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ソレイユ・ロワイヤルの処分

 ACU2315 8/10 大八洲皇國 山城國 葛埜京


「関白殿下、ゲルマニアより書状が届きました」

「書状? 何の話だ?」


 大八洲の最高指導者、関白伊達陸奥守晴政に、彼の腹心片倉源十郎がゲルマニアからの書状を手渡した。


「はっ。ゲルマニアは我らに、ガラティアの横腹を突けと要請して参りました。つまり、ガラティア本土に上陸を仕掛けよということです」

「なるほど。自分では手詰まりになったから俺達の手を借りたいという訳か」

「その通りでしょう。いかがなさいますか? ……無論、今すぐにお決めになる必要はありませんが」

「今すぐに決めるさ。俺は、この要請を受ける。ガラティアに乗り込むのは楽しそうだ」


 誰とも相談すらせず即断した晴政。関白になっても彼らしいところは変わっていない。


「そう仰ると思っておりました。直ちに諸大名を招集し、戦の支度を始めましょう」

「ああ、よろしく頼むぞ、源十郎」


 航空母艦鳳翔を保有する大八洲は、作戦が失敗することなど考えてもいない。晴政が興味を持つ限り、作戦は速やかに遂行されるのである。


 ○


 その日の内に大八洲からの返答はゲルマニアに届いた。


「我が総統、大八洲はガラティア本土強襲作戦を承諾しました。直ちに用意を始めるとのことです」


 リッベントロップ外務大臣はヒンケル総統に報告した。尋常ではない返事の早さである。


「も、もう承諾してくれたのか?」

「はい、そうです」

「まあ、嬉しいことだが。ならば、やることは一つだけだ。ザイス=インクヴァルト大将、ガラティア上陸作戦の準備を進めてくれたまえ」


 大八洲が承認すれば作戦はすぐ実行に移されることになっている。西部方面軍は直ちに上陸作戦の準備を開始した。とは言え、ゲルマニアが動かせる兵力はそう多くないが。


「我が総統、その前に一つだけよろしいでしょうか?」

「ん? 何だ?」

「上陸作戦にはシャルンホルストの火力が大いに役に立つでしょう。これを自由に動かせるようにすべきかと」

「シャルンホルストは黒海への警戒で動けないんじゃないのか?」


 ガラティアとダキアに挟まれた黒海に、ヴェステンラントの最大戦力ソレイユ・ロワイヤルが逃げ込んだ。これが黒海から出ないよう、シャルンホルストはビュザンティオンに留まって監視を続けている。


「はい、今のところは。ですので、ここは早急にソレイユ・ロワイヤルを撃沈し、シャルンホルストを自由にするべきかと」

「ソレイユ・ロワイヤルは不沈艦だそうじゃないか。本当に沈められるのか?」

「沈めずとも、自沈させれば十分です。つまり、十分な兵力で移乗攻撃を仕掛ければよいかと」


 ソレイユ・ロワイヤルを乗っ取ることを目的として攻撃を行えば、鹵獲される前に沈めるだろう。艦砲の火力で沈められなくとも、無力化出来れば十分である。


「なるほど。勝てる見込みはありそうだ。では、そちらも好きにやりたまえ。但し、万が一にもシャルンホルストを失ったりはするなよ」

「無論、シャルンホルストが危機的な状況に陥れば、作戦はすぐさま中止します」

「うむ、よろしい。そちらは全て任せる」

「はっ」


 ソレイユ・ロワイヤルさえ沈めてしまえば、ゲルマニア海軍に対抗し得る戦力は大八洲の鳳翔しかない。枢軸国が絶対的な優位を得ることが出来るだろう。


 という訳で、上陸作戦を準備する片手間に、ソレイユ・ロワイヤル撃沈作戦が開始された。


 ○


「申し上げます! ビュザンティオンより、戦艦シャルンホルストが黒海方面に出撃しました!」

「ほう? シャルンホルストが動いたか」


 ゲルマニア海軍の行動はすぐに連合国の知るところとなった。軍事的にゲルマニアの制圧下に置かれている地域でも、諜報活動に抜かりはない。


「黒海に出たということは、いよいよソレイユ・ロワイヤルを沈めたいようだ。どうする、ヴェステンラントの諸君?」


 今更黒海に出撃する理由など、ソレイユ・ロワイヤルの脅威を取り除くことしか考えられない。アリスカンダルはヴェステンラントの面々に、精確にはソレイユ・ロワイヤルの所有者である黒公クラウディアに尋ねた。


「――ソレイユ・ロワイヤルが攻撃される事態は以前から想定されていた。迎撃するまで」

「逃げ場もなく援軍も見込めない状況、勝てるのか?」


 黒海はビュザンティオンの海峡を除いて外海と接続されていない。ビュザンティオンがゲルマニア軍に制圧されている以上、ソレイユ・ロワイヤルは閉じ込められているも同然である。


「それは……」

「無理があるか。ならば、ソレイユ・ロワイヤルは敵の手に落ちぬ内に沈めるしかあるまいな」

「ちょっと待って欲しい。まだ負けると決まった訳ではない。上手く行けば逆にシャルンホルストを鹵獲出来るかもしれない」

「それは魅力的な提案だな。まあ、ソレイユ・ロワイヤルは君達の船だ。私に何かを命ずる権限はない。思う存分戦うのがよかろう」

「分かった」


 クラウディアはソレイユ・ロワイヤルを防衛すべく、黒海に向かった。黒海沿岸の大半はゲルマニア軍の支配下にあるが、まだ何とか道は確保されている。

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