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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第四十六章 第二次カムロデュルム攻防戦
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大反撃

 ACU2313 12/28 カムロデュルム近郊 ヴェステンラント軍陣地


「クロエ様、敵軍がカムロデュルムより出撃したようです」


 マキナはクロエに報告する。ゲルマニア軍が突如としてカムロデュルムから這い出してきたというのだ。


「おや、それは想定外ですね。敵の数は?」

「機甲旅団が1個、歩兵が6個師団ほどかと」

「カムロデュルムの戦力からすると、本気で攻め込むつもりのようですね。ではゲルマニア軍を迎撃する用意を整えるとしましょう」

「承知しました。直ちに」


 戦車を阻む塹壕や柵を組み合わせた堅固な陣地。クロエはすぐに重歩兵を配置し、ゲルマニア軍を迎撃する体制を整えた。クロエも最前線で指揮を執る。が、その時だった。


「っ、クロエ様、あれを」


 マキナは南の空を指さす。そこには数個の小さな点が隊列を組んで飛んでいた。


「あれは……爆撃機ですね」

「はい。やはりゲルマニア軍は本気のようです」

「まったく、面倒なことをしてくれましたね。全軍、空爆に備えてください!」


 急速に接近するゲルマニア軍の大型爆撃機はヴェステンラント軍の陣地の手前で高度を一気に落とす。ヴェステンラント軍は弩で攻撃を試みるが、新型の弩でも流石に爆撃機にまでは届かなかった。


 そして爆撃機は悠々と爆弾を投下した。たちまち陣地のそこらで爆発が起こり、炎に包まる。ダキア戦で頻繁に使用された焼夷弾である。


 せっかくの陣地は業火に包まれ、櫓や砦が燃え落ちる。兵士達は恐慌状態に陥り、炎から右往左往して逃げ惑うばかりであった。


「落ち着いてください。水の魔女はすぐに消火を!」

「はっ」


 爆撃による損害は大したものではない。落ち着いて対処すればすぐに事態を収拾することが出来るだろう。クロエが号令をかけるとすぐに水の魔女達が消火を始めた。


「まあ嫌がらせと言ったところでしょうね。大したことではありません」

「はい。敵が迫ってきております。前線部隊は動かさないでよいでしょう」


 いよいよゲルマニアの戦車が迫ってきた。後方部隊は爆撃への対処で動けないが、塹壕の重歩兵だけで十分戦えるだろう。


「まもなく戦車の射程に入ります」

「はい。各員、衝撃に備えてください」


 戦車の正面からでは弩で狙撃しても意味はない。重歩兵は素直に塹壕の中に隠れた。そして予想通り、戦車は砲撃を開始した。


「ただの砲弾程度、効きはしませ――えっ?」


 砲弾は命中すると同時に爆炎を上げる。だがその炎は全く収まらず、それどころか勢いを増し、塹壕のそこかしこが燃え上がっていた。


「な、何が……」

「まさか焼夷弾……。戦車砲に使えるほどに小型化されているものかと思われます」

「そ、それは、大変じゃないですか! 炎は重歩兵の天敵です!」


 瞬く間に砲弾の雨が降り注ぎ、塹壕は端から端まで消えない炎に埋め尽くされた。魔導兵達は最早戦闘を放棄して塹壕から逃げ出すが、彼らの魔導装甲にも火が付き、しかも全く消える気配すらなかった。


「ま、魔導装甲が燃えている? そんな筈が……」


 魔導装甲は全面金属で作られている。それが燃えるなどあり得ない。


「クロエ様、早くご指示を。これでは戦いになりません」

「あ、そ、そうですね。塹壕は放棄します! 全軍直ちに脱出してください。負傷者の救出も急いでください!」


 マキナの言う通り戦いにならないと、クロエは判断した。無傷の兵士は燃え上がった友軍を抱えながら、すぐに塹壕から脱出した。水の魔女達も塹壕に近付いて魔導兵を助け出そうとするが、炎の勢いが強く、ほとんどの者を助け出せなかった。


「兵士達に付いた火を消してください! 急ぎなさい!」

「で、殿下! 火が、火が消えません!!」


 水の魔女達は必死に水を生成して兵士を助けようとしたが、水を浴びながら炎は全く消える様子がなかった。


「クロエ様、もしかしたら油かもしれません。水では火は消せないかと」

「油……そうですね」


 クロエの中で合点が行った。燃えるはずのない魔導装甲はやはり燃えているのではなく、表面に付着した油が燃えているのだろう。であれば、対処法くらいは知っている。


「土の魔女を集めてください! 土を被せれば火は消えます!!」

「はっ!」


 すぐに土の魔女か集められ、魔導兵達に土を浴びせかけた。そうしてやっと炎は消えた。しかし魔導兵は大火傷を負い、とても戦える状態ではなかった。


「殿下、敵が、敵の戦車が迫っております!」

「クッ……あんなものを相手にしてはいられません。全軍撤退! 防衛線を再構築します!」


 いきなりしてやられたが、クロエはまだ負けてやるつもりはなかった。


 〇


「シグルズ様、敵が塹壕を放棄したようです。全軍か後退しています」

「予想以上の成果だね。敵が塹壕にいたからこそ、寧ろ効果的だったか……」


 塹壕の中に焼夷弾を叩き込まれれば逃げ場もなく急速に酸素不足に陥り、平地で撃つより効果的だっただろう。初戦にしてはこれ以上ない戦果だった。


「平地ではここまでの効果は挑めない。総員、気を緩めないように」

「はいっ!」


 重歩兵の死体が転がる塹壕を踏み越え、第88機甲旅団はヴェステンラント軍の陣地に突入した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 重歩兵殲滅と併せて、あわてて消火しに前線へ上がってくる魔女を狙うのかと想像してましたが、そういう戦術ではないんですね。
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