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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第四十六章 第二次カムロデュルム攻防戦
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総攻撃開始

「ふむ……状況は理解しました。妙な臭いがした後に兵士達が苦しみ始めたと」

「は、はい。不甲斐ないことですが、そのせいで我が軍は、ロクな抵抗も出来ずにゲルマニア軍に捕まってしまいました」

「なるほど……。とは言え、ゲルマニア軍が何をしたのかはよく分かりませんね。兵士をいきなり無力化出来るなんて、私達にとって重大な脅威なのですが。マキナ、どう思いますか?」

「状況を鑑みるに、何か毒性のある空気が原因かと思われます」

「毒の空気ですか。お伽噺の龍の吐息みたいな?」

「そのようなものかと考えられます」


 冷静になって考えれば、そうであるとしか考えられない。とは言え、マキナでもゲルマニア軍がそれをどうやって用意したかまでは分からなかった。


「そう考えるのがよさそうです。それに、空気であるのなら、風の魔法で吹き飛ばせば問題はないでしょう」

「風の魔法……私もそれを思い付いていれば……! やはり責任を取って自害します!!」

「ああもう、すぐに自決しようとしないでください。風の魔法でも、アトミラール・ヒッパーの狭い艦内では意味がないですよ」


 野戦では毒ガスを無力化出来る。だがスカーレット隊長の場合は密閉された空間であったから、毒ガスに対抗することが出来なかったのだ。


「とにかく、少し警戒させておけば、野戦でこれが脅威になることはなさそうです。まあアトミラール・ヒッパーには攻め込めなくなりましたが」


 結論としては、特に作戦に影響なしである。


「さて、戦艦は健在で、今のところ手出しすることは出来ません。これを念頭において作戦を考えねばなりません」


 戦艦の巨大な主砲は今なおヴェステンラント軍に向けられている。これは重騎兵にとっても十分な脅威だ。


「つまり、砲撃を回避しつつ敵と距離を詰めればよいのですね?」

「ええ。何か作戦はありますか?」

「それならば、私にお任せください! 必ずや汚名を返上して参ります!」

「分かりました。それではスカーレット隊長、あなたに重騎兵を任せます。装甲列車を制圧し、カムロデュルムへの道を開いてください」


 もう小細工は通用しない。ヴェステンラント軍はついに総攻撃を開始した。


 ○


「ヴェステンラント軍およそ5,000! 我が方に向けて動き始めました!!」


 ザイス=インクヴァルト大将の元にすぐさま報せが入った。何重にも構築されたゲルマニア軍の魔導探知網は、ヴェステンラント軍の僅かな動きも見逃さない。


「ついに来たか。戦艦、装甲列車、全力で砲撃を開始せよ」

「はっ!」


 戦艦は海から、装甲列車は水堀の内側から砲撃を開始する。その時シグルズは第88機甲旅団を置いて装甲列車の指揮を執っていた。


「列車砲、射撃用意せよ!」

「少将閣下、目標が分散していて、どれを狙えばよいのでしょうか?」

「何? ヴェロニカ、見せてくれ」

「は、はい」


 ヴェロニカに見せられた魔導探知機には小さな数十の光点が表示されていた。敵軍は数十の小部隊に分かれて進軍してきているのだ。


「なるほど。砲撃で一網打尽にされない為に分散しているのか。しかも敵は少数で当てにくい」

「これは、どうすれば……」

「仕方ない。少しでも数を減らす。近くの目標から砲撃せよ」

「はっ!」


 散兵戦術など練度に劣るヴェステンラント軍には不可能だと思っていたが、どうやらそれは過小評価だったようだ。或いは敵の司令官の技量が優れているのか。ともかく、敵は現実として高度な戦術を実行しているのだ。


「射撃準備、完了しました!」

「よし。撃ち方始め! これ以降僕の命令は不要だ。最速で撃ちまくれ!」

「はっ!」


 装甲列車に3門備え付けられた8センチパッスス列車砲は一斉に砲撃を開始する。戦車のものより倍以上の口径を誇る列車砲は、破壊力も段違いである。至近距離に命中すれば重騎兵とて無事では済まないだろう。


「命中!」

「魔導反応が減りました! しかし成果は僅かかと……」

「そうだろうな……。これじゃあ砲撃で一掃することは出来そうにない」


 命中したとても殺せる敵は僅か。アトミラール・ヒッパーの砲撃では敵の小部隊を一撃で吹き飛ばせるが、こちらは流石に命中精度が低い。


「閣下、とても食い止められません!」

「戦車隊、射撃開始! 迫撃砲発射用意。 機関銃もいつでも撃てるようにしておけ!」


 装甲列車の後方、カムロデュルム市内に配置されたおよそ300両の戦車が砲撃を開始する。砲弾の数だけは多いものの、戦車砲ではやはり重騎兵にはほとんど効果がないようだった。


「し、シグルズ様、ダメです! 全然敵が減っていません!」

「うーん、やはりそうか」

「迫撃砲の射程に入りました!」

「ああ。迫撃砲と機関銃、射撃開始せよ! まあ効果があるとは思えないが」


 装甲列車に配備された迫撃砲が大量の榴弾を投下する。しかし最初から歩兵用の武器である迫撃砲では、とても重騎兵を食い止めることなど出来なかった。機関銃も魔導装甲に弾き返され効果薄だ。


 砲撃で突撃を粉砕するという常道は、逆に完全に粉砕されてしまった訳である。

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