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対米上陸作戦Ⅱ

「で、クバナカン島に上陸して、その後はどうするんだ?」

「はい。ヴェステンラント侵攻部隊が集結した後は、まず全戦力でクバナカン島を制圧します。ここはヴェステンラント海軍の拠点となっておりますので、良港が多数あり、我が軍の前線基地として大いに役に立つでしょう」

「うむ」

「そしてクバナカン島を完全に制圧した後は、ヴェステンラントの王都ルテティア・ノヴァを目指して、周辺の島々を制圧しつつ、全力で進軍致します」

「王都制圧、か。その方針は変わらんのだな」

「はい。最小限の労力でヴェステンラントに講和を叩きつけるには、これが最適でしょう。王都を制圧し、ヴェステンラントを南北に分断することが出来れば、我々の勝利に疑いようはありません」

「そう上手く行く気はしないのだが……」

「確かに、戦争とは余りにも不確実な博打です。とは言え、長期的に見れば戦略的に優勢である側が必ず勝ちます。賭場で堂本が必ず勝つように」

「そうだな。期待している。作戦の説明は以上か?」

「一つだけ残っております。作戦名についてです」

「名前か……」


 ザイス=インクヴァルト大将が毎度突飛な作戦名を提案してくるので、少し楽しみなヒンケル総統である。


「今回の作戦、枢軸国軍によるヴェステンラント王都制圧作戦の名は、『不朽の自由』作戦と命名しました」

「今度は抽象的になったな」

「ええ、まあ。この作戦の目的は、全世界に脅威を与え諸国民の平和と独立を踏みにじる合州国を征伐し、世界に自由をもたらすことが最終的な目的であります。それをそのまま名付けさせて頂きました。ご不満がありますでしょうか?」

「いいや、そんなことはない。それでやってくれたまえ」

「はっ」


 作戦名は不朽の自由。ゲルマニアが正義を執行するのだという強い意志の滲み出た作戦名であった。まあザイス=インクヴァルト大将本人はそんなこと微塵も思っていないのだが。


「さて、本作戦について、何かご質問のある方はおられますかな?」

「で、では、財務省から。一応確認なのですが、上陸から半年以内に決着をつけるという想定は、今も変わっていませんよね?」

「はい、無論です。ヴェステンラント王都を直接叩く飛び石戦法ですから。半年というのも、かなり長めの想定です。それを超えることはありませんよ」

「そ、そうですか。それはよかったです」


 遙か大洋の先で戦争するのは大きな負担がかかる。それ以上戦闘が長引くようならば、外交で解決するしかなくなるのである。


「……他にご質問はないようです。それでは我が総統、作戦の実施を承認して頂けますか?」

「ああ、承認しよう。すぐに皇帝陛下からも勅許が届く。そうしたら、作戦を始めようではないか」

「はっ。ありがたき幸せです」


 その後は何の滞りもなく、不朽の自由作戦は開始されたのであった。


 〇


 ACU2314 11/10 アトランティス洋上 戦艦プリンツ・オイゲン艦内


 ゲルマニア、そして世界で3番目の戦艦プリンツ・オイゲン。初の実戦がこのような世界の命運を掛けた戦いであるのは不憫である。その為、この艦には護衛部隊として最精鋭、シグルズの第88機甲旅団が乗り込んでいた。


「ついにヴェステンラント本土に攻め込むんですね……。緊張します……」


 ヴェロニカは今更になってその事実を噛み締めているようだ。


「まあ確かに、これまでは僕達の勝手知ったるエウロパで戦ってきたからね。新大陸への遠征は、色々と困難があるだろうね」

「ほ、本当に大丈夫でしょうか……」

「まあ僕達は精鋭部隊だから、補給は約束されているよ」

「私達は、ですか……」


 ザイス=インクヴァルト大将の能力が補給面においても発揮されることを祈るばかりである。


「師団長殿、そんな先のことに注意を取られるのはよくないのではないか?」


 オーレンドルフ幕僚長は言う。


「そう先のことでもない気がするけど、確かにまずは、ヴェステンラント海軍を撃滅しなくてはならないな」

「その通りだ。我々が気を抜いていたら、このプリンツ・オイゲンが奪取されてしまうぞ?」

「まさか。そんなことはさせない。僕達が負ける理由はどこにもないよ」

「慢心は敗北の種だがな」

「ああ、そうだな。肝に銘じておく」


 戦艦が3隻。この地上で最強の艦隊がここにある。シグルズは負ける気など全くしなかった。


 〇


「閣下、西方30キロパッススに敵艦隊を捕捉しました! 我が方に接近しております!」


 シュトライヒャー提督に、ついにその報告が届いた。


「向こうが先に我々を発見したのか」

「どうやら、そのようです」

「まあいい。全艦戦闘配置! 戦艦、甲鉄艦は前に出ろ」

「はっ!」


 戦闘能力のない輸送艦隊は後方に待機させ、戦艦、甲鉄艦の13隻の艦隊は突出し、迎撃に出てきたヴェステンラント艦隊を逆に撃滅すべく、主機を全開にして前進する。


「敵艦隊はおよそ100隻です。事前の予想通りですね」

「そうだな。だが切り札がないのは、違和感があるな……」

「ヴァルトルート級やイズーナ級などの魔導戦闘艦ですか」

「ああ。少なくともヴァルトルートは生き残っている筈なんだが」

「気にしても仕方がないですよ」

「それもそうだな。全艦、単縦陣を組め!」


 艦隊は一直線に並ぶ単縦陣を取り、更に増速する。

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