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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第四章 ブリタンニア、ルシタニア戦記

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ノルマンディア会戦

 ACU2309 3/28 ルシタニア王国 ノルマンディア ルシタニア大本営


 ノルマンディアというのは地域の名前であり、それが指す範囲は結構広いのだが、先のノルマンディア港襲撃と関連付け、この会戦はノルマンディア会戦と呼ばれる。


「ここに集いし80万のルシタニア臣民よ! 朕は国家なり! ルシタニアは諸君と共にある! 戦え! そしてヴェステンラントの卑怯な蛮族どもを神聖な父祖の土地より放逐せよ!」


 国王は、国中から国力の限界まで集めた兵士と共に最前線に立っている。


 その数は80万。空前絶後の大軍である。


「加えて、我が国の為、その身命を賭してくれているゲルマニアの40万の友よ! 朕は感謝してもしきれない! 全てのルシタニア人が諸君に感謝している! ルシタニア軍総員、敬礼! ゲルマニア、ルシタニア、万歳!」


 80万の兵士が一斉に右腕を上げる。伝統的なレモラ式敬礼である。


 ゲルマニアもついに本格介入を決断した。もっとも、ブリタンニアには介入したくても出来なかったが。


 両軍合わせておよそ120万。


 配置は、西からゲルマニアの20万、ルシタニアの80万、ゲルマニアの20万という風に、ルシタニア軍をゲルマニア軍が左右から挟み込む感じになっている。


 ○


 ACU2309 3/28 ルシタニア王国 ノルマンディア 第18師団司令部


 オステルマン師団長の第18師団は、東の部隊の最前線を務める部隊の一つだ。


「さーて、今回がシグルズの鎖閂式小銃の初披露な訳だが、自信はあるか?」


 師団長はシグルズに問う。新式小銃は、少なくともゲルマニア軍の全員分、40万丁の生産は間に合った。ルシタニアにも供与する計画はあったが、それは間に合わなかった。


「自信も何も、客観的に見て、僕の銃はすべての点において以前の銃より優秀です」

「随分な自信じゃないか」

「まあ、そうと言えばそうですが……」


 シグルズには自信があった。後装式の銃がこれだけの数あれば、負ける筈がないのだと。


「閣下、全軍に前進の命令が下りました」

「分かった、ハインリヒ。全軍前進!」


 ルシタニア軍と歩調を合わせ、120万人が一斉に全身を始める。まるで大地が人の波に呑み込まれていくようだ。


「射程圏内に入りました!」


 ヴェロニカは叫んだ。今のところ、彼女の役目は観測手である。ヴェロニカがあまりに優秀である為、先任の魔導士は一瞬にしてその座を追われた。


「よし。全軍撃ち方始め!」


 第18師団が一番槍をもらった。と同時に、他の師団も一斉に斉射を始める。ルシタニア軍の銃も、射程についてはゲルマニア軍のそれとさして変わりはない。


 ゲルマニア軍の斉射と同時に、ヴェステンラント軍も攻撃を開始した。ヴェステンラントの魔導弩も、射程は同じくらいである。


「うっ――」「んなっ!」「こんなに一気に!?」

「一発で3人貫くか……」


 ヴェステンラントの矢は、1本で3人の兵士を一気に貫いた。もっとも、暫く戦闘不能にはなるが、それで全員が死ぬわけでも銃を持てなくなる訳でもない。


「これくらいは既に想定されていたことです。焦る必要はありませんよ」


 ヴェッセル幕僚長は冷静に。例えそれが常であっても問題はない。


 ヴェステンラント軍の兵力はたったの8万――いや、常識的に考えれば大軍に分類されるが、こちらはその15倍。何も焦ることはない。


 一人が倒れればすぐさま他の兵士が隙間を埋める。負傷兵は衛生兵が即座に後方に搬送。流れ作業のように戦闘は進んでいく。


「シグルズ様、正面の敵の撃破60を超えました」

「いい調子……かな……」

「こっちの戦闘不能は約150だから……ええと……」

「割合では向こうが6パーセント、こちらが1パーセントの損耗です」


 計算の出来ない2人に、ヴェッセル幕僚長は割合で示した。絶対数を比べても意味はないのである。


「いい調子じゃないか」


 一般の魔導兵ですら十人隊(デクリオン)級と呼ばれるのだ。ならばこの損害比はかなりの善戦と言えよう。


「ええ。このままならば、計算上、勝てます。ただ、ルシタニア軍のほうが心配ですが」

「だな。けど、まあ、何とかなるだろ」

「楽観的過ぎますよ……」


 ひたすら銃弾と矢が交差するだけの戦場。淡々と、流れ作業のように人が死んでいく。


「シグルズ様! 敵のコホルス級魔導士多数、接近しています!」

「来たか。対空戦闘は後ろの第19師団に任せる。私たちは前の敵に集中するぞ! 撃ちまくれ!」


 銃声の支配する戦場の上空を、巨大な鳥のような、羽の生えた魔導士の集団が飛んでくる。


 しかし、その対応も既にしてある。


 ○


「撃て! 一匹たりとも奴らを通すな!」


 方陣を組んだ数万の兵士が、その銃口を揃って空に向けている。


 そして合図とともに斉射。


「よしっ! 奴ら落ちていくぞ!」

「いけるぞ!」


 彼らは今や猟師だ。飛ぶ魔導士をつぎつぎと撃ち落としていく。コホルス級の弱点を見事についた形だ。


 空も地上も、ゲルマニアが支配しようとしていた。


 ○


 ACU2309 3/28 ノルマンディア ヴェステンラント軍司令部


「案外、ゲルマニアもやるものだな。面白い」


 安楽椅子の総司令官オーギュスタンは呟いた。戦場を遠目ですら見てはいないが、どうやらこのままでは押し負けるらしい。


「では、作戦を第二段階へ移行せよ」

「了解しました」


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