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市街戦再びⅡ

 ヴェロニカとシグルズは戦場の上空に飛んだ。ゲルマニア兵が見えない敵に向かって突撃銃を乱射しているが、案の定意味はなく、一方的に弩に殺されていた。戦車も適当な辺りを榴弾で砲撃しているが、例え直撃しても特火点を破壊するのは困難だろう。


「まったく、どうなってるんだこのイカれた都市は」

「完全に私達を引き込む罠でしたね……」

「首都をそんなことを使うなんて、いずれにせよイカれてるね。と、ヴェロニカ、魔導反応は探知出来たかな?」

「はい。ちょうど数人程度の纏まった魔導反応が点々と確認出来ます」

「まさにそれだな。位置を教えてくれ」

「はい!」


 ヴェロニカの高精度な魔導探知を使えば、敵の所在を確かめるなど簡単なことであった。シグルズはヴェステンラント軍の特火点の位置を確かめると、そこに向かって魔法で生成した長槍を投げつけた。


 クロエのように特火点を貫くことは不可能だが、これはあくまで目印である。特火点の天井に次々と槍が突き刺さり、彼らの位置は誰にとっても筒抜けとなった。


「全軍、敵の拠点は槍が突き刺さっているところだ。制圧せよ!!」


 広域の魔導通信で兵士に命じる。位置さえ分かればこっちのもの。後は特火点の中に手榴弾を投げ込んで弾丸をぶち込めば全て終わりだ――と、これまではそうだったが、今回の敵はなかなか気骨のある連中であった。


「――多くの犠牲が出てしまっています……私達は出なくていいんでしょうか?」


 位置が分かったとしても特火点は強力な拠点だ。落とすには人的損害をほぼ必ず必要とする。肉弾攻撃が唯一の攻略方法なのだ。


「想定内だ。問題ない」

「そ、そうでしょうか……」


 敵が機関銃でも持っていたら、恐らく第88機甲旅団は特火点に近付くことも出来なかっただろう。だが魔導弩は、貫徹力こそ圧倒的だが、連射力については下の下だ。近寄る兵士を片っ端から打ち払うような力はない。


 多少の犠牲が出たものの、ゲルマニア軍は特火点まで辿り着き、肉薄攻撃を仕掛けてこれを殲滅したのであった。


「周辺の魔導反応、消失しました!」

「よし。だが……どうも手遅れになった気がするね」

「あ……」


 既に敵軍はゲルマニア軍の防衛線と接触し、白兵戦に突入していた。第88機甲旅団を足止めして防衛線を食い破るというヴェステンラント軍の作戦は成功したと言えるだろう。


「ど、どうしましょうか……」

「取り敢えず、指揮装甲車に戻ろうか。話はそれからだ」

「あ、はい!」


 ヴェロニカとシグルズは速やかに指揮装甲車に帰還した。


「オーレンドルフ幕僚長、状況は把握しているな?」

「ああ、もちろんだ」

「混戦に突入した以上、もう機甲旅団を機甲旅団らしく活かすことは出来ない。歩兵隊を送り出すしかないな。どう思う?」


 シグルズの中で結論はほぼ決まっていた。歩兵部隊を援軍に出して友軍の救援に当たることである。戦車や装甲車が無用の長物になったとしても、第88機甲旅団に支給されている最新の装備を活かす手段は残されている。


「私も賛成だ。車両を送り込むのは危険が大きいからな」


 隠れ場所のないこの都市で下手に戦車や装甲車を動かすと、移動中で戦闘能力の低下しているところを一気に叩かれる危険性がある。故に歩兵しか援軍に出せないのである。


「よし。作戦は決まりだ。部隊を2つに分け、北側を僕が指揮し、南側はオーレンドルフ幕僚長に任せる」

「構わないが、持ち場を離れるというのに、オステルマン中将に何も言わなくていいのか?」

「それは、ヴェロニカ、適当に何か言っておいてくれ」

「え? は、はあ……」

「司令部はここで情報収集に務めてくれ。では行くぞ!」


 シグルズとオーレンドルフ幕僚長、第88機甲旅団の頭脳が揃いも揃って陣頭指揮を取り、敵軍の撃滅に、或いは友軍の援護に飛び出して行った。


 ○


「突撃!! 奴らを蹴散らせ! 友軍を救え!」

「「「おう!!!」」」


 シグルズ率いる二千と少しの歩兵は、既に防衛線を突破し白兵戦に持ち込んでいる重騎兵に、横っ腹から突撃を仕掛ける。もちろん中世のように敵のところまで突撃するのではなく、遺棄された装甲車や瓦礫などの遮蔽物の陰に素早く隠れ、射撃を行う。


 突然側面から現れたゲルマニア兵に魔導兵は動揺し、対人徹甲弾の竜巻に、反撃する前に次々と撃ち殺された。


「このまま敵を一人残らず殺せ!」

「「おう!!」」


 数十の重騎兵は物陰に隠れた兵士相手に弩では埒が明かないと判断し、一直線に突撃してきた。しかし、激戦を何度も潜り抜けた第88機甲旅団の兵士達はその程度では動じず、冷静な十字砲火によって近付いた者から順次射殺された。


「周辺の敵は粗方殲滅しました!」

「よし。このまま進むぞ! 奴らに目に物見せてやれ!!」

「「おう!!」」


 シグルズはその後も友軍の間を駆け抜け、魔導兵を次々と殲滅していった。


「しかし、我々が来なかったらどうなっていたことか……」

「この数の重騎兵の相手は誰だって無理だろう。僕達だって敵の意表を突いているから何とかなっているだけだ」


 全体的な戦況は劣勢。シグルズが何とか互角に持っていけるから否かと言ったところだ。

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