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掃討作戦Ⅱ

「よーし。弾種徹甲弾。撃てっ!」


 地下壕の奥に狙いを定めた戦車は、シグルズの命令で徹甲弾をぶち込んだ。何かが崩れ落ちる音がして、土煙が塹壕から噴き出してくる。


「敵がいたならこれで死んだだろうが、ダメ押しだ。榴弾に切り替え、もう一発撃て!」


 敵がいるとしたら何らかの遮蔽物に隠れている筈。徹甲弾でそれを破壊されただろうから、次は榴弾で敵兵を殺傷する。この狭い地下壕で榴弾が炸裂すれば、重歩兵とてただでは済まないだろう。


 闇の中で再び大爆発が起こり、三度煙が溢れ出す。ここまですれば大丈夫だろうと、シグルズは判断した。


「よし。総員、地下壕に突入するぞ! 着いてこい!!」

「「おう!!」」


 道の敵拠点への突入だ。危険なその任務の先陣は、やはりシグルズが切らざるを得まい。シグルズは魔導剣を一本作って、それを片手に地下壕への階段を駆け下りる。兵士達もそれに続いて、突撃銃を持って駆ける。


 すぐに階段を降りきったシグルズ。辺りは薄暗いが、何とか地面や壁が見えなくもない。足元には多数の瓦礫と数人の魔導兵の死体。次の瞬間だった。


「死ねっ!!」

「やはりいたかっ!」


 物陰から魔導兵が飛び出し、シグルズに斬りかかった。シグルズは剣を掲げてその一撃を弾く。魔導兵の剣は、シグルズの剣の前にへし折れた。


「何っ!?」

「僕を舐めないで欲しいな!」

「うぐっ……」


 兵士は腹を貫かれて倒れた。


「閣下! ご無事ですか!」

「問題ない。それよりも、敵がいないか確かめろ」

「はっ!」


 兵士達は周囲を探したが、特に敵の姿は見えなかった。どうやらさっきの魔導兵以外は砲撃で死んだらしい。


「まあいい。しかし……ただの地下壕って訳でもなさそうだな……」

「ええ、そうですね……」


 シグルズの前にはまた暗闇に続く長大な通路があった。ただの地下壕というようには見えない。


「他の地下壕と連結されてるのか、或いは別の施設があるのか……。まあ、聞けばわかる」

「聞けば……?」


 先程シグルズが刺した兵士だが、死んではいない。寧ろ熱で相手を切り裂く魔導剣の特性上、傷は自動的に焼灼されて出血は少ないのである。兵士達に簡単な応急処置を行わせ、シグルズは寝かせた兵士の横に立った。


「聞きたいことがある。答えてくれるな?」

「……何だ?」

「この地下壕は、どうやら数百パッスス先にまで続いているようだ。一体どこに続いている?」

「ははっ、続いているって言うよりは、ここがその一部だと言った方が正しいな」

「どういうことだ?」

「この王都には蜘蛛の巣みたいに地下が張り巡らされている。どこから入っても、どこからでも出られるのさ」

「……なるほど。ヴェステンラントの魔法は恐ろしいな」

「お褒めに預かり、光栄だ」


 22世紀の地球でも都市の地下のあらゆるところに地下街を張り巡らせるなんてことは出来なかった。それをやってのけるヴェステンラントの底力には感服である。


「それで、俺はどうなるんだ? あんたらに殺されるのか?」

「いいや、君は我が軍の捕虜だ。適切な治療と待遇を与えよう。いい情報ももらったしな」

「何のことだ?」

「全ての地下壕が繋がっているのなら、地下から制圧すればいい話だ。有力な情報をありがとう」


 無数の地下壕が独立して配置されているのなら、毎度毎度決死の突入劇を繰り返さないといけなかっただろう。だが地下が全て繋がっているのなら、地下から攻めればいい話だ。


「さて、いい話を聞いた。ヴェロニカ、オステルマン中将にこれを報告してくれ」

「はい!」


 敵の構えはおおよそ知れた。オステルマン中将にそれを報告すると、次の命令が飛んできた。


「シグルズ様、中将閣下から、地下から敵の制圧を試み、敵の出方を窺えとのことです」

「僕達に威力偵察しろってことか。まあ妥当だけど」


 第88機甲旅団は全員が突撃銃を装備している数少ない部隊の一つだ。と言うか最前線では彼らだけである。故に機動戦とは正反対のこのような閉所での戦闘も、彼らの仕事なのである。


「地上に残してきた部隊はどうしましょうか」

「取り敢えずは待機だ。何かあってもオーレンドルフ幕僚長が何とかしてくれるだろう」

「そうですね。では私達は進みましょう」

「ああ。ヴェロニカは魔導反応をよく見ておいてくれよ」


 いくら魔導探知機があっても、敵が攻撃を開始するまではその存在を探知することは出来ない。暗闇はどこから敵が現れるのかと不安を掻き立てるが、兵士達はゆっくりと歩み始めた。


「しっかし、よく出来た地下街だな」

「煉瓦で補強されていますからね。ただ穴を掘っただけではないようです。相当な時間と労力が必要かと思われます」

「急ごしらえではないってことか。警戒しすぎる事はなさそうだ」


 いくら魔法があってもここまで大規模な構造を造るには相当な時間がかかるだろう。シグルズは警戒を強める。


 と、その時だった。


「シグルズ様、前方右に魔導反応です」

「前方右? 壁しかないように見えるんだけど」

「そ、そうですね……。ですが確かに魔導反応があります」

「ふむ……」


 何が何だか分からないが、シグルズは魔導反応に近づいてみた。

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