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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第五章 ゲルマニアの新兵器

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ルテティア陥落

「正面に巨大な魔導反応です!」


 空飛ぶ魔女どもを追い払ったのも束の間、ヴェステンラントの新手がやって来た。


「今度はな――」


 ヴェロニカがそれを検知した次の瞬間、城門の上に巨大な火球が複数浮かんだ。ノルマンディア会戦でさんざんやってくれた奴である。


「シグルズ、頼んだ!」

「了解です!」


 機関砲陣地を覆う巨大な氷の壁を生成。火ならば気化熱で打ち消すことが出来るだろう。


「来ます!」


 万一に備え、シグルズは更なる魔法を発動する準備をした。しかし、火球がシグルズたちを狙うことはなかった。


「何だ? 外したのか?」


 オステルマン師団長は頭上を横切る火球を仰ぎながら。他の面々もぽかんとしていた。ただ一人を除き。


「いやー、これはまずいかもねー」


 ライラ所長は全然大変でもなさそうに。しかし彼女の場合は態度よりも言葉の内容をそのまま受け入れた方がいい。


「と言うと、どうしたんですか?」

「あっちにあるのはルシタニアの食糧庫だからね。あ、ほら、大炎上」


 確かに、ルテティアの中央にあるいくつかの大きな建物が燃えていた。まるで中に可燃物が沢山入っているかのように。


「……その話、マジですか?」

「うん。前に教えてもらったから」

「って、そんな呑気にしてる場合ですか!? 私たち詰みですよ、これ!」


 一番ことの重大さを理解しているのはクリスティーナ所長であった。食糧がなければ籠城は出来ない。と言うより、包囲という行動自体が籠城側の兵糧切れを待つものである。


「あー、ルテティアはもう陥落するねー」

「だから! 何でそんなに落ち着いてるんですか!?」

「まあ、私たちは空飛んで逃げ帰れるからね」

「そ、それは王女様たちだけで――」

「クリスティーナはシグルズが運んでくれるよ? ね?」

「はい?」


 ――いやいや聞いてないんだけど。


 技術的には決して不可能な訳ではないが――と言うか楽勝な部類だが――女性を運ぶというのはどうも気まずい。その理由はわざわざ言うまいが。


 ライラ所長はそこまで飛行の魔法が得意という訳でもなさそうだが、立派な魔女の女性――オステルマン師団長がいるではないか。


「え、だめ?」

「僕はオステルマン師団長閣下の方が適任であると――」

「いや拒否する。これは師団長命令だ。シグルズ、クリスティーナ伯爵を無事に本国へと護送せよ」


 無駄に仰々しい感じで師団長は。本気で嫌がっているのがシグルズにも見て取れた。


 ヴェロニカに任せるのは不安があるし、シグルズに選択肢は残されていなかった。


「ちょっと、私の意見は誰も聞かないんですか!?」

「まあ、誰も聞かないかなー」

「何で!?」

「その、僕がいやでしたら、オステルマン師団長を無理にでも説得しますが」

「い、いや、そんなことはないんだけど……ああもう! これでいい! シグルズ君、よろしく!」


 クリスティーナ所長は何故か顔が赤くなっていた。


 ○


「では、我々は本国に帰ります。非情だとは思わないで下さいよ」

「ああ。当初からそういう約束だったのだ。恨みはしない。寧ろ感謝しているよ」


 やつれたルシタニアの司令官に一言挨拶し、シグルズ一行はゲルマニアに向けて飛び立った。


 ○


 ACU2309 4/11 神聖ゲルマニア帝国 グンテルブルク王国 帝都ブルグンテン 総統官邸


「ルテティアは陥落しました。これで、籠城も無力だということが証明されましたね」


 心なしか、ザイス=インクヴァルト司令官は楽しそうですらあった。相変わらずのその様子に、総統も相変わらずドン引きしていた。


「それは、最早我が軍には打つ手なしということではないのか?」


 防衛側が最も有利な条件で戦える籠城戦ですら、城内を砲撃されるという簡単な方法でいとも簡単に突破された。


「確かに。しかし、ただ負けただけではありますまい。ルテティアの戦いで、兵糧の心配さえなければヴェステンラント軍とて撃退が出来ることが証明されました」

「それはそうだが……人間は食べ物がないと生きていけないのだと知っているか?」

「ご冗談を」


 仮にルテティアに無限の食糧があったとしたら、ヴェステンラント軍の方が補給を切らして撤退していただろう。これは実に重要なことだ。


 とは言え、この問題がある限り、いかなる銃砲を揃えようともゲルマニアの籠城戦に勝ち目はない。


「それでは、前線の城に地下倉庫を設けさせるというのはいかがですかな?」


 カイテル参謀総長は言った。確かにそれならば、炎で糧食が焼かれることもないだろう。


 しかし、それは即座に否定された。


「参謀総長は、数万の兵士が数ヶ月籠城出来るだけの食糧を収められる地下倉庫が、あと2、3ヶ月の猶予のうちに造れると思うのか?」


 否定したのは意外にもヒンケル総統その人であった。


「それは……不可能だと、思われます」

「で、あろう」


 この世界の土木技術はまださして進んでいない。そんな大規模な地下倉庫を造るには最低でも5年はかかるだろう。その頃にはきっと戦争は終結している。


「総統閣下、そこで、提案があります」


 ザイス=インクヴァルト司令官はこの流れを待っていたようであった。


「何だ?」

「ええ、それは僕から説明させて頂いても?」

「なっ、お前、ザイス=インクヴァルトと結託していたのか?」


 露骨に嫌な顔をしているカイテル参謀総長は気にせず、シグルズは次なる戦争――塹壕戦について語り始めた。

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