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エドウィンスバーク攻略作戦

「敵は1万程度! 我々の敵ではない! 全軍、蹴散らせ!」


 第88機甲旅団はエボラクムを包囲する敵軍に対し戦車を押し出して突撃を開始した。敵のほとんどは普通の魔導兵であるようで、主砲の榴弾で容易く屠ることが出来た。


「対人徹甲弾を使うまでもないな。通常弾に切り替え! 奴らを殲滅せよ!」


 戦車は勢いを緩めず敵陣に突入し、同軸機銃で敵を薙ぎ払う。既に第89機甲旅団との戦闘で疲弊しているヴェステンラント軍にはそれと戦う余力はなく、すぐさま陣地を捨てて逃げ出した。


「どつやら我々の勝利のようだな、師団長殿」

「ああ。追撃はしなくていい。それよりも、他の城門の解放を急ぐぞ」

「それでいいだろう。とは言え、その必要もなさそうだがな」

「? どういうことだ?」

「シグルズ様! 各方面の敵が撤退しているようです!」

「そういうことか」


 これ以上の戦闘は無意味とヴェステンラント軍は判断したのであろう。包囲網の一角を切り崩した途端、全軍が崩れ撤退を始めたのであった。


「これでエボラクムは解放、か。案外あっさりだったな」


 かくして援軍の到着と同時にエボラクムは解放され、ゲルマニアに黒星が付くことは回避出来たのであった。


 〇


「ハーゲンブルク少将、素早い救援に感謝します。閣下が来られなければ、我々は全滅していたことでしょう」


 ヒルデグント大佐とシグルズは早速合流した。


「君達は救援などなくても奴らを撃退していたじゃないか。よく耐えてくれた。ザイス=インクヴァルト大将からも褒美があるとのことだ」

「褒美、ですか。とは言え、そんなものを受け取っている暇はありませんが」

「ああ、それなんだが、君には暫く休暇を取ってもらうことになった」

「……休暇? この重要な戦局において機甲旅団を遊ばせるおつもりですか?」


 ヒルデグント大佐はシグルズがふざけているのかと思った。


「いやいや、そういう訳じゃないんだ。第89機甲旅団は大損害を受けているだろう?」

「……はい。それについては、申し訳ありません」

「謝る必要はない。だが、僕達も先の戦いでかなり兵力を損じているんだ。そこで機甲旅団の戦闘能力を確保する必要上、第89機甲旅団の兵力を第88機甲旅団と第18機甲旅団に移すことになった」

「なるほど。事情は分かりました」


 兵力を補充する最も手っ取り早い方法は、他の部隊から引き抜くことである。訓練を積んだ実戦経験のある兵士をすぐさま補充することが出来る。


「どうだろう? 君には部隊の基幹要員を率いて、第89機甲旅団への補充要員の訓練に当たってもらう。そちらへの補充は新兵になるだろうからな」

「私に拒否権はあるのですか?」

「大将閣下からは本人の意思に従うようにと命じられている。どうだ? 受け入れてくれるかな?」

「拒否する理由はありません。どうぞ私の兵力を使ってください」

「分かった。感謝する。君もたまには休んでくれ」


 ヴェステンラント軍が体勢を整えてしまう前にもっと北に攻め込まねばならない。ゲルマニア軍は共食い整備で万全にした2個機甲旅団で作戦を続行することになった。


 〇


 ACU2314 6/2 エボラクム


「さて諸君、決戦を勝ち抜いたばかりのところ悪いが、我々の戦争はまだ終わっていない」


 ザイス=インクヴァルト大将は更なる攻勢の指揮を執る為、最も北の拠点であるエボラクムにまで移動して来ていた。早速将軍達を集めて軍議を開く。


「我々の目的は明確だ。ブリタンニア王国などと名乗る連中の首都、エドウィンスバークを落とすことである。敵は惰弱な連中ばかり。ヴェステンラント軍にその気がなくとも、王国の連中は降伏するであろう」


 首都直撃。それかザイス=インクヴァルト大将の策である。単純明快だが、それ故に効果も大きいだろう。


「閣下、ブリタンニア王国が降伏したとして、意味はあるのですか? 奴らは全く戦力になっていませんが」


 オステルマン中将は問う。確かにこの戦争で戦っているのは全くヴェステンラント人である。


「意味はある。王国の役目は補給線の確保だ。それが叶わなければ、いくらヴェステンラント軍でも、手足をもがれたようなもの。戦争の主導権は完全に我々に移る」

「なるほど」

「それでは閣下は、このままブリタンニアを完全に解放するおつもりなのですか?」


 今度はシグルズが問う。大将の口ぶりは、首都攻略が手段に過ぎないと言っているようなものだ。


「いかにも。勢いは我が方にある。このまま攻めの手を緩めず、ブリタンニアから、いやエウロパから、ヴェステンラント軍を完全に駆逐する」


 ザイス=インクヴァルト大将の宣言に将軍達は少々ざわめく。そこまでやる気だというのは、今初めて告げられたことだ。


「なるほど。そうすれば、この戦争にいよいよ終止符が打てますね」

「それは分からぬよ。戦争を終わらせるのは我が総統だ」

「確かに、そうでした」

「まあ、先のことを考えていても仕方がない。今はエドウィンスバークを落とすことに集中しようではないか。カムロデュルムと比べれば大した要塞ではない。我々ならば簡単に落とせるだろう」


 かくして時を置かず、エドウィンスバーク攻略作戦が開始された。

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