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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第四十六章 第二次カムロデュルム攻防戦
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アトミラール・ヒッパーの戦い

「機関砲ごときで私達を止められると思うな!!」

「く、来るなっ!!」


 密集陣形を取り艦内に多数設置された機関砲陣地を突破していくスカーレット隊長。彼女の勢いを止められる者はここにはいないかと思われた。


「機関室、制圧しました。後は艦橋を落とせば我々の勝ちです!」


 これでアトミラール・ヒッパーが自由に動くことは出来なくなった。しかし舵は艦橋にあり、ヴェステンラント軍が彼女を好き勝手に動かせる訳ではない。


「よし。だが艦橋は守りも固いだろう。総員、気を抜くなよ!」

「「おう!!」」


 とは言え、スカーレット隊長も勝てると確信していた。兵士達は士気が高揚し、いつでも最後の総攻撃を掛けられる状況である。


 ○


「て、敵が、すぐ目の前まで……」


 一方、艦橋のシュトライヒャー提督は完全に怖気づいていた。このままだと確実に負ける。艦橋にそんな特別な装備がある訳でもない。


「ここはもうダメです、閣下! かくなる上はアトミラール・ヒッパーを脱出し、反撃の時を待ちましょう!」

「ば、馬鹿を言え! 帝国で唯一の戦艦なのだぞ!? 奴らに取られてなるものか!!」

「あの重装歩兵に対抗するのはどうやっても無理です!! であれば、せめて閣下だけでも逃げて頂かなければなりません!!」

「だったら私は艦と運命を共にするまで――」

「閣下! ザイス=インクヴァルト大将閣下より通信が入っております!! お急ぎください!」

「わ、分かった」


 いきなり舞い込んできたザイス=インクヴァルト大将からの通信。彼の通信であれば何か目的があるのだろうと、シュトライヒャー提督は通信機をひったくった。


「何の用だ? 今こっちは余命5分程度のところなのだが」

『では手短に話そう。すぐに守備隊を艦橋の中か艦橋から離れた場所に移動させよ。急いでくれ』

「は? 何を言って――」

『いいから急ぐのだ。アトミラール・ヒッパーを救いたいのなら』

「……承知した。総員、艦橋から離れろ!!」


 何が目的なのか全く分からなかったが、シュトライヒャー提督はザイス=インクヴァルト大将の指示に従わざるを得なかった。


「――兵を退かせたぞ。次は何をすればいい」

『帝国陸軍の特殊部隊が作戦を遂行する。貴殿はそこで見物していてくれたまえ』

「な、何をする気だ?」

『それは見てのお楽しみだ。ただし、私が言うまで艦橋からは決して出るな』

「わ、分かった」


 ザイス=インクヴァルト大将が不敵な笑みを浮かべているだろうことが手に取るように分かった。


 ○


 スカーレット隊長はいよいよ艦橋に突入しようとしていたが、守備兵が一人としていないことで、逆に進攻を一時停止していた。


「敵がいない……これはどういうことだ?」

「奴ら、艦橋を捨てて逃げたのではないでしょうか?」

「そう簡単に明け渡すか? これで海軍力は完全に逆転するんだぞ」

「そう言われましても……」


 ザイス=インクヴァルト大将の指示は図らずも空城の計となり、スカーレット隊長を食い止めることに成功していた。しかし彼の作戦はこれではない。スカーレット隊長はすぐに異変を感じた。


「ん? 何だ、この臭いは」


 死体の臭いに混じってニンニクやアーモンドのような、とてもこの場に似つかわしくない臭いがスカーレット隊長の鼻を突いた。


「さ、さあ……っ、目が……」


 兵士らは示し合わせたように一斉に目を搔き始めた。そしてそれはスカーレット隊長も同じだった。


「目が痒い……それに、鼻水もだ……何なんだ、一体……ゴホッ……」


 魔女達は泣き崩れてでもいるかのように涙を流し、鼻水をすすりながら激しく咳をして苦しみだした。とても戦えるような状態ではない。


「クソッ……頭が痛い……奴ら……謀ったな…………」


 スカーレット隊長は激しい頭痛と吐き気に見舞われ、戦艦の壁にもたれかかった。彼女ですらそうなのだから、他の魔女が耐えられる訳がなかった。


「突入せよ!! 敵を生け捕りにするのだ!!!」


 その時、頭にガンガンと響く鬨の声が艦内に響き渡ると、無数の足音が近づいて来た。


「む、迎え、撃て……!」

「無理、です……これ、では…………」


 何とか絞り出したスカーレット隊長の命令も足音の前に掻き消された。彼女も最早、剣を杖にして辛うじて立ち上がることした出来なくなっていた。そしてまもなく、数えきれないゲルマニア兵が苦しむ魔女達に突入し、次々と捕縛した。


「ひ、卑怯者が……うっ――」


 スカーレット隊長も背後から押し倒され、ゲルマニア兵に両手を押さえつけられた。ゲルマニア兵は揃って顔に奇妙な仮面のようなものを被っていた。


「クソッ……! 失せろ…………!」

「お前、スカーレット・ファン・ヨードルか! 敵の首魁を見つけたぞ!」

「下種、が…………」


 スカーレット隊長は魔導装甲を無理やり脱がされ、兵士達に抱えられて真っ先に連行された。彼女も兵士にもたれかからないと立てないほどに衰弱し、ゲルマニア軍を散々苦しめた騎兵隊長とはとても思えない惨めな姿であった。


 機関室を制圧していたヴェステンラント兵もまもなく同じ方法で制圧され、アトミラール・ヒッパーに突入した魔女達は一人の例外なく全滅したのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 予想になるが、戦艦の地図が流失したのは意図的にやって、罠に嵌めるためだったのでは? あと戦争に卑怯もクソもありません、あるのは生と死です。
[一言] 遂にこの作品初めての化学兵器の使用ですか。 残るは,生物兵器と核兵器だけですね。
[一言] 催涙ガスか。なるほど、その手がありましたか。
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