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現地勢力援助作戦

 ACU2313 8/14 王都カムロデュルム


「クロムウェル卿、我が軍はこのような計画を立てております」

「要件は理解した、オーレンドルフ大佐」


 オーレンドルフ幕僚長は土の魔女であり、穴を掘ることにかけてはゲルマニアで最高の技術を持っている。彼女はカムロデュルムの城壁の外からトンネルを掘り、ひっそりとカムロデュルムの中に侵入した。因みにこのトンネルは狭く脆いものであって、大規模な兵を送り込むことは出来ない。


 そして戦前から惰弱な国王に代わって国政を率い、カムロデュルムの名士と評判であるウィリアム・クロムウェル子爵と接触した。


「――君達が武器を送ってくれるのだな。そして、その前に私が兵隊を集めておけばよいと」

「そういうことです。クロムウェル卿ならば、付いてくる人も多いでしょう」

「お受けしてくれますか?」

「悪い話ではないが、君達が我々を捨て石にしないと保証はあるのか? 今初めて出会う君を信用せよと言うのは、無理があるな」

「ふむ……。そう言われると、返す言葉がありません」


 実際ゲルマニア軍としてはクロムウェル達を捨て石にするつもりでいたし、オーレンドルフ幕僚長には何も言えなかった。


「申し訳ありませんが、今の私に用意出来るものはありません。しかし司令部に伝えれば何か用意出来るかもしれません」

「ふむ。であれば、話を付けてもらおうか。いい条件が用意できるのであれば、協力はしよう」

「そうさせてもらいます」


 オーレンドルフ幕僚長は機械の通信機でシグルズに通信を繋ぎ、クロムウェルの要求を伝えた。そして最大限の条件を用意した。


「――それでは、私があなた方に加わり、ゲルマニア軍との連絡役を務めるとしましょう」

「ほう。つまるところ、君が人質になってくれるという訳だな」

「ええ、まあ。これならばどうでしょう」


 クロムウェル達が死ぬことになれば、オーレンドルフ幕僚長も死ぬ。それが彼女の提示出来る条件である。


「君の話は多少は聞いたことがある。あのシグルズの第一の部下だそうだな」

「それは……指揮系統の上では確かにそうですが」

「まあ、よかろう。一先ずはその話、お受けしよう。バーゲンブルク城伯にお伝えしてくれ。しかし、君達を完全に信じた訳ではない。怪しい動きがあれば見限らせてもらう」

「ありがたきお言葉です」

「まあ、実を言うと、既に蜂起の用意は整っているんだ。勝算がなかったから実際に起こす気はなかったが、本当に武器が届くというのなら、それが立ち上がる時であろう」


 彼らの狩猟くらいしか用途がないような貧弱な武器では、何万人で蜂起しようが全く勝算はなかった。だがゲルマニアの武器があるのならば、或いは。


「それはそれは……」

「もっとも、このようなこと、本来は国王陛下がなさるべきなのだがな」

「陛下は民を守る為にいち早く降伏を決められたのでは?」

「いいや、陛下にそんな思慮があったとは思えんよ。彼はただ、戦いから逃げただけだ」

「随分と不満を持っておられるようで」

「ルシタニアは我々と同程度の武器で4年も抵抗を続けたのだぞ。それと比べて、我々は……」


 クロムウェルは怒りに拳を強く握り締めていた。


「ま、まあ、そのお陰でブリタンニアの民や経済はさして影響を受けていません。ルシタニアなど、国家が破綻する寸前という状況ですから」

「それは奴隷の平和だ。我々は徹底抗戦し、ブリタンニア人の誇りと共に散るべきであった」

「それは人によるでしょう。今は雑念は取り払って、カムロデュルムの奪還に全力を賭して頂きたい」

「……分かった。君の言う通りだ」

「よろしくお願いします」


 かくしてゲルマニア軍はカムロデュルム内に協力者を得ることに成功した。


 ○


 同日。スカーレット隊長からの報告を受け取ったライラ所長とシグルズは、早速武器弾薬を詰め込んだ木箱を爆撃機に詰め込み、ルシタニアの飛行場から飛び立った。


「どう、シグルズ。出来そう?」

「ま、まあ、なかなか緊張しますね。ほぼ飛び降り自殺な訳ですからね……」


 作戦を成功させるには、地上スレスレで翼を広げなければならない。だからしくじれば地面に激突して流石のシグルズでも死ぬ訳である。


「そうだねえ。一回くらい練習しておけばよかったね」

「じ、時間がないので……」


 一刻も早く作戦を実施したかったから、ぶっつけ本番である。シグルズはまだまだ海峡の上を飛んでいるというのに、背中から冷や汗を流していた。


「まあまあ。骨が半分粉砕されても復活出来るんだから、心配は要らないよ」

「いやいや、痛いのは嫌なんですよ。結構切実に」

「まあねえ。ま、ゲルマニアだと君しか出来ないんだから、よろしくー」

「はい……」


 シグルズはその後ほとんど無言で爆撃機に揺られていた。そしてついに、カムロデュルムの上空に辿り着いた。


「よし。じゃあシグルズ、木箱のところに行って」

「はい。了解です」


 シグルズは座席から離れ、本来は爆撃機の爆弾が搭載している空間に入った。


「じゃあ、投下!」

「了解です……」


 シグルズは投下された。


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