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エドウィンスバーク攻略作戦Ⅱ

「さて、エドウィンスバークについて情報を共有しよう。知っての通り、エドウィンスバークはブリタンニア島北部の東部、入江に面する城塞都市だ。ここエボラクムからそこに行く道は大きく2本に分かれているが、都市の手前で合流している為に、戦術的な意味はない」

「大軍の移動が迅速に行えるという利点はありますがね」


 オステルマン中将は言う。分進合撃という奴で、軍隊を移動させるには一直線に並べるよりも複数の道に分けて移動させて戦場で合流させるのが一番だ。


「そうだな。つまるところ、地上からでは東側から攻撃することしか出来ないということだ。大きく回り道をすれば他の方向から攻めることも出来るが、あまり時間はかけたくないな」


 今はヴェステンラント軍の防備は整っていない。だがそれも時間の問題だ。西部方面軍は可能な限り早く、敵に致命傷を与える必要がある。その為には最短で敵を落とさねばならない。


「入江に面しているのならば、戦艦で攻撃すればよいのではありませんか?」

「入江くらいなら封鎖する手段はいくらでもある。使えない公算が大きいだろう。実質的には内陸の都市と思って戦った方がよい」

「しかし、敵も我が軍の攻めてくる方向くらいは予期出来る筈。そうなると、敵が防備を固める要塞に真正面から殴りかかることとなってしまいますね……」

「今のところはそういうことだ。故に諸君、何かいい案はないかな?」

「……それならば、一つ案があります」


 シグルズは手を挙げた。


 ○


 ACU2314 6/4 ブリタンニア王国


 オステルマン中将率いる主力部隊は予定通り大街道から北上し、エドウィンスバークを一直線に目指していた。


「中将閣下、まもなく敵軍の砦が見えて来るかと」


 ハインリヒ・ヴェッセル幕僚長はそう告げる。ヴェステンラント軍も王都に立て籠もるだけではなく、道中に何カ所か砦を配置してゲルマニア軍の攻撃に備えていた。


「そうか。では戦闘用意。一撃で吹き飛ばすぞ!」

「はい」


 やがて第18機甲旅団の前に、道路を完全に塞ぐように建てられた木製の柵と数本の櫓が姿を現した。


「ここらで一旦止まれ」


 戦車隊は主砲の発射用意を整え照準を櫓に合わせたまま、その場で停止した。


「ハインリヒ、一応だが、降伏でも呼び掛けておけ」

「はい、承知しました」


 ヴェッセル幕僚長は器用に魔導通信機を操作してヴェステンラント軍に降伏を呼び掛けた。しかし返ってきた答えは玉砕するまで戦うというものであった。


「ふん、馬鹿め。敵味方の戦力も把握出来ないようでは、将軍として失格だ」

「それで、どうなされますか?」

「戦車全車、砲撃を開始しろ! 砦を吹き飛ばせ!」

「はい!」


 オステルマン中将の号令で、第18機甲旅団の戦車の内200両程度が榴弾による砲撃を開始した。榴弾が炸裂し、塔や櫓はいとも簡単に崩れ落ち、その上にいた兵士や武器は落下する。


 と、その時、数本の巨大な矢が戦車に飛来した。矢は装甲を貫き、貫かれた戦車はたちまち炎上してしまう。


「弩砲はやはり防げんか……」

「ええ。あんな巨大な矢を防ぐのは流石にライラ所長でも厳しいようです」


 戦車も日に日に改良されてはいる筈なのだが、元々艦載兵器として造られている弩砲を相手にするのは厳しいようだ。とは言え、この程度でオステルマン中将が怖気づくことはない。


 とは言え、榴弾の火力と弩砲の火力の差、そして装填速度の差は目も当てられないものである。弩砲が必死でほんの数両の戦車をやっと撃破している間に、砦は炎に包まれ完全に崩壊したのであった。


「よし。障害は排除したな。全軍突撃! 砦を突破せよ!」


 敵の目立った抵抗が途絶えると、戦車隊は隊列を保って砦の残骸に向けて進撃する。既にヴェステンラント側に戦車にロクに対抗出来る兵器はなく、散発的な攻撃は同軸機銃によって容赦なく刈り取られた。


「おっと……閣下、敵が突撃して来ます!」


 出血を強いる為、最後の望みをかけて数百のヴェステンラント兵が突撃を仕掛けて来た。


「とっとと降伏すればいいのに、つまらんことを。歩兵隊を押し出せ。奴らを戦車に近づけるな」

「はい、そのように」


 機関短銃と小銃を持った兵士達が前に出て、戦車の援護を受けながら敵兵に弾幕を浴びせる。突撃銃は対人徹甲弾の節約で今回は出番なしだ。


 敵は普通の魔導兵であり、小銃の弾幕の前に次々と散っていく。辛うじて肉薄に成功した者も、機関短銃の集中砲火を浴びてあっという間に死んでしまった。


「敵兵は粗方殲滅しましたね」

「ああ。時間稼ぎになっているのかすら怪しかったな」

「閣下、敵軍が降伏を申し出ているようです」

「ああ。降伏する者は受け入れてやれ」


 結局のところ、ほんの2時間程度の時間と6両の戦車をゲルマニア軍から奪うというのが、この砦が成し遂げた成果であった。正直言って機甲旅団でなくても歩兵師団付きの戦車隊だけで問題なかっただろう。実際、機甲旅団のないもう一方の軍団も次々と砦を落とし順調に進撃しているようだ。

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