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共闘Ⅱ

 すっかり破壊され剥き出しになった廊下。そこでは親衛隊がありったけの防楯を並べ、陽の魔女レリアと交戦していた。突撃銃で蜂の巣にし、対魔女狙撃銃で体を粉砕し、手榴弾で焼き尽くしてもなお、レリアには止まる気配が全くなかった。


 と、その時であった。レリアの右半身に数十の剣が突き刺さったのである。


「ハーケンブルク少将閣下か!」


 カルテンブルンナー全国指導者は喜びのあまりに大声を上げていた。こんなことが出来るのはシグルズ以外にはいないのである。しかし、その予想は外れた。


「ち、違います! あれは白の魔女です!」

「何!? いや……少将閣下と白の魔女が一緒にいるのか……?」


 ヒンケル総統への絶対の忠誠で結びついて親衛隊にとって、それは最も理解し難い光景であった。が、状況を理解する前に、シグルズとクロエは城壁のような鉄の壁を造ってレリアの行く手を塞ぎ、親衛隊の前に二人揃って降り立った。


「これはどういうことですかな、ハーケンブルク少将閣下? どうしてヴェステンラント人があなたの隣にいるのですか?」


 親衛隊員達はカルテンブルンナー全国指導者の意を汲んで、クロエに銃口を向けている。とは言え、クロエは特に気にかけることもなく、やれやれと溜息を吐くだけであった。


「カルテンブルンナー全国指導者、あなたも聞いている筈だ。我が軍は親衛隊を含み、ヴェステンラント軍との休戦状態にある。彼女に銃口を向けることは、我が国の信用を傷付けることになるぞ?」

「休戦は承知していますが、それは同盟ではありません。レリアが討ち果たされるまでは相互不干渉というだけの筈。ヴェステンラント人と手を組んでいるあなたは裏切り者でしかありません、少将閣下」

「この状況では、ヴェステンラント軍と協力した方が、我が軍にとっての利益が大きい。それくらい分からない君ではないだろう?」

「お言葉ですが、ヴェステンラント人と手を組むなど初めから論外です。親衛隊はあなたの行動を認めることは出来ません」

「ならば僕達と戦うか? 君達がレギオー級二人と正面から戦えると?」


 いくら親衛隊でもそれは無理だ。特に金属を操る白の魔女であるクロエはゲルマニアの天敵であり、シグルズなしに相手するのはほぼ不可能である。カルテンブルンナー全国指導者は部下を無駄死にさせるほど愚かな男ではない。


「……分かりました。但し我々は協力することは出来ません」

「それでいい。ヴェステンラント人と協力しろなど、無理があるだろうからな」

「少将閣下はどうしてすんなりと手を組めるのですか?」

「罪を憎んで人を憎まずと言うだろう?」

「……そうですか。そう割り切れるあなたが羨ましい」


 親衛隊は中立くらいは守ってくれるようだ。


「ではシグルズ、終わらせに行きましょうか」

「ああ、そうしよう」


 シグルズとクロエは白と黒の翼を広げて飛び立つ。壁の向こう側に行くと、既にレリアは突き刺さった剣を抜いて体を修復していた。


「シグルズ、気を付けてください。彼女の魔法には死んだと気付く前に殺されますよ」

「ああ、分かってる」


 レリアの魔法は目に見えない強力なものだ。シグルズとクロエは全身を覆う鉄の盾を造り出し、その後ろに隠れながらレリアの斜め上に陣取った。


「どうする? 早速攻撃する?」

「いえ、少しだけ、交渉させてください」

「分かった」


 クロエはレリアに呼びかける。


「あなたはどうしてしまったんですか! 敵であろうと殺すことを躊躇っていたあなたが、どうしてこんなことを!」

「ははっ、私の邪魔になる者は全て殺すだけです。私の邪魔をする者は必要ありません」

「……話になりませんね。やはり実力行使しかなさそうです」


 とても同じ人間とは思えない。クロエは説得など無意味であるとすぐに判断した。


「シグルズ、私達が勝つには、彼女の中にあるイズーナの心臓を抉り出さなければなりません。大丈夫ですね?」

「ああ、分かってる。その為には心臓の場所を掴まないとね」

「ええ、そうですね。では……私があなたを守りますから、機関砲とやれで敵をレリアを撃ち抜いてください」

「了解だ」


 クロエはシグルズの前に出て分厚い壁を改めて作り出す。そしてシグルズはその壁の上下左右に機関砲を作り出し、レリアに向けた。


「レギオー級の魔女だと言うのに、小賢しいことをするんですね」

「小賢しくて結構! 死んでもらう!」


 シグルズは壁から潜望鏡を出してレリアを観察しながら、4門の機関砲の引き金を一斉に引いた。不気味に笑うレリアの体はたちまち粉砕され、両手両足がもげて胴体が二つに分かれた。


「どうですか? イズーナの心臓はありそうですか?」

「分からない。それらしいものは見えない」


 その体のどこかにイズーナの心臓がある筈だ。しかしレリアの肉体を粉砕してもそれらしいものは見えなかった。


「クソッ。やっぱり近づくしかないのか?」

「それは危険です。止めておいが方がいいですよ」

「おっと、奴が起き上がる」


 大量の血肉を床に置き去りに、レリアは体を完全に再生させた。そして、それだけに留まらず――


「っ! 飛んだ!」

「おっと……面倒なことになってしまいましたね」


 レリアは黒い翼を広げ、砲弾のような勢いで空に飛び立ったのだ。

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