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アンキューラ市街戦

「総員、高度を高く保ち、敵軍を蹂躙しなさい!!」

「「おう!!」」


 空を飛ぶ魔女隊およそ5千を率いるのはクロエ。率いるだけで、シグルズが出てこない限りはレギオー級の魔女としての力を使いはしない。津波のように押し寄せる数十万のゲルマニア兵の上空100パッススほどから、彼女らは襲いかかる。


「攻撃開始!!」


 魔女達は思い思いに、真下のゲルマニア兵に攻撃を始めた。空から石を落とし、剣を落とし、氷柱を落とし、ゲルマニア軍はたちまち大混乱に陥った。が、次の瞬間であった。


「うぐっ――」

「何?」


 クロエの周囲の魔女達が銃弾に撃ち抜かれ、地上に墜落していく。


 ――突撃銃、ですか。この距離でも届くようですね。


 地上から突撃銃を乱射して反撃するゲルマニア兵。数は僅かだったが、大量の弾丸をばらまけるその武器に、防御はほぼ何もない魔女達は次々と撃ち抜かれた。空を飛びながら攻撃の魔法を使えば、それ以外の魔法は使えないからである。


「総員、散開して動き回ってください! 殺されますよ!」

「「はっ!!」」


 クロエは早々に陣形を放棄。魔女達は散り散りになって方々に飛び回る。ゲルマニア兵は見渡す限りにおり、どこに攻撃を放っても大体当たる。


「このまま攻撃を継続! 出来る限り、敵の将校を減らしてください!」


 最前線に出てきている将校に狙いを集中させる。空ならば前にいようが後ろにいようと関係なく、ゲルマニア軍の指揮系統に更なる打撃を与えることが出来た。


「クロエ様! 損害が大きくなってきています!」

「やはり、数が違い過ぎますか。一度下がります。総員撤退!」


 かなりクロエに有利な状況で殴れるとは言え、完全に一方的に殴れる訳でもない。ゲルマニア軍の反撃は思いの外強力であり、このまま戦闘を継続すれば逆にクロエの軍勢が崩壊しかねなかった。


 ○


「シグルズ様、敵の魔女は撤退しました。しかし、こちらの損害はかなり大きいようです……」

「城壁を突破してからも、こんな強力な抵抗があるとはね……」


 城壁さえ落とせば消化試合だと思っていたが、敵の反撃は想定を遥かに上回っていた。


「確かに、城内に装甲車を入れなかったのが失敗だったな」


 オーレンドルフ幕僚長は言った。


「まあな……。装甲車をアンキューラに持っていくには、堀をちゃんと埋め立てて城壁を破壊しないといけない。面倒だな」

「とは言え、そうしなければ、こんなことを延々と繰り返しながら進軍する羽目になるぞ?」

「それはちょっと……無理じゃないでしょうか……」

「ああ。恩恵をいつも受け過ぎていて忘れていたけど、対空機関砲は必要不可欠だ」


 工兵を動員し、堀に改めて装甲車両でも渡れるような橋をかけ、城壁を破壊して道を開けなければならない。これには暫し時間がかかるだろう。


「取り敢えず、対空機関砲だけ取り外して城の中に運び込もう。城内の兵士達は今、無防備だからな」

「妥当な判断だ」


 一先ずは対空機関砲を人の手で運び込む。


「それと、僕達は城壁の内側に移動するとしよう。城壁の外から命令するのは、流石にないからな」

「最高司令官が自ら城内に突入とはあまり感心しないが、まあいいだろう」


 ここからの主戦場はアンキューラ市内。司令官が後方でふんぞり返っているというのは、シグルズの好むところではない。 かくしてシグルズは司令部を城内に移し、戦闘を継続する。


 ○


「ゲルマニア軍、外堀を埋め立てる動きあり! このままでは戦車や装甲車が城内に突入してきます!」


 シグルズの行動はすぐにクロエやアリスカンダルの知るところとなった。


「やはりそう来たか。クロエ殿、これは想定内なのかな?」

「ええ、早い内にそう来るとは思っていました。そうなると、先程のように一方的に攻撃することは不可能になります」

「ここまで想定して、3日ほど持つと言ったのか」

「ええ。ゲルマニア軍が本格的に装甲車両を投入すれば、流石に持ちません」

「なるほど。しかしそれは、我が軍には籠城くらいしか勝機がないということではないか?」


 戦車も装甲車も、ゲルマニア軍がここだけに投入している兵器という訳ではない。今や彼らの一般的な師団にも組み込まれている。これが出てきたら逃げるしかないというのは、連合国軍にとっては絶望的な事実である。


「まあ、そういうことですね。ゲルマニア軍の物量は増える一方ですが、私達の兵数は大して変わっていません」

「なかなか辛い事実だな。しかし、ヴェステンラント本国にはまだまだ魔導兵が残っているだろう。もう少し送ってはくれないのか?」

「それについては、本土が未だゲルマニア軍の脅威に晒されている以上、承服致しかねますな」


 オーギュスタンが答える。確かにヴェステンラントも王都の目と鼻の先、クバナカン島を占領されており、そちらを優先せざるを得ないのは仕方ないだろう。


「こっちは帝都を落とされているのだがな」

「落ちてしまったのなら、気にする必要がなくて楽ではありませんか」

「一理あるな。まあよい。脱出の準備を進めよう」


 連合国軍は退く続き撤退の作業を進める。

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