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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第六十三章 帝都ビュザンティオン攻略戦Ⅱ
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ワラキア公国再攻略Ⅱ

「敵軍を包囲します! 戦車隊、進め!」


 ワラキア軍は横に広がった機甲師団のど真ん中に突撃を仕掛けている。ヒルデグント大佐は直ちに両翼の部隊をワラキア軍を包み込むように動かした。兵法の常道とも言える半包囲作戦である。


「しかし、こんな素人でも分かるような罠に、あのヴラド公が引っかかるとは思えませんが」

「自暴自棄になって死に場所を求めているのでは?」

「そうだったらいいですが、そういう感じはしませんね。敵兵は極めて冷静に戦っているように見えます」

「た、確かに……」


 死に物狂いの突撃ならば、わざわざ盾で陣地を作って装甲車と銃撃戦を演じたりはしないだろう。ヴラド公は決して最期に華を咲かせに来たのではない。


「両翼の部隊、これより包囲に入ります!」

「はい。側面から攻撃されれば、彼らとて総崩れになる筈です」


 三方面から戦車による総攻撃。いくらヴラド公でも耐えられまい。が、彼がそう易々と包囲されることを許す訳がなかったのである。


「左翼戦車隊、足止めを食らっているとのこと! 包囲出来ません!」

「足止め? 敵が先に仕掛けてきたのですか?」

「そ、それはそうなのですが、串刺しの魔法に阻まれ、車両が動かせないとのことです!」

「串刺しの魔法? まさか、本当は装甲を貫く威力があったのですか?」

「い、いえ。車輪に槍が突き刺さり、全く動かなくなってしまったとのことです!」

「なるほど……」


 串刺しの魔法で戦車の中にいる人間に手を出すことは出来ない。しかしその足回り、車輪は別だ。複雑な機構を持つムカデのような車輪に槍が何本も突き刺さり、それが駆動するのを完全に阻害してしまったのである。


「ヴラド公は、我が軍の兵器の弱点をよく知っているようですね。あの猛将が研究熱心とは……」


 彼にとってはほとんど初めて見る装甲車両の筈だ。その弱点を熟知しているというのは、普通ではない。いくらヴェステンラントから話を聞かされていたとしても、そうそう実行に移せることでもないだろう。先の戦いで破壊した戦車や装甲車を余程丁寧に検分したらしい。


「しかし、最も脆弱な車輪が破壊されただけでは……?」

「動けないのなら無力化されたも同じです。撃破されたのと状況は変わりません」


 戦車の動きは封じられた。中央に来援出来ないのであれば、それは破壊されたのと何ら変わりない。


「右翼戦車隊も攻撃を受けました! 動けません!」

「これで、戦力は互角になりましたね。……互角なのですから、普通に勝てばいいだけです」


 今、両軍の兵力はほぼ互角となった。車両は動きが封じられたものの兵士達は合流し、装甲車からワラキア軍に激しい銃撃を加える。


「しかし、このままでは決め手がありません。負けはしませんが、勝てもしないかと」

「確かにそうですね。やはり勝利するにはこちらから攻勢に出るしかありませんが、そうすれば串刺しの魔法にやられてしまいます」

「ど、どうすれば……」


 膠着状態に陥った両軍。ゲルマニア軍はヴラド公の魔法を恐れて攻め込めず、ワラキア軍も盾や戦車の残骸から身を出せば蜂の巣にされる為に、動き出せなかった。この状況を打開する策は一つのみ。


「――ヴラド公の魔法の源は、あの輝く剣です。あれさえ破壊してしまえば、敵は少々頭がおかしいだけの普通の魔導兵になります」

「そ、それはそうですが、剣を破壊するとは、いかにすれば……」

「私達が攻勢に出れば、ヴラド公は必ず剣を抜きます。それを破壊すればいいだけです」

「け、剣ですよ? あんな小さなものを狙い撃つのですか?」

「ええ、私がやります。必ずや一撃で砕きましょう」


 ヒルデグント大佐は本気である。ヴラド公の剣を撃ち抜き、その魔法を封じることこそ、唯一の勝機である。


「そうと決まれば、躊躇うことはありません。皆で突撃しましょう」

「……はっ!」

「装甲車、前進! 奴らに体当たりする勢いで進みなさい!」


 突撃は開始される。装甲車は破壊された戦車の群れに向かって機関銃や機関砲を放ちながら突撃。ワラキア兵の弓矢でいくらかが破壊されながらも、彼らの盾や戦車に体当たりして停止した。


 ワラキア兵が殺到するところ、兵士達は装甲車の後方から出て、ワラキア軍に向かって銃を乱射しながら突撃する。ワラキア兵の弓によって次々と倒されるも、気にせず白兵戦を仕掛ける。


「大佐殿! あそこです! ヴラド公が!」

「あんな目立つ場所にいるとは」


 ヴラド公は相変わらず兜も着けず、破壊した戦車の天辺に立って戦場を見渡していた。まだ剣は抜いていない。


「撃てっ!」


 少しでも余裕のある兵士らはヴラド公を撃つ。しかし、彼の魔導装甲は全く銃撃を受け付けず、丸出しの頭を銃弾が貫こうと全く動じない。彼もまた、半分不死身の人間なのである。


「何て奴……」

「あ、あれは、剣です!」


 ヴラド公はゆっくりと剣を抜き、眼下の兵士達に向けた。乱戦の中で魔法の狙いを定めているのだろう。


「ええ、これで終わりです」


 ヒルデグント大佐は兵士達に紛れ、お気に入りのリボルバーをヴラド公の輝く剣に向けた。狙いを定め、そして引き金を引く。

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