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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第六章 真珠湾攻撃

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青公オリヴィア

 ACU2309 8/19 サワイキ群島


「殿下! 真珠湾が攻撃を受けております!」

「え、そ、そうなのですか? 本当ですか?」


 狼狽する青公オリヴィア。本来なら後方である筈のここが直接攻撃を受けるなど、思ってもみなかったのだ。そもそもオリヴィア自体、ここにいるのは偶然である。


 オリヴィアは正直、こういう突発的な事態への対処は得意ではない。どちらかというとじっくりと作戦を練りたいタイプだ。


「流石は、軍神……」


 こんな遠隔地への直接攻撃。


 大八洲の晴虎は、その数々の軍事的成功から軍神として名高い。その評判は決して過大評価ではなかったのだと思い知らされた。


「ど、どうされますか? 軍港は既に大半が占拠されています」

「え、援軍を送ります。この辺りで用意出来る兵は?」

「およそ6,000です。それ以上は遠くから呼び寄せねばなりません」

「仕方、ありませんか……」


 大半の兵力は既にテラ・アウストラリスの前線に送り込んでいる。ここにいるのも、輸送の途中に立ち寄った兵士に過ぎない。だが、やるしかない。真珠湾を見捨てるなどあり得ないのだ。


「直ちに兵士を招集してください。真珠湾を奪還します」

「はっ。直ちに」


 敵方の兵力はおよそ3万。だが地の利はこちらにある。撃退くらいならば決して不可能ではない筈だ。


「あら、面白そうなことしてるのね」

「お姉さま……聞いておられたのですね」


 地面に垂れるほど長く青い髪を伸ばし、いつも病的な笑みを浮かべている小さな少女。彼女こそ、レギオー級の魔女の一人、青の魔女シャルロットである。


 また彼女はオリヴィアの実の姉でもある。体がやけに小さいのには事情がある。


「私も出るわよ。楽しそうじゃない」

「…………」


 オリヴィアはシャルロットを前線に出したくなかった。戦争を極力避けてきたのもこれが理由だ。


 しかし、戦力で相当な劣勢を強いられているこの状況で合州国最強の戦力を遊ばせておくという判断は、大公として出来なかった。


「――分かりました。真珠湾より大八洲軍を撃退してください」

「分かったわ。ふふふ。久しぶりに血が吸える……」

「…………」


 オリヴィアはシャルロットを黙って見送ることしか出来なかった。


 ○


 ACU2309 8/19 サワイキ群島 真珠湾


「晴政様! 敵の軍勢がこちらに迫っております!」

「ほう? 数は?」

「およそ六千です!」

「六千だと? 伊達だけでも十分ではないか」


 晴政は現在、およそ一万二千の軍勢を引き連れている。このまま正面から当たれば問題はないだろう。


「左大將殿には伝えているのか?」

「いえ。それはまだです」

「なれば……長曾我部殿などにはヴェステンラントの軍港の焼き討ちを続けるよう伝え、左大將殿には我が方の支援をお頼みしようか」

「はっ」


 飛鳥衆――或いはコホルス級――抜きで戦うのは少々分が悪い。


 朔からは即座に了承の通信が届き、他の諸大名も晴政に対処を任せた。晴虎が論功行賞において平等な判断を下す人間だと信用しているからである。


「では皆の者、俺に続け」


 晴政は駆けだした。


 ○


「敵が何もしかけてこない……」


 オリヴィアは呟いた。


 船団で島に上陸する時も、大八洲は何の手出しもしてこなかった。お陰であっさりと上陸出来た訳だが、それがかえって不気味である。


「内陸部に大八洲軍の陣地があります」

「そこで決戦という構えですか……受けて立ちましょう」


 ○


「騎馬隊から突撃! コホルス級魔導士は掩護! 続いて歩兵も突撃してください!」


 極めて典型的な作戦。


 まずは騎兵で敵の陣形を崩し、コホルス級が上空から攻撃を加えながら、歩兵によって敵を完全に打ち砕く。


 まず弩と長弓による遠距離戦。そしてヴェステンラントの騎兵が敵陣に突っ込み、乱戦が始まる。


「コホルス級は火力を集中して下さい!」


 陣形が乱れたところに上空から魔法による支援砲撃。全ては順調だ。そう、順調過ぎるくらいに。


 敵がコホルス級の魔導士を一切出してこないのも気になるところだ。されるがままに撃たれている。


「敵軍、後退を始めました!」

「そ、そうですか……」


 あまりにも脆い。大八洲の軍勢とはこうも脆いものなのだろうか。


「つ、追撃です。このまま敵に打撃を与えます」

「はっ!」


 オリヴィアは不安を抱きながらも、深追いを続けていった。しかし、それはやはり、晴政がしかけた罠だったのだ。


「っ! 殿下! 敵です!」

「ど、どこです?」

「後ろです! 後ろに敵が現れました!」


 奇襲を受け、後方では既に乱戦が始まっていた。兵の叫び声が聞こえてくる。動揺する部隊を、オリヴィアは何とか落ち着けようと試みる。


「れ、冷静になりましょう。直ちに部隊を反転。後方の敵に――」

「敵コホルス級魔導士、およそ――2,000! 来ます!」

「に、2,000……?」


 オリヴィアの元にいるコホルス級魔導士は500程度。圧倒的な戦力差だ。だが、何とかしなければならない。


「コホルス級魔導士は敵コホルス級魔導士の撃退に努めてください! 敵地上部隊はこの際気にしないで!」


 地上部隊だけでも地上のことは何とかなる。このまま敵軍の奇襲部隊を跳ね除ければ当面の危機は脱せられる筈――だった。


「地上部隊は後方の部隊を一気に――」

「殿下!」

「今度は何です!?」

「前方の部隊が突撃してきます!」

「そ、そんな、私たちが追いかけているのではなかったのですか!?」

「罠だったんです! まんまと嵌められました!」

「な…………」


 前と後ろから同時に急襲をしかけられる。大八洲軍の敗走はただの偽装であり、今や雲霞のごとき勢いを以てオリヴィアに迫ってきていた。


 それに対してヴェステンラント軍は混乱するばかり。秩序が崩れていくのがオリヴィアにも分かった。


「ふふふ。ねえ、こういう時こそ私が出る時じゃない?」

「お姉さま……頼めますか?」


 オリヴィアは姉に戦って欲しくはなかった。だが、この状況でそれ以外の選択肢はなかった。


「勿論よ?」

「お願いします」

「ふふふ」


 シャルロットは黒い羽で空を飛び、正面の敵に向かっていった。

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