表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第六十三章 帝都ビュザンティオン攻略戦Ⅱ
939/1122

ビュザンティオンの落日Ⅱ

「陛下、恐れながら、最早ビュザンティオンの陥落は避け得ないかと存じます」


 スレイマン将軍はアリスカンダルに告げた。ビュザンティオンは最早、これ以上の抗戦に耐え得ない。


「分かっているよ、そのくらい」

「左様でしたか。なれば、陛下とヴェステンラントの方々には、いち早く帝都を脱出して頂きたい。私が殿を務めます」

「死ぬ気か、スレイマン」

「これは我が国の問題です。ヴェステンラントの方々に迷惑はかけられません。そして陛下は、我が国になくてはならないお方です」

「……そうか。では、私達はここを脱出するとしよう。ヴェステンラントの諸君も、それでよいな?」


 敢えて反対する者はなかった。果たして連合国軍の首脳達はビュザンティオンを放棄し、東に向かった。そしてスレイマン将軍はたった一人、帝都に残る。


「城壁の外の兵を収容せよ! もう塹壕は持たん!」

「し、しかし、城壁の中に入ろうと、そこにはシャルンホルストが……」

「ゲルマニア軍も、下手に民間人を虐殺はしない筈だ。兵は分散して配置せよ。急げ!」

「はっ!」


 ある種自国民を人質にするようなもので、気分がいいものではないが、是非もなし。城壁の外の防衛線は全て放棄し、合計8万程の兵力を城内に収容する。


「それと、ヴェステンラント兵には帝都を脱出してもらえ。彼らに城を枕に死ねとは言えない。市民の脱出に合わせれば、ゲルマニア軍も気付かないだろう」

「直ちに!」


 ヴェステンラント軍については、魔法を封鎖させて歩いてビュザンティオンを脱出してもらうことにした。これでスレイマン将軍の下に残ったのは2万程度のガラティア軍のみ。兵士達は市内の各所に、魔法を使わせずに待機させている。


「ゲルマニア軍、進軍を開始しました。半日とかからず、城壁に到達するかと」

「うむ。城門を守ることも、我らには出来ない。最後に意地を示すくらいしか出来んな」


 城門に兵士を集めれば、シャルンホルストの砲撃がそれを粉砕するだろう。スレイマン将軍に打てる手はほとんど残っていなかった。


「去りたい者は去れ。私と共にガラティアの意地を張りたい者は残れ。止めはしない。そう伝えてくれ」

「はっ……」


 最早スレイマン将軍の戦いに戦術的な合理性はない。いくらかの兵士が脱出したものの、ほとんどの兵士はここに残ることにした。そうして暫く時が流れる。


「すまないな、皆。これは全て、我々のような指導者が招いたことだ」

「そ、そのようなことは……」

「ゲルマニア軍、城門に到達します!」

「来たか。早いな」


 無人の塹壕を乗り越え、ゲルマニア軍は迅速にビュザンティオンまで攻め寄せた。城門にも守備兵はおらず、虎口はあっという間に破壊された。


「ゲルマニア軍、城内に侵入!」

「今こそ仕掛ける時。全軍、突撃せよ!!」

「「「おう!!!」」」


 100万のゲルマニア軍に、僅かに2万の兵力で野戦を挑むスレイマン将軍。将軍自身も剣を取り、敵軍に向けて一心不乱に突撃した。


「先鋒は、機甲旅団か……!」


 ゲルマニアにとっても危険なビュザンティオンへの侵入。その先頭にあったのは機甲旅団であった。戦車達は榴弾や機関銃でたちまちガラティア兵の数を減らしていく。


「怯むなっ!! 敵は目の前ぞ!!」

「「おう!!」」


 その後も次々と押し寄せるゲルマニア軍は防御を整え、圧倒的な火力を魔導兵に投射する。だが、スレイマン将軍も一方的にやられてやるつもりはなかった。


「捉えたぞっ!!」


 スレイマン将軍は先頭の戦車に斬りかかり、真正面から貫く。そして戦車の陰に隠れながら背後に周り、その燃料タンクを突き刺して炎上させた。そして一息つくと、周囲を見回した。


「もう、生きている者は、おらんのか…………」


 いつの間にかスレイマン将軍の周囲に大勢いた筈の兵士達はいなくなっていた。そして、彼を殺そうと数十人のゲルマニア兵が現れ、突撃銃の斉射を浴びせた。


「多少の、時間稼ぎすら、出来なかった、か…………」


 スレイマン将軍は血溜まりの中に倒れた。


 ○


 同日。ゲルマニアの帝都ブルグンテンにて。


「我が総統、喜ばしいご報告です。我が西部方面軍はたった今、敵が首都ビュザンティオンを陥落させました」


 ザイス=インクヴァルト大将は高らかに報告した。ついにビュザンティオンは陥落し、皇帝は帝都を終われ東に逃げ延びたのである。


「うむ。素晴らしいな。で、それでガラティア帝国は崩壊するのか?」


 当初からゲルマニア軍の戦略はガラティア帝国を内部崩壊させることであった。そしてその最良の手段こそ、帝国の中枢であるビュザンティオンを征服することなのである。


「暫くすれば各地で反乱が起こりましょう。我らはそのような勢力を支援し、ガラティアを滅ぼせばよいだけです」


 ガラティア帝国は若い国だ。帝都を失えばその紐帯は完全に失われる。ザイス=インクヴァルト大将はそう確信していた。


「つきましては、全世界にビュザンティオンの陥落を喧伝致します。最も望ましい成果が得られるまで、今暫くお待ちください」

「分かった。では待とう」


 ヒンケル総統は暫く待つことにした。だが何日待てども、ガラティア帝国に崩壊の兆しなど見えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=959872833&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ