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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第三十五章 終わりと始まり

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帝国の大戦略

「西部方面軍の大方針と致しましては、エウロパ方面へ侵攻するヴェステンラント軍を西部戦線に集め、これを一気に包囲し殲滅することを計画しております」

「なるほど……? まあ理解は出来るが、そんなことが本当に出来るのか?」

「因みにこれはシグルズ君の発案によるものです」

「あ、どうも」


 第二次世界大戦の序盤にドイツ軍が発動させた電撃戦は、たったの2週間でフランスを撃滅した。これを基にしてシグルズが立てたのが、この作戦である。


 西部戦線を突破し、そのまま掴みかかるようにヴェステンラント軍の主力を包囲、殲滅を図るのである。


「いや、その前に、どうして敵を撃滅する必要があるのだ? 我々の目的はエウロパの解放で、敵を撃退さえすればそれでいいと分かってはいるのか?」

「それについては僕から。司令官閣下の仰る通り、我々はヴェステンラント軍に可能な限りの損害を与えるべきです」

「それは何故だ?」

「我が軍は将来的に、ヴェステンラント本土に攻め込むことになるでしょう。その際に敵は少ない方がいい。ただそれだけです」

「いやいや、ちょっと待て。誰がヴェステンラントまで攻め込むと言った?」


 つい最近までは西部戦線を維持出来るかどうかという話をしていたのに、いきなり敵の本丸へ攻め込むとは。ヒンケル総統もびっくりである。当然、そんな話はこれまで出ていない。


 総統はザイス=インクヴァルト司令官の方を見たが、彼はわざとらしく知らん顔をするだけで何も応えようとしない。


「ええ、確かに、誰も言ってはいません。しかしながら、ヴェステンラント合州国がこの世界に存在する限り、絶え間ない侵略を仕掛けてくることは目に見えています。世界平和を確立するには、合州国を徹底的に叩くしかありません」

「そうなのだろうか……そこまでやる必要があるとは思えんし、そんなことが出来るとも思えんが……」

「帝国にはその能力があります。そして、ヴェステンラントが世界にとって災厄となることは、間違いありません」

「珍しく論理性を欠いているようだな。それに、まだそんな遠い未来のことを考えるべき時ではない」


 あまりにも浮世離れした話だと、ヒンケル総統は取り合わなかった。まあこれは仕方ないし、想定内だ。


「――失礼しました。しかし、ヴェステンラントと近いうちに講和条約を結ぶにしても、やはり敵に損害を与えておくことは重要です。そうしておけば、より良い条件で講和を結べるでしょう」

「……それはそうか。最初からそっちで説明してくれたまえ」


 講和を結ばせるには相手に厭戦感情を持たせることが重要だ。そしてその最も有効でかつ簡単な手段は、敵を大勢殺すことである。


 ヴェステンラントには今のところ講和に応じる気などさらさらないようであるから、このような手段で交渉の席に引きずり込むしかないのだ。


「まあ、取り敢えず敵を一網打尽にしたいということは分かった。だが、それが出来るならとっくにやっているだろう?」

「流石は閣下、鋭い。それにはいくつかの条件が必要です」


 ザイス=インクヴァルト司令官は不敵な笑みを浮かべながら答える。


「必要なものは主に3つです。第一に、敵の塹壕線を迅速に突破出来る部隊。第二に、敵と正面からやり合える部隊です。これらは戦車を用いることで用意出来ます」

「ふむ。最初のは分かるが、正面からやり合える部隊とは?」

「これは以前申し上げたことですが――とは言っても1年以上前ですが――これまで我々は、塹壕をまるで突破出来ませんでした。一部の精鋭部隊を敵の後方に回り込ませその統制を乱しても、魔導兵が立て籠る塹壕は我々の予想以上に堅牢であり、突破は不可能でした」


 電撃戦も浸透戦術も、敵の統制を乱せば簡単に殲滅出来ることを前提にしている。だが塹壕の籠ったヴェステンラント軍の防御力は非常に高く、それでもなお突破出来なかったのだ。前提が誤っていたのである。


 これではいつまで経っても戦線を進めることは出来ない。せめて敵が混乱している状況下ならば正面からぶつかっても勝てる戦力を用意せねばならない。それこそが、ザイス=インクヴァルト司令官の条件である。


「――なるほど。概ね理解した」

「はっ。そして第三の条件と致しましては、完全なる制海権です」

「海か」

「はい。海が敵のものである限り、敵はどこからでも上陸することが出来ますし、どこからでも逃げることが出来ます。これでは殲滅は出来ません」

「確かにな……」


 特に恐れているのはブリタンニアにある敵軍がゲルマニア軍の包囲網を外から攻撃してくることだ。いずれにせよ制海権が必要であることはヒンケル総統にもすぐに理解出来た。


「これには、帝国海軍が建造中の戦艦が役に立つでしょう。戦艦が完成した暁には単艦で敵艦隊を撃滅出来るかと」

「流石に心配ではあるが……」

「無論、単艦で戦えという訳ではありませんが」


 輸送船の上に大砲を載っけただけの仮装巡洋艦ですら、単艦で多数のヴェステンラント船を沈めた。戦闘に特化した戦艦ならば、単艦で艦隊を相手取るのも無理な話ではないだろう。

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