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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第五章 ゲルマニアの新兵器

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或いは現代のプロメテウス

 ACU2309 6/28 ルシタニア王国 王都ルテティア


「やっと起きられましたか、クロエ様」

「え、ええ……」


 寝台に寝かされていたクロエが目覚めると、すぐ傍にマキナが座っていた。寝ぼけた頭を無理やり起こし、状況を確認していく。


「ええと、まず、私は胸を撃たれた」

「はい。ゲルマニアの者共の汚い計略でした」


 無表情な彼女が少しだけ不快感を露わにした、ような気がした。


「それは置いておいて、それで、ここまで運んできてくれたのはあなたですか?」

「はい。クロエ様の御身は、この私が命に代えてもお守りします」

「ああ……はい。ありがとうございます」


 ――愛が重い……


「それで、傷の具合はというと……」


 服の中に手を突っ込んで胸の辺りを確認してみる。


 触った感じだと外傷は残っていないようであるし、痛みや違和感なども特にない。撃たれたのが夢だったかのようだ。


「今は魔法で傷口を塞いでいます。ですので、これから1ヶ月は毎日魔女による修復を必要とします。ご容赦ください」

「了解しました。別に、あなたが謝ることではありませんよ」


 今は魔法でクロエの体の一部を生成しているという状態である。故に、24時間も経てばその部分は自然に崩壊し、傷口は再び開き、クロエは死に至る。それを回避する為、毎日木の魔女が彼女の損傷部に維持の魔法をかけるのである。


 だが、そうしている間にも傷口は確実に塞がっていく。魔法で作り出していた細胞が徐々にクロエ自身の細胞と置き換わっていくのである。完全に置き換わった時、彼女は完全な状態へと回復する。


 それまでは、面倒だが、遠出は出来ない。


「クロエ様、何かお体に不具合がございませんか?」

「いえ、問題ありませんよ」

「はっ。何か問題がありましたら、いつでも私をお呼び下さい」

「分かりました。お願いします」


 マキナは結構仕事をしている。給仕のような仕事ではなく、軍政に関する仕事だ。メイド服を着ている割にはメイドっぽいことは全然してくれないのだが。


「そうそう、一つ聞きたいことがあるのですが」

「何でしょうか?」

「あの戦場――ロウソデュノンで、気配を感じました」

「気配?」

「はい。まるでノエルやクラウディアのような」


 レギオー級の魔女は、クロエも含めて、特有の気配のようなものを発している。これは魔法が少しでも使える者ならば誰にでも察知出来るものだ。


 それが、レギオー級の魔女などいないあの戦場で感じられた。これは何を意味しているのか。


「シグルズが原因なのでは?」

「いえ、それは違います」


 当初、クロエもそう思った。だが、シグルズにいくら近づこうが、その気配の濃さが変わることはなかった。寧ろ薄くなる気すらした。


「では、ゲルマニアに王家の人間がいるということですか?」

「とても考えられませんが、それ以外の仮説もありません」

「仮にそうだとしたら大問題です。このことは伏せておかれた方がよろしいかと」

「そうですね」


 ゲルマニアに王家の人間がいるともなれば、合州国を揺るがす大問題だ。どこかの大公家の家督争いを招きかねない。故に、これは隠しておくのがよいだろう。


「ですが、私も気になるのです。その正体が一体誰なのか」

「気になるのは、レギオー級に比する魔導士を持ちながら、ゲルマニアがそれを使おうとしないことです」

「なるほど、確かに」


 レギオー級の魔女の力は絶大だ。それは機械化を推し進めるゲルマニアでも同じこと。これを使わないのは、宝の持ち腐れに他ならない。


 単にゲルマニアが魔導士に頼るのを嫌っているだけだとも考えられたが、それだとシグルズが前線に出てきたことと矛盾する。つまるところ、よく分からない。


「考えられるとすれば、ゲルマニアがその能力に気付いていないか、意図的に封じているかのどちらかかと」

「そうですね……」


 ゲルマニアにも少ないながら魔導士はいる。それらがレギオー級の波動に気付いていないとは考えにくい。


 封じている、となれば、その理由は未知の力を恐れているからだろうか。


「これについては、考えていても仕方ありませんね」

「ごもっともです」

「では、別の切り口から行きましょう。仮にイズーナの血に連なる者がいるとして、その理由に心当たりはありますか? 因みに私にはありません」

「心当たり……」


 マキナは考え込んで黙り込む。とても珍しいことだ。


「ルカ様……やもしれません」

「ルカ?」


 マキナが様付けで呼ぶ人間でルカという名前の者。クロエは知っている。


「イズーナの末子のルカ、ですか?」

「はい。あの方の末裔である可能性は否定出来ないかと」

「あの行方不明の大公ですか……」


 イズーナ・ロベールにはヴァルトルート、アリーセ、シーラ、ルカという4人の子がいた。ルカ以外は女である。


 前の3人は後のヴェステンラント王家の祖である訳だが、ルカだけは家系図がそこで途絶えている。彼だけが忽然と姿を消したのである。その理由は今となっても不明のままだ。


「あの方がどこに消えたかについては、私にも分かりません。しかしながら、ゲルマニアに亡命して血脈を保っていた可能性も否定出来ません」

「そういう人だったのですか?」

「少なくともヴェステンラント大陸からは出たものかと思われます。ルカ様は姉たちのことを酷く嫌っていたようでしたので」

「なるほど。本当だとしたら、本当にまずい話ですね」

「はい。ですので、私たちの間でもこの話をするのは止めましょう」

「そうしましょう。はあ……疲れました。寝ます」

「お休みなさいませ」


 体には思いのほか負担がかかっていたらしい。クロエはすぐに眠りに落ちた。マキナはそれを延々と見守っていた。


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