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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第六十三章 帝都ビュザンティオン攻略戦Ⅱ
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マルマロス海

 ACU2315 6/8 帝都ビュザンティオン


 地上においてはワラキア公国が降伏し、ゲルマニア軍の補給線は大いに安定した。海上においては地中海の制海権がゲルマニア軍の手に落ち、ビュザンティオンに直接攻撃する道が開けている。


「陛下、よくぞご無事で。このような無茶はあまりしないで頂きたいですが」


 赤公オーギュスタンはアリスカンダルを出迎える為、港にいた。


「こんなことはしなくてもよい。貴殿は防衛線の指揮をしていてくれたまえ」

「そうは言われましても」

「まあよい。こちらの様子はどうだ?」

「相変わらず膠着状態です。また、ワラキアが堰き止めていた方面から敵が来ても、防衛線が揺らぐことはありますまい」

「それはよいな。まあとにかく、離宮に戻ろう」


 一行は司令部に戻った。


「さて、当面は地上はさして警戒する必要はないだろう。問題は海だ。随分と力を残しているゲルマニア海軍が、ここに攻め寄せてくるぞ」


 集まった諸将に向け、アリスカンダルは言う。


「何か食い止める手段はあるのですか?」


 オーギュスタンは問う。


「それを今から考えようとしているんじゃないか」

「これは失礼。しかし、先の艦隊決戦では、敵艦隊に一隻の損害を与えることも出来なかったそうではありませんか」

「……別に、こちらも一隻の損害も出していない」


 クラウディアは不服そうに言った。確かに損害は出ていない。だがシャルンホルストに手も足も出なかったことに変わりはない。


「そうだったな。ともかく、再び艦隊決戦を挑んだとて、勝てる公算は非常に小さい。異論はあるまいな?」

「……まあ」

「という訳で、誠に遺憾ながら、普通に戦って勝てるとは考えられません。海の上での戦いは、友軍の陣地が近かろうと遠かろうと関係ありませんからな」

「ふむ。海の上での戦いは、思いの外選択肢が少ないな」


 陸上での戦いならば味方陣地の奥まで引き込んで撃退するのは立派な戦術だが、海上での戦いはゲルマニアの沿岸だろうとガラティアの沿岸だろうとあまり変わりはない。陸上から攻撃が届くほど近いならば別だが。


「では、陸上から砲撃するというのはどうだ? それなりに火力を増強出来ると思うが」


 アリスカンダルは特に捻りのない提案をした。確かに陸上の砲台は、耐久性においても火力においても艦船のそれを上回っている。


「それはあまり効果があるとは思えない。シャルンホルストの装甲を貫ける兵器は我々の手には存在しない」


 クラウディアはすぐさま否定した。


「ゲルマニアの兵器を利用してもか?」

「彼らの列車砲くらいの大砲ならば通用するだろうけど、持ってないでしょ?」

「最新兵器は輸出してくれなかったからな。では、この提案は却下だな」

「うん」

「クラウディア、君には何かないのか? 海の専門家だろうに」

「海というより水なんだけど。攻撃がダメなら防御を固めるしかない。マルマロス海への入口を物理的に塞ぐのはどう?」


 帝都ビュザンティオンは確かに海に面しているが、正確にはその手前にそこそこの大きさの内海――マルマロス海が存在し、マルマロス海への入口は小さな海峡のみである。


「塞ぐとは、どうするつもりなのだ?」

「ガラティアには甲鉄船が何隻かあるでしょう? それを沈めれば海峡を封鎖出来る」 「なるほど。まあ確かに、甲鉄戦艦など今やほぼ無力だ。有効に使えるのならその方がよいかもな」


 甲鉄戦艦とは木造船の表面に鉄の装甲を貼り付けた船のことである。


 ゲルマニア製の甲鉄戦艦を海峡に沈め、その質量で物理的に封鎖する。甲鉄戦艦など戦艦の前では時代遅れも甚だしいし、クラウディアの作戦はかなり現実的なものであった。


「では、それで行こう。マルマロス海峡を封鎖せよ」

「しかし陛下、海峡を封鎖してどうなさるおつもりですか? いずれは封鎖も突破されるでしょうが」


 オーギュスタンは問う。海峡の封鎖など所詮は道に障害物を置いているに過ぎず、時間稼ぎ以上の意味はない。


「時間稼ぎで十分だ。時間は我々の味方であると言ったのは貴殿ではないか」

「確かにそうは申しました。とは言え、こんなことでゲルマニア軍が疲弊しきるほどの時間を稼げるとは思えません」

「ゲルマニア軍の工作を妨害すれば、時間はそれなり稼げるだろう?」

「……まあ、よいでしょう。どの道我々に出来ることは非常に限られています」


 結局、海峡の封鎖くらいしかガラティア軍にやれることはなかったのであった。


 ○


 数日後。ゲルマニア海軍はマルマロス海に艦隊を進めるべく、まずは潜水艦U-3を偵察に出していた。潜水艦を指揮するのはライラ所長である。相変わらず潜水艦の信頼性は十分とは言えず、魔法による保険がないととても安心して乗ることは出来ない。


「うわ、何か凄いことになってるね」

「あれは……甲鉄戦艦ですか」

「うん。私が昔設計した奴だよ。丈夫さは折り紙付き」

「そ、そうですか」


 ライラ所長の前に現れたのは、海に沈んだ30隻ほどの甲鉄戦艦であった。マルマロス海峡が完全に封鎖されていることを、ゲルマニア軍は知ったのである。


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