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鳳翔の爆撃

「何ともデカい大砲だな。ゲルマニアはよくぞこんなものを作れるものだ」

「大八洲の方々こそ、ゲルマニアから何ら伝え聞くことなく鋼鉄船を建造するのは、驚きですよ」

「大したことではない。我らの船は未だ荒削りだ。このような大砲は作れん」

「そういうものですか」


 本来、空母は艦載機の発着艦を可能にする為、非常に高度で精密な設計と技術が不可欠である。しかし大八洲は魔法でそれを補っている為、ゲルマニアと比較すれば低い工作技術でも、航空母艦を建造することが出来たのである。まあ魔法の助けがなければ機能しない船を完成したと言っていいのかは議論の余地があるが。


 反対に、大砲は僅かな歪みも許されない。射撃は一瞬のことであり、魔法で介入するのも不可能だ。これはゲルマニアの高度な技術の結晶と言ってもいいだろう。


「ネルソン、お前は造船にはあまり詳しくないのか?」

「私はブリタンニア人です。経験を買われて艦長などに任じられましたが、技術についてはあまり詳しくないもので、申し訳ありません」

「なるほど。ゲルマニアも友邦を信用してはいないということか」

「晴政様、あまりそのようなことは仰らない方がよろしいかと」


 エウロパの事情に深入りしようとした晴政に、源十郎が止めに入る。


「まあよい。ネルソンよ、もう少しこの船を見て回ってもよいか?」

「はい。気が済むまでご覧になってください」

「感謝するぞ」


 艦橋にいてもあまり楽しくないと思った晴政は、ネルソン提督との面会を早々に切り上げ、シャルンホルストを見物することにした。


「源十郎、どう思う?」

「と、仰いますと?」

「この船を見てどう思うか、だ。何でもいい、聞かせよ」

「はっ。我が国の鳳翔と比べて、隅々まで細密に造られていると見受けられます。やはりゲルマニアの方が、造船技術においては卓越しているものかと」

「俺もそう思う。やはり、我らではまだ、ゲルマニアには太刀打ち出来ぬな」


 鳳翔は実質的には爆撃機を運ぶ機能しかない船だ。そう精巧な加工は必要なかった。


「晴政様がそのようなことを仰るとは」

「それはどういう意味だ?」

「いえ、お気になさらず」

「まあよい。俺達もいずれ、これを造れるようになる」

「そうなればよいですね」


 晴政と源十郎は鳳翔に戻った。晴政の瞳には、バンダレ・ラディンとは別のものに対する炎が宿っていた。


 ○


 ACU2315 9/22 ガラティア帝国 イラン王国近海


「晴政様、バンダレ・ラディンが見えました」

「ようやくか。長旅であったな。俺にも見せろ」

「はっ」


 望遠鏡を手渡す源十郎。晴政の隻眼は、目標であるバンダレ・ラディンの港を捉えた。


「流石、ビュザンティオンを除けばガラティア一の港と謳われるだけのことはある。良い港ではないか」


 バンダレ・ラディンは天然の良港である。即ち、波を制する大きな湾と島々の奥に、そのままでも発着場となる低地が広がっている。上陸にはもってこいの場所だ。


「あの港は、軍港として整備されたものではありません。下調べの通り、砲台などは見受けられませんね」

「砲台なんぞいくらでも隠せるだろう。それに、我らに大砲など無意味だ」

「それもそうでした」

「では、あの港を焼き払うとしよう。爆撃機の支度をせよ」

「はっ」


 多少港を破壊したところで上陸に支障はない。晴政は港ごと敵を木っ端微塵に粉砕することを決めていた。


「爆撃機、発艦の用意が整いましてございます!」

「よーし。甲板に残っている者はおらぬな?」

「爆撃機を押し出す者共のみです」

「よろしい。爆撃機、発艦を開始せよ!」

「ははっ!」


 爆撃機は一斉にプロペラを回転させ始める。鳳翔と比べるとはみ出しそうな大きさであり、本来ならばここからの発艦などとても不可能なのだが、晴政は鬼道を以て問題を解決させた。


「一番隊、押し出せ!」

「はっ!」


 爆撃機が僅かに自力で進み始めると、魔女達が四方を囲み、爆撃機を投げ飛ばすように力を込める。魔法の力に叩き出され、異常な加速を果たした爆撃機は、たちまち鳳翔の飛行甲板を抜け、一瞬だけ高度を落とすが、そのまま大空に飛び立った。それが三機ほど続く。


「一番隊、無事に発艦を完了致しました!」

「二番隊も続いて飛べ。一番隊はバンダレ・ラディンを吹き飛ばして来い」

「はっ!」


 みるみるうちに小さくなっていく爆撃機達を艦橋から眺める晴政。本当は晴政も爆撃機に乗って出撃したかったのだが、流石に軽率過ぎると源十郎に怒られた。


「一番隊、バンダレ・ラディンへの爆撃を開始致します!」

「うむ。続けよ」


 爆撃が開始された。爆撃機の様子は見られないが、地上から立ち上る炎と煙は、肉眼でも観測することが出来た。


「おお、よく燃えておるな。流石はゲルマニアの焼夷弾だ」

「ええ。これで十分、バンダレ・ラディンは火の海になりましょう」

「ああ。だが、奴らが火の海程度に沈むとは思えん。一番隊は全て落とし切れ! 二番隊もそれに続け!」


 鳳翔が搭載してきたありったけの爆弾が、バンダレ・ラディンに落とされた。

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