤退した。


 ○


「ゲルマニア軍、第一防衛線を突破! 砦に突入した模様です!」

「ここまでは計画通りだ。まだ、機を待て」


 その頃、スカーレット隊長率いる別働隊は砦の外で身を潜めていた。ゲルマニア軍が城壁を破壊し突破している間も、ずっと沈黙を保っていたのである。


「ゲルマニア軍戦車部隊、城内に突入! 第二防衛線の友軍と交戦状態に入りました!」 「うむ。そろそろ好機か」

「はっ」

「騎馬隊、全軍出撃せよ! ゲルマニア軍を殲滅するぞ!」

「「「おう!!!」」」


 スカーレット隊長率いる白き騎馬隊、およそ3千。砦の攻略に夢中になっているゲルマニア軍を側面から攻撃するべく出撃した。


「勇猛なる騎士達よ! ゲルマニア軍はことごとく根切りにせよ!! 戦車はことごとく破壊せよ!!」

「「「おう!!!」」」


 側面からの攻撃などまるで想定しておらず隊列の乱れたゲルマニア軍の中衛に、スカーレット隊長は突撃した。騎馬隊はゲルマニア軍が体勢を整える前にその陣形に斬り込み、馬上から振り下ろす剣で兵士を切断し、戦車を次々破壊していく。


「進め進め! 戦車を一両でも多く破壊するんだ!」

「「おう!!」」


 戦闘は乱戦に突入する。乱戦になるとゲルマニア軍は戦車や大砲を使うことが出来ず、ヴェステンラント側が優位を得る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=959872833&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ