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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第六十三章 帝都ビュザンティオン攻略戦Ⅱ
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封鎖突破作戦Ⅱ

 ベアトリクスは潜水艦のハッチを開けた。たちまち水が流れ込もうとするが、魔法で堰き止め更には水を押しのけて、水中に泡のような空間を作り出した。潜水艦とは言え水深は20パッススほどであり、水圧はそう高くない。ベアトリクスは更に足元の水を固め、海中に立った。後ろではライラ所長が慌てて圧縮空気を開放している。


「あれがヴェステンラントの潜水船か。どうやって進んでいるんだか」


 木造の棺桶のような潜水船。大体の見た目は潜水艦に似通っているものの、推進器の類がまるで見当たらない。そのようなものが4隻で迫り来る。


「あの程度の質量であれば、押し上げることも容易な筈。氷だ」


 ベアトリクスは魔法の杖を水の向こうの潜水船に向けた。すると潜水船の直下に巨大な氷の塊が生成された。氷はすぐさま潜水船を巻き込みながら浮き上がる。船を制御することなど最早不可能だろう。


「ほーう、すごいね。潜水艦を無理やり浮かばせたのか」


 ライラ所長はベアトリクスの魔法に感心していた。


「一番手っ取り早いと思ったからね」

「確かにそうかもねえ。じゃあ、彼らが復活する前に行こうか」

「そうしよう」


 ベアトリクスは艦内に戻った。存在がバレた以上、敵はすぐに増援を送ってくるだろう。潜水艦隊は一直線に閉塞船の群れに向かい、外付けしてある爆弾を素早く取り付け、その場から離脱した。


「さて……じゃあ、爆破!」

「おお」


 ライラ所長は楽しそうに起爆装置を起動した。同時に潜水艦を地震のような衝撃が襲う。


「もうちょっと離れた方がよかったんじゃないかい?」

「まあ、潜水艦に傷はないし、問題ないよ」

「そうか」


 爆破した箇所は泥が舞い上がり瓦礫に溢れ、どうなったのかは分からない。


「うーん、ここからだと分からないな」

「私が見てこようか」

「行ってくれる? じゃあよろしくー」

「随分と気楽だね」


 緊張感のないライラ所長を置いて、ベアトリクスは再び潜水艦から出て、水を跳ね除けながら水上に出た。そして甲鉄戦艦の墓場に一直線に飛ぶ。


「…………とても船が通れるようには見えないね。やはり水中で爆弾を使うのは無理があったか」


 甲鉄戦艦はほぼ形を保っていた。爆弾を設置した場所も、多少装甲が剥がれているだけである。ベアトリクスは残念な結果を潜水艦に持ち帰った。


「――そう。失敗か。ガラティアへの輸出品は手抜きしておくべきだったなあ」

「同盟国とは言え他国に最新兵器を輸出するから悪いんだ」

「一理あるね」


 作戦は失敗した。潜水艦にはもう爆弾は残っていないし、敵は警戒を強めているだろう。ライラ所長とベアトリクスは特に何の成果も出せず、シャルンホルストに帰投したのであった。


「提督、すまない。作戦は失敗した。海峡の封鎖は想定していたより遥かに堅固だった」


 ベアトリクスはネルソン提督に事の顛末を報告した。


「――そうだったか。それも仕方ないだろう。潜水艦が失敗した以上は、次の作戦に移行するぞ」

「ああ、そうしよう」


 次の作戦――シャルンホルストの主砲を以て封鎖を破壊する作戦である。


「シャルンホルスト、マルマロス海峡に向けて進め!」


 海峡に向けて進むシャルンホルスト。すぐに海峡を射程に収めた。主砲の射程は長く、水平線の辺りにギリギリ陸地が見えると言った感じであった。


「目標は動かない障害物だ。照準に時間はかけるなよ」

「はっ!」

「よし。シャルンホルスト、全主砲、撃ち方始め!」


 シャルンホルストの15センチパッスス主砲9門が一斉に火を噴いた。初弾は外すが、海峡を挟叉すること(前後に砲弾を叩き込むこと)に成功し、照準を再調整して3度目の斉射で全弾を目標に命中させることに成功した。


 しかし、砲撃の度に巨大な水飛沫が上がり、水中にある甲鉄戦艦の様子はすぐには確認出来ない。


「どうだ? 見えたか?」

「はい。海上に出た部分はかなり破壊出来ています。しかし、海中がどうなっているのかは分かりません」


 当然のことながら、海面より下の部分がどこまで破壊出来たのかは、こんな遠くからでは観測出来なかった。水中では砲弾の威力が急速に下がる以上、海上に出た部分が容易に破壊出来たからと言って油断は出来ない。


「そう簡単に破壊は出来ていないだろう。砲弾のありったけで撃ちまくれ!」


 斉射を続ける。狙いを完全に定めた主砲は完璧に封鎖船に命中し、次々炸裂する。炸裂弾と徹甲弾を交互に撃ちまくり、1時間ほどが経った。


「こんなに撃ったんだから、流石に破壊されてるんじゃないかな」

「普通に考えたらそうだが、ヴェステンラントに普通は通用しない。ベアトリクス、今一度海峡を偵察しに行ってくれるか?」

「偵察だけならお易い御用だよ」


 ベアトリクスはシャルンホルストを飛び立ち、空を飛んで単身マルマロス海峡に飛んだ。そして海峡の少し前で、海の中に飛び込む。魔法で水を押し退けて、海面のすぐ下に水がない空間を作り出すのだ。人間潜水艦のようなことをしながら、ベアトリクスは目標に到達した。

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