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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第七章 ブルークゼーレの戦い

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休戦条約

 ACU2309 9/6 アルル王国 ブルークゼーレ基地


「――なるほど。向こうは大公殿下が直々に来られるという訳か」

「はい。そのように通達を受けました」


 ヒンケル総統は適当に説得して休戦に同意させ、ザイス=インクヴァルト司令官は前線でその準備に取り掛かっていた。


 そこで誰が交渉の席に着くかという話になったのだが、こちら側が決める前に向こうから連絡が来てしまった。先手を取れなかったという意味で、ザイス=インクヴァルト司令官、久しぶりの完全敗北である。


「こちらは誰を出すのですか?」

「そうだな――合州国における政治的な序列でいうのなら相応しいのはアルル国王辺りだが、彼が適材でないのは明白だ」

「はい」


 決して彼が無能だと言いたい訳ではない。単に作戦に全く関わっていない人間を軍使とするのは論外だからだ。


「では合州国の制度を我が軍の秩序と比べてみよう。そうすると、出るべきは誰か?」

「閣下、でしょうね」

「その通り」


 ザイス=インクヴァルト司令官は上機嫌そうに。


 そもそも、このような問題が発生しているのは、ヴェステンラントにおいて軍事と政治が全くもって未分化だからである。政治家が将軍をかねるのはこういう面倒な問題を生むから止めて欲しいと司令官は思う訳だが。


「まあ、どちらが席に着くべきかと問われれば、私は間違いなく自分を推薦するだろう。第一、敵国に外交儀礼を貫く必要もあるまい」

「それは微妙ですが……」


 外交儀礼というのは相手が戦争中だろうと何だろうと貫くべき規則である。まあ、実際のところそんなものは建前に過ぎないが。


「とにかく、私が向かおう。この戦場における最高指導者同士の会談だ。楽しそうではないか」

「楽しそう……」


 万が一にもこれがヴェステンラントの陰謀だった場合、白の魔女にザイス=インクヴァルト司令官は殺されることになる訳だが。


「因みに、護衛の方はいかがしますか? クロエ殿は単身で来ると言っていますが……」

「では、護衛はシグルズに頼もう。彼に伝えておいてくれたまえ」

「承知しました」


 ゲルマニアにおいて恐らく唯一レギオー級の魔女に対抗出来る兵士。それにクロエと実際に戦ったこともある。彼ならば問題ないだろうということで、議論は決着した。


 ○


「お待ちしておりました、クロエ殿。私は神聖ゲルマニア帝国軍西部方面軍総司令官のヴィルヘルム・オットー・フォン・ザイス=インクヴァルト侯爵です。どうぞお見知りおきを」


 誰の目から見ても胡散臭い挨拶であった。しかし空から飛んできたクロエは気にも留めない様子である。


「私はクロエ・エッダ・イズーナ・ファン・ブラン・ド・アルシャンボー大公。ご存じかとは思いますが、ヴェステンラント合州国が七公の一人にして、白の魔女です」

「無論、存じ上げております」

「それはどうも」


 周囲のゲルマニア兵の視線は冷たい。或いは軽蔑か、或いは畏怖か。まるで舞踏会にでも来たような恰好の魔女は、少なくともこの基地内では最大の注目の的になっていた。


 そんな衆目には一切の関心を払わないクロエはしかし、一人の少年の姿を捉えた。


「あなた、シグルズ、でしたよね?」

「ああ。久しぶり」

「久しぶりです。今度もまた闇討ちでもするつもりですか?」


 クロエは皮肉っぽく尋ねた。ロウソデュノン要塞の戦いでいきなり狙撃されたことについてである。


 しかしそれは心外であった。あれはオステルマン師団長が勝手にやったことで、シグルズは一切関与していないし。あんなことはやろうとも思わない。それだけは釈明しておきたかった。


「本当に、それだけは勘違いしないで欲しいんだけど、あれをやったのは僕じゃない。僕の上司が勝手にやったんだ」


 上司が、と言っておくのも重要だ。部下がしでかしたことならシグルズの監督責任を問われてしまうだろうから。


「そうなのですか?」

「ああ。信じてくれ」

「あんなに見事な奇襲を事前の仕込みなしで?」

「本当だ。褒めるなら師団長を褒めてくれ」

「……まあ、そこまで言うのなら」


 一人で機関銃の弾を受け止めた時の3倍はシグルズが焦っているのを見て、クロエも何だか哀れに思えてしまった。


「そんなに楽しく話し合うような仲だったのかね、シグルズ君?」

「っ――ま、まあ……そう、ですね……はは……」

「失礼しました」


 実際、この2人は何故か話が弾むのである。お互いに似た者同士だからだとか、そういう理由なのかは分からないが、とにかくそうなのだ。


『シグルズ様、よろしいですか?』


 耳元の通信機からヴェロニカの緊張した声。シグルズは司令官から一瞬離れ、通信に応じる。


「ああ。どうした?」

『先程からクロエさんの近く――とは言っても屋上とかからですけど――人間の気配がします』

「人間の気配……?」


 メレンの劣悪な環境を生き抜いてきただけあって、ヴェロニカの勘は非常に鋭い。これも恐らく何らかの兆しだ。具体的に何を指すのかは定かではないが。


「了解した。引き続き、周囲を警戒してくれ」

『了解しました』


 通信終わり。


「では、殿下、どうぞこちらへ」

「わざわざありがとうございます」


 ザイス=インクヴァルト司令官が自らクロエを案内する。シグルズはそれに少し離れてついていく。ヴェロニカはそこそこ離れた場所から周囲の監視。


 緊張の会談は始まった。


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