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索敵殺害作戦

 シグルズは火炎放射戦車に対抗し出した敵の戦術をオステルマン中将に伝えた。


「――なるほど、そう来たか。敵は全く侮れんな」

「はい。そして……こうなったからには、最終手段に出るしかありません」

「そうなる気がしていたよ。敵の根本的な殲滅、か」

「はい。しかし枯葉剤のような化学薬品を用いるのだけは論外です。余りにも非人道的です」


 シグルズは何よりも先にそれだけは言いたかった。そんなことをしたらアメリカ人を非難する資格がなくなってしまうからだ。


「前から思っていたが、そんなに非人道的か? 草木を枯らすってだけなんだろう?」

「確かに目的はそれだけです。ですが、枯葉剤というのはつまり毒ですので、広範囲に無差別に毒ガス攻撃を行っているのと同じです。それに枯葉剤にはそれを浴びた人の子供にも悪影響を及ぼす可能性があります。そうなれば、クバナカン島の住民は数十年に渡って被害を蒙り続けることになってしまいます」


 ――しまった、言い過ぎた。


 この世界で枯葉剤の後遺症など発生したこともないのに、地球の知識でさも当然のように語ってしまった。これは、不自然だ。


「お、おう。毒ガスのことはよく分からんが、大変なことは分かった」

「は、はい」


 オステルマン中将が化学の知識がなくて助かった。


「ともかく、化学兵器を使用するのは我が国の評判を著しく落とします」

「だったら、やるのは敵の拠点を探して殲滅することか」

「はい。ですがこちらも、民間人を虐殺したとの謗りを受けないよう、細心の注意を払わなければなりません」

「そうだな。そこのとこは任せろ」

「はっ」


 方針は決まった。援軍を待ち、ゲルマニア軍は戦線を更に拡大させる。


 〇


 ACU2314 11/27 クバナカン島東部


 ゲルマニア本国から15万の援軍が到着した。オステルマン中将はこの部隊を指揮下に加え、大規模なゲリラ掃討作戦を開始した。街道の左右に広く部隊を展開し、拠点になりそうな集落を見つけ次第、ゲリラが潜んでいないか搜索するのである。


 シグルズは個人としての戦闘能力を活かし、一時的に歩兵隊の指揮を採って索敵に当たっていた。クバナカン島の地図などまるでない為、大兵力を活かした人海戦術で集落を探すしかなかった。


「閣下、前方に小規模な集落を発見しました!」

「了解だ。早速突入しよう」

「はっ!」


 大概の攻撃に対して不死身であるシグルズは便利である。ヴェロニカと数名の兵士を連れ、シグルズが先頭に、その集落に入った。集落は閑散としたものであり、シグルズの視界にはほんの5人ほどの人間しか映らなかった。


 彼らが不安そうに見つめる中、シグルズは拡声器で呼びかける。


「えー、諸君。我々は神聖ゲルマニア帝国軍である! この村には敵兵を匿っている疑いがある! よって、ただ今より捜索を行わせてもらう! 諸君が抵抗しない限り、我々は諸君を傷付けるつもりも、諸君から奪うつもりもない! もしも兵士が潜伏しているのなら、速やかに投降せよ!」


 その後、全ての村人は家の中にいるよう命令し、シグルズは主力部隊を送り込んで捜索を開始した。家を一軒一軒虱潰しに調べる作業である。とは言え、この辺にある建物の数は30程度であり、そう時間のかかるものではなかった。


「シグルズ様、捜索が半分終わりました」

「早いな。その調子で続けさせてくれ」

「はい!」


 大したことはなく索敵は終わる、と思われていた。突如として聞き慣れない銃声が響いた。続けて数発の銃声が響く。


「敵か」

「そ、そのようです! ええ……家屋に潜伏していた敵兵が発砲。こちらに犠牲が出た為、やむなく応戦しこれを殺害したとのことです」

「犠牲が出てしまったか……」

「し、仕方ないですよ。でもそれ以上に敵を殺せたんですから、いい成果だと思います」

「……そうだね」


 数名のゲリラ兵を殺害し、この集落での索敵は終了した。シグルズは再び人々に呼びかける。


「諸君! ここに敵兵が匿われていた! 諸君らを罰するようなつもりはないが、我が軍がこの集落に駐屯し、監視させてもらう!」


 放置していたらまた敵が利用するだろう。シグルズは百名程度の兵士をその場に残し、次なる集落の捜索に繰り出した。


「こんな調子で、いつまでかかるんでしょうか……」


 ヴェロニカは不安そうに呟く。


「まさに虱潰し、だからね。時間がかかるのはしょうがないよ。でも最も確実な方法だし、僕達の他にも多くの人部隊が同時に展開しているから、そんなに大変ではないよ」

「なら、いいのですが――っ! シグルズ様、近くに人の気配がします!!」

「何だって?」

「あっちです!」


 ヴェロニカが指差した方向に向け、シグルズは即座に機関砲を作りだし、いつでも撃てる態勢を整える。兵士達もすぐに事情を察し、体を低くして銃を構える。


 次の瞬間、一発の銃弾が兵士を貫いた。


「クッ……撃てっ!!」


 機関砲と小銃による一斉射撃。地面ごと抉り飛ばし、敵兵を殺害した。


「いい度胸じゃないか、僕達に仕掛けてくるなんて」

「え、ええ……」

「近くに敵の拠点がある。見つけ出し、これを制圧するぞ!」


 若干の犠牲を出しながら、シグルズは作戦を遂行し続ける。

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