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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第六十二章 帝都ビュザンティオン攻略戦
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停戦交渉

「陛下、これ以上の戦闘は無意味。交渉の席に着くべきです」


 クラウディアはアリスカンダルに言った。


「交渉かね? まだお互い、有り余る戦力を残しているではないか」

「しかし、両軍とも手詰まりに陥っている。無駄な犠牲を出すべきではない」

「……まあ、よかろう。君の好きにしたまえ」


 アリスカンダルは不服そうだったが、この舟の上においてはクラウディアの方が強い権限を持つ。黙って従うことにした。


「シグルズ、いい?」

「ああ、いいだろう」

「分かった。では、まずは戦闘を停止させよう」

「心得た」


 シグルズとクラウディアは戦場の上空に並んで飛び立つ。そしてシグルズは無数の機関砲を召喚し、クラウディアは無数の人間大のツララを召喚し、船上の兵士達に向けた。


「両軍、停戦せよ! さもなくばこの機関砲が、お前たちの体を粉砕するだろう!」

「私からも、停戦を命令する。従わない者はこの氷が体を貫く」


 両軍の総大将が並び立って宣言し、たちまち銃声の一つも怒号の一つも聞こえなくなった。レギオー級の魔女が二人手を取れば、歯向かう兵士はいない。


 かくして戦闘を凍結させると、シグルズとクラウディアは早速、アリスカンダルを入れ、ソレイユ・ロワイヤル艦上で交渉に入った。


「さて……クラウディア、この状況で話し合いが出来ると、どうして思ったんだ?」


 シグルズはクラウディアに問う。停戦交渉とは双方が完全に手詰まりになった辺りで行われるものであり、ゲルマニアが攻め手である今、停戦交渉が始まったこと事態が奇跡だ。


「確かに、ソレイユ・ロワイヤルは君達に攻め込まれており、本来なら停戦を求められる立場ではない。しかし、私はシャルンホルストとソレイユ・ロワイヤルをぶつけたように、引き離すことも出来る。そうしたら、どうなると思う?」

「僕達は、ソレイユ・ロワイヤルに取り残されるな」

「そう。それでもいいのならば、戦いを継続するといい」


 つまるところ、戦況はゲルマニア優勢であるが、ソレイユ・ロワイヤルに攻め込んでしまったばかりに、大量の兵士が事実上人質にされたのである。


「さあ、どうする? ここにいる何千人かの兵士を見殺しにするか、戦いを続けるか」

「ゲルマニア軍全体からすれば、この程度の損害など微々たるものだ。ここの兵士達を見捨ててでも、この面倒な船を沈める方が合理的だ。そうしないとは思わなかったのか?」

「君は、いや君達は、そこまで薄情じゃない。助けられる命を千人単位で見殺しに出来るとは思えない」

「……分かってるじゃないか。確かに、僕にはそんなことは出来ない。ネルソン提督も多分そうだろう。ベアトリクス、確認しておいてくれ」

「分かった」


 ベアトリクスが尋ねると、ネルソン提督はすぐに停戦を認めた。


「では、停戦は成立。私達は地中海から無事に撤退する、ということでいいかな?」

「おい、待て、クラウディア」


 勝手に交渉を終わらせようとしているクラウディアに、アリスカンダルが口を挟む。ガラティア帝国の命運を勝手に決められてはたまらない。


「……すみません。勝手に決めるのは流石にダメだね」

「我々の目的はゲルマニア軍が地中海に侵入するのを阻むことだ。ここで退くのは、敗北も同じ。君は分かっているのか?」

「ええ、分かっている。そして私は、可能な限り損害を少なくして敗北しようとしている」

「何だと? ならば、私はこのような決定は受け入れない。シャルンホルストを沈めるまで戦うぞ」

「お言葉ですが、シャルンホルストを沈めるのも制圧するのも不可能。このまま戦いを続ければ、私達は艦隊を失うだけ」

「彼女の言う通りですよ、陛下。シャルンホルストの主砲は健在。陛下の艦隊を寄せ付けず、友軍艦隊から増援を呼ぶことも出来ます」


 このまま戦いを続ければ、シャルンホルストはいくらでも援軍を合流させることが出来、逆にヴェステンラント軍の救援はシャルンホルストの主砲に沈められるだろう。ソレイユ・ロワイヤルの敗北は決定的であり、ならば敗走した方がよいとクラウディアは判断した。


「…………私に、こんな中途半端なところで引き下がれと言うのか」

「ええ。敗北の見え切っている戦いを続けるのは無意味。捲土重来を図る為、今は撤退するべき」

「……ならば、ビタリ半島はどうする気だ。何万もの兵士を見捨てる気か?」

「ビタリ半島からの撤退くらいは、許してくれるよね、シグルズ?」

「くらい、なんて話じゃないんだが、無血でビタリ半島が手に入るのなら悪い話じゃない。総統官邸に問い質す時間をくれるか?」


 クラウディアは講和の条件として、ビタリ半島からの安全な撤退も要求した。ゲルマニアにとっても悪い話ではない筈である。シグルズはザイス=インクヴァルト大将やヒンケル総統に可及的速やかな返答を求めた。


 その返事は10分ほどで届いた。驚くほど早い。


「クラウディア、朗報だ。我が総統は君の講話条件を認めてくださるらしい」

「それはよかった。では、交渉成立」


 ソレイユ・ロワイヤルに乗り込んだゲルマニア兵はシャルンホルストに帰投した。そして地中海は一時的な停戦状態となり、これはビタリ半島からの撤退が完了するまで続いた。


 かくしてガラティア帝国近海を除き、地中海の制海権は枢軸国の手に落ちた。

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