表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
769/1122

嶋津の策略

 ACU2314 8/23 大八洲皇國 馬韓國北部


 ドロシア率いるヴェステンラント軍は街道の側まで前進し、そこに簡易的な城柵を構築した。そして間もなく、毛利家と長曾我部家を中心とする大八洲軍の援軍およそ3万が来援した。


「ドロシア様、申し上げます! 敵勢、街道の南20キロパッススに確認しました!」

「そう。であれば、今日中にぶつかりそうね。野戦築城は十分とは言えないけれど、これで戦うしかないわね」

「嶋津家の戦力を加えれば、敵の総戦力は4万。厳しい戦いになりますね……」


 オリヴィアは不安そうに。これまでただでさえ戦略的に優位である筈の状況でほとんど負け続けているのに、大八洲側の戦力の方が優位であるこの状況、勝てる気がしないのである。


「私達は守備側よ。追い返すだけならやれる筈だわ」

「ええ、まあ。今回はともかく、負けないことを最優先にしましょう。そもそも時間が稼げればいいのですから」

「戦い続けている限り、私達の勝ちってことよね」


 大八洲勢は北上するに当たって、街道をすぐさま襲撃することの出来るこの城を必ず落としに来る。それを撃退することが出来れば、もしくは敵勢の足止めをすることが出来れば、ヴェステンラント軍の勝利と言えるだろう。上陸を成功させた時点でヴェステンラントが戦略的に大きく優位に立っているのだ。


「さて、私達はここでどっしりと待ち構えましょう。下手に動いたら舐められるだけだしね」

「ええ、それがいいでしょう」


 ヴェステンラント軍は守りを固め、大八洲軍を待ち受ける。


 〇


「これは嶋津殿、ご無事のようで何より」

「毛利殿も、息災なようだな」


 嶋津軍はヴェステンラント軍の上陸を許したとは言え、昭弘の判断で損害を最小限な抑えた撤退を成功させている。その戦力はほとんど損なわれておらず、ほぼ万全の状態で援軍と合流した。


「さて嶋津殿、こんなところで油を売っている暇はあるまい。北の武田を救援する為、一刻も早くヴェステンラント軍を叩きのめさねばな」

「叩きのめすとは言っても、相手は城に籠っている。そう簡単ではないぜ?」

「随分とヴェステンラントを高く買っておるようだな」

「奴らも舐めたもんじゃない。そもそも舐められるような相手なら、とっくにこの戦は終わってる」

「ははは、確かに。して、どう攻める? そんな厄介な城をどう落としてやろうか」

「ふっ、毛利殿は随分と頭が固くなったようだな」


 昭弘はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。


「随分と戦場からは離れておったからのう。で、嶋津殿には何か策が?」

「ああ、あるとも。あんな城、無視してやればいいのさ」

「無視? あれを横にしながら軍を進めよと言うのか?」

「いかにも。城攻めなんぞ、しないで済むならその方がいいんだ」


 嶋津薩摩守には勝ち筋というものがが見えていた。


 〇


「も、申し上げます! 大八洲勢、我らに攻めかかる様子なく、悠々と街道を北上しております!!」

「……何ですって? 私達を無視して街道を進んでいると? 馬鹿なことを言うんじゃないわよ」


 簡素なものとはいえ、街道を強力に睨みつける城だ。これを無視して進むことなど不可能。少なくとも兵法の常道と照らし合わせば全く論外である。ドロシアは報告を信じずに再度の偵察を命じた。


「も、申し上げます。やはり、先程の物見は間違ってはおりませんでした。大八洲軍は我々を無視して北進しようとしております!」

「ば、馬鹿なっ……。横っ腹を晒して城を横切るなんて、あり得ないわ……!」


 にわかには信じ難いことだ。敵軍の制圧下にある街道を我が物顔で通過するなど正気の沙汰ではない。


「…………だったら、奴らに私達を挑発した代償を支払わせるまでよ。直ちに出撃! 大八洲人を蹴散らしなさい!!」


 こうする為に城はあるのだ。だからドロシアは容赦なく、彼女を舐めきっている大八洲軍への総攻撃を命じた。街道を通る為に伸び切った大八洲勢を撃滅するのである。


 〇


「突撃! 一人残らず殺せっ!!」

「「おう!!」」


 ドロシア率いる騎馬隊は、全く陣形を整えていない、行軍の最中の大八洲勢に側面から襲撃をかける。


「私達を舐めた罰よ! 一人残らず死ねっ!」

「で、殿下、前に出過ぎです!」


 ドロシアは取り憑かれたように大八洲兵に突っ込み、馬上から振り下ろした刀で武士の頭を次々と切断した。


「ついてきなさい! 情けは無用、こいつらが態勢を整える前に、この一撃で方を付ける!!」

「「おう!!」」


 ドロシアは破竹の勢いで敵軍に斬り込み、数百の武士をたちまち討ち取った。


 〇


「ドロシア様、敵軍の突破に成功されたとのこと!」

「突破口は拡大されつつあります!」

「はい、分かりました。いい調子のようですね」


 前線に出たドロシアの代わりにオリヴィアが全体の指揮を執っている。ドロシアの突撃によって大八洲軍は真っ二つに分断された。


「この勢いを損なう訳にはいきません。それでは、歩兵隊を突入させ、更に突破口を拡大すると同時に、大八洲勢を更に分断します。指示通りに部隊を押し出してください」

「はっ!」


 戦場の勢いはヴェステンラント軍にある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=959872833&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ