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馬韓國上陸作戦

 ACU2314 8/19 潮仙半嶋近海


 海軍の再建が未だ成っていない大八州は潮仙半嶋と筑紫嶋の間の制海権を確保することに注力し、外海についてはヴェステンラント艦隊が我が物顔で支配している。そして陸上の大八州国境でガラティアが交戦している頃、ヴェステンラント艦隊は潮仙半嶋に上陸を仕掛けようとしていた。一先ずは3万の兵力で上陸を仕掛ける。


「さて、私達の目的は、潮仙半嶋の横っ腹に上陸、北部への増援を妨害すること。その間にアリスカンダルのガラティア軍が前進し、それと合流した後に半嶋南部にまで進軍、これを制圧する。つまり私達は敵の妨害さえ出来ればいいってこと。これは肝に銘じておくことね」


 黄公ドロシアは諸将に改めて作戦目標を示した。不本意ではあるが、今回の作戦はガラティア軍を主体においたもの。ヴェステンラント軍は敵兵力の陽動が主な仕事である。故に無駄に戦線を広げる必要はない。


「まあ、まずは上陸を成功させることに全力を注ぐわ。上陸が失敗したら目も当てられないからね」

「上陸は成功するでしょうか……。前回はボコボコにされて逃げ帰ってしまいましたが……」


 青公オリヴィアはおどおどしながら言った。前回、つまり筑紫洲に上陸した時は、嶋津薩摩守の反撃に遭って命からがら逃げだして来たのであった。しかも今回も相手はその嶋津であるらしい。


「前回失敗したんだから、今回は失敗しないわ」

「そ、そうであればよいのですが……」

「大丈夫よ。今回は今言ったように、作戦の性質が違う。私達は上陸して橋頭保さえ築ければ、それで勝ちなのよ。別に敵の城を落とす必要はないわ」

「そうですね。慎重に戦いましょう」


 ドロシアとオリヴィアはそれなりの勝算を以て戦いに臨む。


 ○


 ACU2314 8/21 大八州皇國 馬韓國


 潮仙半嶋南東部に位置する馬韓國。ドロシアはその北部に上陸を仕掛けた。つまるところ潮仙半嶋の中部である。地形としては広大な干潟が広がり、まさに上陸にうってつけの場所だ。


「ドロシア様、敵兵が多数、海岸に構えている様子!」

「ほう? 今回は海沿いで迎撃しようって腹ね」


 これまで大八州勢は内陸に引き込んで一気に片を付ける戦術を好んでいたが、今回は水際防衛に切り替えたようだ。まあ並みの武将であれば、普通はそれを選ぶだろう。


「とは言え、敵はあの嶋津。そんなつまらない策で来るとも思えないけど……」

「敵の数はどれほどですか?」

「およそ1万と見受けられます!」

「チッ。そこそこ集めて来たわね」


 戦力には3倍の差がある。が、防衛側が圧倒的に優位である上陸作戦を敢行する以上、その戦力差は十分とは言えない。物量でゴリ押すだけでは普通に上陸を防がれて終わるだろう。


「どうしようかしら」

「ドロシア、まずは敵をよく観察しましょう。敵がどのような布陣でどういう戦術を採る気なのか、それさえ分かればこちらのものです」

「そ、そうね。いいこと言うじゃない。望遠鏡を持って来なさい!」


 オリヴィアの言う通り、ドロシアはまず海岸の様子を観察することにした。長い望遠鏡をオリヴィアと並んで覗き込む。


「石垣、か。急ごしらえみたいだけど、それなりに邪魔ね」

「あれなら一晩で造れますからね。一番必要なものを手っ取り早く用意するのは、流石は大八州人です」

「敵を褒めてどうするのよ」


 海岸から数十パッスス内陸に行ったところに、海岸線と平行に積まれた長大な石垣。高さは人間2人分ほどで小規模なものであるが、人間が簡単に乗り越えられないギリギリを突いてくる、嫌らしいことこの上ない設備だ。


「あれに阻まれれば、大軍で押し潰すことも出来ないか」

「そうですね。とは言え、私達にはあれを吹き飛ばせる武器があります。敵もろとも吹き飛ばしてしまいましょう」

「ははっ、そうね。弩砲で吹き飛ばせるわ」


 急造にしてはなかなか効果的な設備であるが、ヴェステンラント海軍を相手にするには力不足だ。艦載兵器の前には砂の城のようなものである。


「弩砲、射撃用意! あのうざったい石垣を吹き飛ばしなさい!」

「で、殿下、無理です! あんな近くの地上の物体を狙い撃つなど!」

「はぁ? そうなの?」

「そ、そうです!」


 弩砲はどうやら下を向くように設計されていないようだ。まあ確かに、元は地上兵器であるし、本来の目標は敵船なのだから、その機能は必要ないのかもしれない。


「……だったら、船を傾けでもして狙いなさい!」

「か、傾ける……?」

「船に穴でも開けて水を注ぎなさい。沈まない程度に魔法で制御出来るでしょう?」

「は、はいっ!!」


 船に穴を開けることはなかったが、水の魔法で船内に水を注ぎ、ガレオン船はじわじわと傾いていく。


「ドロシア様、これならいけます!」

「よし。注水止め! そして撃ち方始め! あの石垣を吹き飛ばせ!」


 ドロシアの機転により傾いた船から弩砲が矢を放つ。本体が傾いていても魔方式の弩砲が影響を受けることはなく、矢に貫かれた石垣はたちまち弾け飛んだ。どうやら固定もしていない、本当に石を積み上げただけの防壁だったようだ。

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