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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第六十三章 帝都ビュザンティオン攻略戦Ⅱ
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封鎖突破作戦Ⅲ

「これは……砲撃でもダメだったみたいだね」


 ベアトリクスが瞬時にそう思うくらいには、閉塞船はそのままの形を保っていた。確かに海面より上に出た部分は派手にえぐり取られているものの、少し水中に入ると損傷はほとんどなかった。


「水中では砲弾の威力がここまで下がるのか……それにしては下がり過ぎな気がする」


 ベアトリクスは違和感を持った。何か意図的な力によって閉塞船が守られていたと感じられる。そしてそんなことが出来る魔女は、レギオー級の魔女に違いない。特に水を操る黒の魔女クラウディアであれば、海水をどうにかして海中への被害を抑えることも出来るだろう。


 つまるところ、閉塞船に対するいかなる攻撃も無力化される可能性があるということだ。


「何て面倒な連中だ」


 ベアトリクスは水中に隠れながらシャルンホルストに帰還し、見分したものをネルソン提督に報告した。


「――なるほど。不自然なほどに沈んだ部分に損傷が見られなかったということか」

「ああ。そういうことだね。黒の魔女か、或いは魔女が何十人がかりとかで閉塞船を保護している可能性が高い」

「となると、いくら砲撃したところで無駄ということか。潜水艦からの攻撃も意味をなさないだろう」

「そう思う。で、どうする?」

「そこまですると、海峡両端を制圧して工作を行わせるしかなさそうだが、問題は多い……」


 残された作戦は、海峡一帯を制圧してゆっくり破壊工作をするくらいである。爆弾を大量に設置するか、戦艦で閉塞船を引っ張り出すか、いずれにせよ敵から妨害を全く受けない環境が必要である。しかし、ヴェステンラントの保有する魔導対艦砲はビュザンティオン市街地から海峡まで届き、安全などとても確保出来たものではない。


「いずれにせよ、海峡両岸の占領は不可欠だ。ヒンケル総統に確認を」


 遠くからちまちま攻撃するのは無意味。それだけは間違いない。海峡に攻め込むか、或いは海からの攻撃を諦めるか。枢軸国艦隊を預かるネルソン提督が一人で判断出来ることではない。


 ○


「なるほど……。マルマロス海峡の制圧か」


 ネルソン提督からの具申は総統官邸にすぐ届いた。


「確かにあの辺りはビュザンティオンの城壁の外だし、防備も薄いだろうが……ネルソン提督が懸念している通り、安全を確保出来るとは思えないな」


 ヒンケル総統はネルソン提督からの提案に一言一句同意である。


「つまりは、艦隊は最早役に立たないということでしょうか?」


 カルテンブルンナー全国指導者は問う。


「期待していた通りの成果は出せないだろうが、ビュザンティオンの目と鼻の先に橋頭堡を築けるのなら、全く無意味ということはないだろうな」

「なるほど。敵の戦力を分散させるだけでも、意味はそれなりにありますね」


 ビュザンティオンのすぐ南に上陸して大規模な部隊を配置しておけば、それだけで敵の戦力を引き寄せることが出来る。敵の正面戦力をある程度減らせるだけでも、効果は大きいだろう。


「いずれにせよ、やらない理由はないな。ザイス=インクヴァルト大将、問題はないか?」

「はい。艦隊を有効に使う方法はそれくらいしかありませんかと」

「分かった。では、ネルソン提督に作戦を承認すると伝えてくれ」


 かくしてネルソン提督はガラティア本土への強襲上陸を敢行する。


 ○


「陸上に多数の魔導反応を確認。待ち構えているようです」


 シャルンホルスト率いる枢軸国第二艦隊は更にマルマロス海峡に接近して、まずは敵情偵察に勤しんでいる。目視では確認出来ないが、マルマロス海峡両端には多くの魔導兵と魔女が待ち構えているようであった。


「敵の兵力はどれくらいだ?」

「おおよそ5千かと。但し、現段階では魔法を発動していない兵士も多いかと」

「最低限、そのくらいはいるということか。なかなか本気だな」


 特に戦艦にとって脅威となる魔導対艦砲や魔導弩砲などは、発射するまで魔導反応を検知出来ない。巧妙に隠された敵の戦力を事前に把握するのは不可能なのだ。


「敵がどこにいるのかは分からないが、可能な限り敵の戦力を逓減する必要がある。敵が潜んでいるとしたら、恐らく山腹だろう。主砲、あの山々を全て焼き払う勢いで撃ちまくれ」

「はっ!」


 敵に大型兵器がないのならそれでよし。しかし敵が魔導対艦砲を隠しているのならば、可能な限り事前に破壊しておきたい。ネルソン提督はそれらが隠されているであろう山々を片っ端から砲撃することを命令した。


「撃ち方、始め!」


 海峡の左右の山腹に榴弾を放つ。木々はへし折られ、地面は抉られる。爆発で酸素が消費され、火事などは起こらなかった。斉射の後はその少し下に狙いを定め、再び斉射。これを繰り返し、山のこちらを向いている側はすっかり禿山のようになった。


「提督、主砲弾の残りが3分の1を切ってしまいましたが……」

「主砲は使い切って構わん。徹底的に砲撃し、敵を撃滅せよ」

「はっ!」


 積載した主砲弾をほぼ使い切り、見渡す限りを焼け野原にしたところで、ネルソン提督はようやく砲撃を止めさせた。


「――魔導反応、まだ残っています。砲撃前と比べ、あまり変わっていないかと……」

「そうか……。だが、これ以上出来ることはない。上陸作戦を開始する!」


 満足な準備は出来ていないが、ネルソン提督は強襲上陸を決行した。


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