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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第六十二章 帝都ビュザンティオン攻略戦
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新戦艦

「魔導対艦砲が効かないのか。では、我々に勝ち目はないのか?」

「……そんなことはない。もっと距離を詰めれば通じる筈」


 クラウディアはソレイユ・ロワイヤルを再び90度回頭させて、ゲルマニアの戦艦に真っ直ぐに近づく。


 と、その時、船を足元も覚束なくなるほど大きな衝撃が襲った。


「おや、撃たれたのか?」

「……そのようです。様子を見てくる」


 ついに戦艦の主砲がソレイユ・ロワイヤルに命中した。命中したのは船の後部であり、榴弾の爆発によって中甲板まで一気に抉れ、大穴が開いて木片が散乱していた。クラウディアはその様相を低空から見ていた。


「威力はアトミラール・ヒッパーと大して変わらない、か」


 どうやら砲弾の破壊力はアトミラール・ヒッパーのそれと大差ないようであった。魔女達に直ちに損傷箇所を修復するように命じ、クラウディアはアリスカンダルの許に戻る。


「どうだったかね?」

「砲弾は恐らく、アトミラール・ヒッパーと同じものを使っている。射程の延長は、長砲身化の影響と思われる」

「なるほど。主砲は致命的ではない訳か」

「主砲の数が増えている。全力で砲戦を行えば、火力が上がっていることに違いはないけど」


 新型戦艦とソレイユ・ロワイヤルはお互いに正面を向けている。新型戦艦は艦橋より手前にある2基6門の主砲しか使えない訳だが、全てを使える同航戦になれば、単純にアトミラール・ヒッパーの1.5倍の火力が飛んで来る。


 兎にも角にもクラウディアは、ソレイユ・ロワイヤルを全速で前進させ、戦艦との距離を更に縮めていく。


「おや、敵が動いたぞ」


 戦艦が曲がり始める。


「あれは……少し横に膨らんで……同航戦に持ち込む構え。こちらも応じる。全艦、回頭!」


 ソレイユ・ロワイヤルは魔法の力でその場で回転することが出来るが、普通の船は進みながらでないと進路を曲げることも出来ない。戦艦は円を描くようにして、その進路を直角に曲げた。クラウディアもそれに応じてソレイユ・ロワイヤルを90度回転させた。


 かくして両艦は、その側面をお互いに向けあった。お互いに火力を最大限に発揮出来る姿勢である。戦艦の舷側に装備された数十の大小副砲が、ソレイユ・ロワイヤルを睨みつける。


「これで決めるしかない。全力であれを撃て!」


 クラウディアが全ての魔導対艦砲に砲撃の開始を命令する。それとほぼ同時に、戦艦の副砲達も砲撃を開始した。


「陛下、危ないのでちょっと下がって」

「うむ」


 アリスカンダルを一歩下がらせ、魔法の杖を手に持つと、クラウディアは透明な氷で前後上下左右を囲んだ。万が一にもアリスアリスカンダルが死ぬようなことがあれば一大事である。


「こんな魔法が使えるのか」

「私もレギオー級の魔女ということを忘れないで欲しい」


 さて、主砲と比べれば一撃当たりの威力は低いが、それとは比べ物にならない数の副砲に撃たれ、ソレイユ・ロワイヤルの舷側はたちまち蜂の巣にされてしまう。


「こんなに撃たれて大丈夫なのかね?」

「一撃の損傷は少ない。この程度ならすぐに修復出来る」


 クラウディアの言葉通り、精々舷側装甲が破られた程度の損傷は、すぐに修復された。


「しかし、こちらの攻撃が効いているようには見えないが」

「…………」


 距離を詰めても魔導対艦砲は戦艦の装甲を貫けなかった。それどころか、10門の主砲の砲弾が精度を増して放たれる。絶え間なく破壊され続けるソレイユ・ロワイヤルは、何とか修復を間に合わせていたが、こんな体たらくでは勝利など程遠い。


「クッ……何とか、作戦を……ん?」

「我々の砲弾が効いたようだな」

「そう、だね」


 魔導対艦砲が装甲を貫き、そこから黒煙が上がっている。それは決して偶然という訳ではない。


「そうか。副砲を直接狙えば、何とかなる」

「そのようだな」


 副砲を増やせば火力は上がるが、その分防御が脆弱になる。特に装甲に穴を開けて大砲を設置しただけの小型副砲は、明らかに弱点であった。そして放物線を描いて飛来するゲルマニアの砲弾と違い、魔導対艦砲はほぼ直線的に敵を狙う。狙撃のし易さは段違いだ。


「全砲門、敵の副砲を集中的に狙え!」


 脆弱な副砲に狙いを定め、砲撃を行う。装甲と一体化している中型の副砲であっても、砲を旋回させる機構のお陰で防御は弱くならざるを得ず、直撃すれば射撃不能になるほど損傷させることが出来た。


「順調ではないか。このまま向こうの副砲を破壊し尽くせば勝てるのではないか?」

「どうかな。こちらのエスペラニウムが先に尽きるかもしれない」

「ならば、主砲の射程の内側まで入ればよかろう。ゲルマニアの大砲は、距離でさして威力が変わらんだろうからな」

「……確かに。流石は陛下」


 ゲルマニアの砲弾は榴弾である。着弾時の爆発が威力の主であり、至近距離で撃とうが射程ギリギリで撃とうが威力は大して変わらない。ならば、主砲が狙えない至近距離にまで近付いた方がよい。


「全艦、敵艦に近付け! 限界まで接近する!」


 両艦が並進するところ、ソレイユ・ロワイヤルは進路を戦艦の方に傾け、無理やり距離を詰める。


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