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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第三十八章 半島戦争(2313戦役)

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王国滅亡

 ACU2313 3/1 ルシタニア王国 ターリク


 ルシタニア王国に残された最後の、ほんの狭い領土すら、ヴェステンラント軍に奪われようとしていた。


「陛下、ヴェステンラント海軍の主力艦隊が確認されています。数日のうちにここに来るかと」

「もう来るか。これで、時間切れのようだな」

「かくなる上は、手遅れになる前に我が国に亡命して頂く他ありますまい。どうか、お覚悟を」


 シュトライヒャー提督は国王にそう進言する。勝機は最早ない。このまま立て籠っていても殺されるだけだ。


 国王もそのことは分かっていた。しかし、彼の矜持が国を捨てて逃げることを許せなかった。


「……国王が国を、民を捨てるか」

「確かに、そうなることは否定は出来ません。しかしながら、陛下が死んではルシタニア国民は誰に縋ればよいのですか? 陛下がいなければ、ド・ゴールとかいう狂った大統領の奴隷になることを受け入れるしかなくなってしまうのですよ?」

「臣民が仕えるべきは国王だ。余ではない」

「……は?」

「国王という存在そのもの、もっと言えば王家の血筋こそが肝要なのだ。仮に余が死せるとも、王家の血を引くものは既に数多、国外におる。それで十分だ。余はここで国に殉じて死ねばよい」

「それは……」


 ゲルマニアとしてはルシタニア国王は欲しい。ルシタニアに攻め込む何よりの大義になるからだ。それに、シュトライヒャー提督個人としても、彼には生きていて欲しかった。


「恐れながら、民が慕っているのは王家の血筋ではありません。あなたなのです、陛下」

「何?」

「どうして民は、幾百万の者が犠牲になろうとも、戦い続けられたのでしょうか? どうして民はルシタニア共和国とやらに降らず、いつまでも陛下に仕えたのでしょうか? それは単に、陛下の人徳によるもの。陛下でなければいけないのです。王族であれば誰でもいいということはないのです」

「て、提督……」


 私欲に無頓着であり、臣民の幸福とルシタニアの独立を第一に考え続けて来たルシタニア国王。自らの権力欲の為に大政を簒奪し、民のことなど何も考えていないド・ゴール大統領などとは比べ物にならない。


 臣民は国王を心から尊敬し、その為に命を投げ出してきた。仮に国王が無能で劣った人間であるのならば、数百万の犠牲になど民は耐えられなかっただろう。


「そうです、陛下。我々は陛下にこそお仕え申し上げたいのです」「国王陛下、我々はこの命が果てるまで、陛下と共におります」

「「国王陛下、万歳!!」」

「お前達……」


 家臣達もまた、シュトライヒャー提督の言葉で気付かされた。彼らは王家や国に仕えたいのではなく、この国王、ルイ=アルマンに仕えたいのだと。


「彼らもこのように申しております。ここは我が国に亡命を」

「しかし、余はあまりにも多くの民を殺した。ここまでして、余だけが国を捨てて逃げるというのはやはり……」

「逆です、陛下。陛下はその罪を償わなければなりません。ルシタニアの勝利によって」

「勝利、だと?」

「はい。幾百万の民はどうして死んだのですか?」

「それは……ルシタニアの勝利の為だ」

「そうです。ですから、彼らに報いる唯一の手段は、ルシタニアに勝利をもたらすことです。彼らに安らかな眠りを与えるには、悪逆な謀反人ド・ゴールから国を取り戻し、再びルシタニア人のルシタニアを取り戻すしかないのです!」

「…………分かった。その通りだ。余は生きて、ルシタニアからヴェステンラント人を追い落とそう」

「覚悟はお決まりのようですな」


 かくして国王は国を捨て、ゲルマニアへの亡命を図った。全てはルシタニアを解放する為に。


 ○


 ACU2313 3/2 ルシタニア共和国 首都ルテティア


 最後の抵抗を粉砕したド・ゴール大統領は勝利を宣言する。


「ルシタニアの国民諸君、本日を以て、我々の国土から旧時代の遺物は蹴落とされた。国王は我が身可愛さに国を捨て、ゲルマニアへと逃げたのだ! 我々の勝利である! 我々は、我々から不当に富を巻き上げ、私腹を肥やして来た貴族共、そしてその首魁である国王をたった今、完全に打倒した!! 共和国、万歳!」

「「「共和国万歳!!! ルシタニア万歳!!!」」」


 ド・ゴール大統領もまた、自らの信念を疑いはしなかった。彼もまた国王と同じ信念の徒。そのやり方があまりにも狂っているだけなのだ。


「我々はついに、国土を特権階級の人間から解放することに成功した。ルシタニア共和国は今日、本当に完成したのである! だが、外にはまだ敵が残っている。ゲルマニアに亡命した国王、貴族共は、我々を再び支配しようと、虎視眈々と我々の領土を狙っている。我々は決してそのような力に負けはしない!!」

「「「おう!!!」」」

「本日、私は我々国民の軍隊、大陸軍を設立する。革命の成果は、我々が自らの手で守らねばならない。自由、平等、博愛を守ることが出来るのは、我々ルシタニア人だけなのだ! ルシタニア万歳!」

「「「ルシタニア万歳!!!」」」


 ド・ゴール大統領は更なる戦時体制を用意していた。ゲルマニアと同じ洗練された国民軍を以て、ゲルマニア軍を撃退するのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえばだけどゲルマニア人以外に武装親衛隊に他の外国人入れるとかどうだろうか?現実世界でもやってたし。
[一言] ゲルマニアに亡命したルシタニア人による軍隊が作られるかもな(ポーランドの旧軍や民間人による国内軍など) それとレジスタンス運動がルシタニアで活発化するだろうな。
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