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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第六十三章 帝都ビュザンティオン攻略戦Ⅱ
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親衛隊の出陣

「…………分かった。親衛隊が出撃するのはよかろう。だが、手段を問わないとは、何をする気だ?」

「我が軍が保有する全ての兵器を利用するのみです。何も心配は要りません」

「まあいい。ならば、親衛隊機甲師団はワラキア公国を討伐しに向かえ」

「はっ。必ずや、任務を達成して参ります」

「ああ。しかし、親衛隊だけでは些か不安があるな。ザイス=インクヴァルト大将、西部方面軍から援軍を出してやってくれ」

「援軍ですか。最善は尽くしますが、あまりご期待なさらない方がよろしいかと」

「それでいい」


 かくしてヒンケル総統はザイス=インクヴァルト大将の提案を承認。帝国最大の機械化部隊である親衛隊機甲師団は、援軍を軍から迎え、ワラキア公国を討伐しに向かった。


 ○


 さて、援軍と言うのは便利遣いの第88機甲旅団であった。


「ハーケンブルク中将閣下が駆けつけて下さるとは、光栄の極みです」


 親衛隊の小綺麗な指揮装甲車に、シグルズは招かれていた。親衛隊機甲師団と第88機甲旅団の合同作戦ということになる訳だが、あくまで親衛隊が中心ということで、司令部は親衛隊側に置かれている。


「こちらこそ、親衛隊の実力を見られること、楽しみにしています」

「ならば、ご安心を。所詮は蛮族。我々の手で殲滅しましょう」

「期待しています」


 軍部と親衛隊の仲は悪く、現場でもあまり馴染めない。一先ずは親衛隊機甲師団が戦闘を行い、危機的状況になれば第88機甲旅団が参戦するという形を取る。機甲師団の後ろに機甲旅団がついていく訳だ。


 総勢2万を超える完全装甲化部隊は、先にヒルデグント大佐が率いた部隊を優に超えるものだ。とは言え、ヴラド公には戦車を足止めする魔法もある。巨大な軍隊も無力化される可能性は大いにある。


 ――今日ばかりはヴラド公を応援したい気分だな。


 軍部は親衛隊が負けることを望んでいる。ここで親衛隊に勝たれてしまうと、軍はワラキア程度も下せなかったと謗られても言い返せなくなるからである。シグルズも協力する為ではなく、親衛隊の動向を監視、報告する為に同道している。


 ともかく、機甲師団はワラキア領内に入り、首都ブクルスクに向けて進軍を始めた。


 ○


「殿下、申し上げます! ゲルマニア軍およそ2万、首都に向けて進軍を開始しました! ことごとく機械化された部隊です!」

「先日に攻めて来た連中が再び来た、ということか。ゲルマニアにもまだまだ余力はあるようだな」


 ヴラド公は不敵に笑う。が、重臣達はそれどころではない。


「殿下、先の戦いで我が軍は兵力の半分を失ったのですぞ! そんな時に、前回よりも多い軍勢が押し寄せて来れば、敗北は避けられません!」

「だからどうしたと言うのだ。敵が幾百万の軍勢であろうと、味方か百人だけだろうと、降伏はあり得ぬ。我らは我らの国を守り抜くのみである」

「な、何を……」

「陣触れをせよ! 全ての敵は滅ぼされなければならぬ!」


 ヴラド公は家臣達の言葉には耳も傾けず、半壊した軍隊で出陣した。既に重臣達は敗北を悟り、脱出か亡命の準備を始めている。


 ○


「敵勢、事前の報告通り、2万の戦車部隊のようです。その戦車は2千両を数えるものかと……」

「で、あるか。ならば、1人が1両の戦車を破壊すればよいだけの話だ」

「はっ……」

「さあ、行くぞ。ゲルマニアの不埒者を討ち滅ぼせ!」


 ワラキア軍のいつもの戦術。巨大な盾を持った騎兵による一斉突撃である。


「敵軍、発砲!!」

「盾を構えよ!」


 突撃を始めたワラキア軍に、ゲルマニアの戦車は一斉に発砲。ヴラド公は兵士達に防御させる。が、盾にぶち当たった砲弾は盾を貫きも爆発もしなかった。


「これは、何だ」

「殿下、馬が暴れております!!」

「何?」


 突然、馬が言うことを聞かなくなった。兵士達は次々落馬し、突撃などとてもしていられなくなってしまう。


「クッ……。盾を地面に突き立てよ!!」


 馬が使い物にならないことを悟り、ヴラド公は兵らに馬を降りさせると、その盾を地面に突き立てさせてゲルマニア軍の砲撃を防がせる。しかし、戦車から放たれる砲弾は何故か全く威力がなかった。


「奴らは一体何が――グッ……」


 その時、ヴラド公は突然激しい悪寒を感じ、血を吐いた。周囲の兵士達も、いや、ワラキア軍の兵士は皆、大いに苦しんでいた。


「へ、陛下……」

「なるほど……化学兵器という奴か。道理で馬が暴れる訳だ」


 悪名高い非人道的な兵器、化学兵器或いは毒ガス。説明するまでもない、不可視にして鎧が全く意味をなさない兵器である。ライラ所長が発明したものだが、好んで使用しているのは親衛隊だ。


「ど、どう、すれば……」


 時間が経つにつれ身体が毒に侵される。ヴラド公に時間は残されていない。


「まだだ……まだ、負けてはおらぬ!」


 ヴラド公は右手の魔法の籠手を振るう。途端に彼を中心として竜巻のような突風が吹き渡った。


「ま、魔法ですか……!」

「毒ガスなど恐るるに足らず! 進め!」

「し、しかし、馬がありません……!」

「馬など我らには要らぬ。その足で走れ! ゲルマニア人を殺せ!!」

「「「おう!!!」」」


 ワラキア軍――ヴラド公は大盾を捨て、ゲルマニア軍の戦車隊に向かって我武者羅に突撃を始めた。

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